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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「雲のむこう、約束の場所」(2004)。新海誠監督(「君の名は。」)の初の長編作品。

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雲のむこう、約束の場所」(2004)を見た。新海誠監督の初の長編作品。その新鮮さと挑戦心を評価され、第59回毎日映画コンクールアニメーション映画賞受賞。宮崎駿監督の「ハウルの動く城」、押井守監督の「イノセンス」などを抑えての受賞だった。

ほしのこえ」でデビューした新海誠監督の第2作目となる作品で、新海監督が原作、脚本、撮影まで自身で手がけた。

新海誠監督の「君の名は。」(2016)を劇場で観て以来、新海作品に興味を抱き「天気の子」(2019)も劇場で見て、過去の作品も追いかけ「秒速5センチメートル」(2007)「言の葉の庭」(2013)を見た。新海監督のアニメ映画は7本なので、未見はデビュー作の「ほしのこえ」(25分)と「星を追う子供たち」(2011)の2本となった。

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日本の戦後のもう一つの世界、南北に分断された世界観が今一つ難しい設定だった。津軽海峡を走る国境線の向こう側である北海道は、ユニオンの占領下にあって謎の巨大な長い「塔」が空に向かって建設されていた。主人公の若者二人が、自分たちの力であの「塔」まで飛ぼうと、小型飛行機を組み立てるといったストーリー。

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「いつも何かを失う予感があると彼女はそういった」という言葉を思いだし、今はサラリーマンになった浩紀(ヒロキ)の独白から物語は始まる。

舞台は戦争により南北に分断された日本。津軽海峡には国境線が引かれ、共産国家群のユニオンが蝦夷(えぞ、北海道)を支配下におき、ユニオン塔という白く高い塔を建設した。

塔は平行宇宙(パラレルワールド)の情報を受信するための量子塔。兵器として利用するために建てられた。青森県津軽市に住む主人公の藤沢浩紀(ヒロキ)と親友の白川拓也(タクヤ)は、国境を飛び越え飛行機でユニオン塔まで行く計画を立てていた。

しかし、ふたりの行為は犯罪にあたるため、ほんの一部の人間しか知らなかった。ふたりは塔まで飛ぶ飛行機(ヴェラシーラ)を、廃駅になった格納庫で密かに制作していた。

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ヒロキは好意をもっている同級生の沢渡佐由理(さわたり・さゆり、サユリ)に計画を話し、一緒に行こうと約束をした。

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その後、サユリは突然姿を消してしまい3年の月日が過ぎた。ヒロキは東京に行き、青森に残ったタクヤは、軍の研究所で平行宇宙に接続する実験を行っていた。ヒロキは、サユリが姿を消してから飛行機を作ることも諦め、目的のないままの生活を送っていた。

そんなある日、サユリが3年前からずっと眠り続けていると知った。 実はユニオン塔は、サユリの祖父が設計したもので、サユリの脳と繋がっていたのだった。サユリが目覚めてしまったら、世界は崩壊してしまうのだが、ヒロキはサユリを目覚めさせようと、飛行機造りを再開した。

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物語としては、オープニングはサユリとの別れを経て喪失感にくれるヒロキを描写したものであることから、この物語はハッピーエンドで終わらなかったことを示している。映画を見た後に残る釈然としないもやもや感を晴らすべく、エンタメ性も重視して作られたのが「君の名は。」であるという説もある。

南北分断や、貨物列車に、戦車が何台も乗っていたり、飛行機による空中戦のシーンがあったりと物騒なシーンも多く、また夢と現実のハザマの話もあってすんなりとは理解しにくい映画ではあった。

また「君の名は。」や「天気の子」など映像的にも完成度の高い作品を見た後に見ると、登場人物の動きなどなめらかでないので、やや物足りないが、雨のシーンや、たびたび登場するストーブの上のやかんの蒸気、部屋の本棚などや、パソコンの入力画面、その他細部にわたってのリアルな描写は、後の作品の原点のような気もする。