「フロントランナー」(原題:The Front Runner、2018)を見る(Netflix)。監督は「ヤング≒アダルト」「サンキュー・スモーキング」のジェイソン・ライトマン。主演は「グレーテスト・ショーマン」のヒュー・ジャックマン。共演は「マイレージ、マイライフ」のヴェラ・ファーミガ、「セッション」のJ.K.シモンズ、「シークレット・アイズ」のアルフレッド・モリ―ナほか。タイトルは最有力候補のこと。
1988年の米国大統領選挙で有力とされながら恋愛スキャンダルを報道された政治家ゲイリー・ハートを描いた実話に基づくポリティカル・サスペンス。マスコミの過剰報道ぶりも考えさせられる。
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1988年米大統領選挙、民主党大統領予備選候補で最有力候補(フロントランナー)とされながら、マイアミの地方紙が報道したスキャンダルによって一気に失速していった主人公ゲイリー・ハート。
本作はハートとその妻リーの夫婦関係のみならず、当時の大統領選挙の舞台裏、政治とマスコミの関係を赤裸々に暴いたノンフィクション政治サスペンスの秀作。
現実に大統領選では共和党のジョージ・H・W・ブッシュ(父ブッシュ)が勝利。この報道がなかったら歴史は変わったかもしれないといわれる。
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1988年。以前から民主党で大統領候補になると評判だったハート(ヒュー・ジャックマン)は、党の大統領候補予備選に打って出る。しかし私生活で献身的な妻リー(ヴェラ・ファーミガ)がいながら、浮気をしていて問題があると噂されていた。
地方の新聞社“マイアミ・ヘラルド”の記者たちは、ある女性から友人がハートと密会しているとの密告を受け、キャンペーンで全米各地を転々とするハートを追ううち、ハートがある女性とひそかに会う場面を目撃し、スクープにするが・・・。
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政治家のスキャンダルというと、カネか女性問題というのは、アメリカも日本も同じか。1988年当時の大統領選の有力候補が、出馬を取り消した顛末を、当時のテレビ映像、絶大の人気を誇ったテレビ司会者のジョニー・カーソン(1925年10月23日-2005年1月23日)のそのままの映像も交えてリアルに再現している。
【1988年の大統領選:民主党候補】
1987年初頭の時点では、上院議員のゲイリー・ハートが出馬を表明していた候補の中では明らかに最有力候補だった。
民主党はこのほか、ニューヨーク州知事のマリオ・クオモも候補として考えていた。 ハートには、その4年前の1984年の大統領選挙の際に民主党の予備選挙を戦った経験があり、そのことも彼を有利にしていた。
しかしハートは、マイアミ・ヘラルド紙に女性スキャンダルをスクープされたことにより世論調査での支持率が急落、1987年5月には選挙キャンペーンからの撤退を迫られ、いったんは予備選レースに復帰したがスキャンダルによるイメージ失墜は致命的であり、結局再撤退を余儀なくされた。
マサチューセッツ州選出の上院議員エドワード・ケネディも有力候補と見られていたが、1985年には出馬を辞退。
またデラウェア州選出の上院議員でジョー・バイデン(のちに、オバマ政権で副大統領、2021年1月に大統領就任予定)、イギリス労働党のニール・キノック党首のスピーチを盗用した疑惑などが問題となり、1987年9月に選挙戦から撤退。最終的にマイケル・デュカキスが勝利し、アトランタで開かれた民主党全国大会において大統領候補に選出された。