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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「娼年」(2018)を見た。強烈で衝撃的な映画。

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娼年」(2018)を見た。強烈で衝撃的な映画。この2,3年の松坂桃李の出演映画は「彼女がその名を知らない鳥たち」(2017)「狐狼の血」(2018)など衝撃作が多い。今作では、娼婦の男版「娼夫」にのめりこんでいく20歳の大学生。性描写は過激だが、その奥にある人間の欲望、そして欲望に触れて成長していくひとりの青年の姿を描く奥の深いドラマ。

主人公である大学生のリョウはある日、女性向けの会員制ボーイズクラブのオーナー・御堂静香に誘われ、娼夫の仕事を始める。様々な理由で男性を買う女たちと接する、リョウの20歳のひと夏が描かれる。

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森中領(松坂桃李)は都内の名門校に通う普通の大学生。

大学にも別に熱心に通うわけでもなく、時々同じゼミの女性・メグミ(白崎恵)がノートを持ってくる。ある夜、下北沢にあるバイト先のバーのカウンターに立っていると、一人の女性が来店してきた。

ここで待ち合わせだという女・御堂静香(真飛聖)の元にやってきたのは、領の中学の同級生・田辺進也(小柳友)だった。

進也は現在ホストをしていて、静香は進也の客の一人で、今日が初めての店外デートだという。

進也は唐突にホストの自分ととバーテンの領のどちらののカクテルがおいしいか勝負しようと言い出す。二人でそれぞれ作ったカクテルを静香に振る舞う。静香は「今すぐ飲むなら進也、ゆっくり飲むなら領くんかな。」とカクテルの味を評した。

二人が店を後にして、領がカクテルのグラスを片付けようとした時、コースターの下に静香の名刺が置いてあった。

「Le Club Passion」と書かれた名刺の裏には静香の名前と、手書きで“仕事が終わったら店の前で待っています”と書いてあった。

領がバイトを終えて店を出たところで静香が赤い車で現れ、自分のマンションに行こうと誘う。

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バーでの会話の中で「女性なんてつまらない」と言った領の言葉が引っかかっていたらしい静香は「セックスもそうなのか?」と問いただす。

領は、「手順の決まった面倒な運動」だというのを聞いて、静香は「本当にそうなのか証明して欲しい」と言う。

静香のマンションに到着し、シャワーを浴びようとする領だったが「髪や体やにおい、いつもどれくらい清潔にしているかということや習慣を確かめたい」と言われてしまう。

領は、ぶっきらぼうに服を脱ぎ、行為を始めようとしたところで静香の後ろから少女が現れた。「あなたの相手をするのはこの子。」と紹介されたのは咲良(さくら、冨手麻妙)という生まれつき耳の聞こえない少女だった…。

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この映画は、いろいろな側面から描かれている。一つは、普通の大学生が、あるきっかけで、コールボーイ(娼夫)になって、善し悪しは別にして、人間として成長する話。いま新型コロナウイルスで夜の街の接待を伴う業種、ホストクラブの感染が話題になっているが、ホストクラブに通う女性たちの欲望の先にあるコールボーイ(娼夫)のビジネス。

映画の中で「欲望の種類は無限」という言葉が出てきたが、どう見ても、売春禁止法の適用を受ける違法ビジネスで、この映画では、最後に警察の手入れを受けて、ボーイズ・クラブ「Le Club Passion」は摘発されて、オーナーの御堂静香は逮捕される。

もう一つは、大都会、東京の著名な地域の登場すること。地名が、場面ごとに、スクリーンに現れる。主人公のアルバイト先のバーが「下北沢」であり、クラブ・オーナーのマンションは「赤坂」にあり、スーツや衣装を購入するのは「銀座」の高級店。

最初の客との待ち合わせが、ラブホ街で有名な「渋谷・円山町」(まるやまちょう)、二番目の客は「表参道」。評判の料理屋で食事をするのが「高田馬場」。

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「こうして僕は娼夫になった」とつぶやくクラブが有るのは「池袋」のクラブ・パッション。変わった年の離れた夫婦から呼ばれるのは「熱海」。女性が70歳の誕生日だと言って、やばれたところは「鶯谷」のラブホ街だった。この女性を演じたのが当時76歳の江波杏子で、この映画が遺作となった。

江波杏子は、女賭博師シリーズなどヤクザ映画で一時代を築き「津軽じょんがら節」の主演も務めた名女優だ。最後に「新宿」で指名された客のもとに行くと「間違ってもお前とはセックスはしない」と言っていた、大学のクラスの同級生・メグミ(白崎恵)だった。「高い。アルバイト代1ヶ月分だ」という。メグミは、これまで知っていた領(源氏名:リョウ)とは違って「別の世界の人間なんだね」と悟る。

様々な女性客を通して、領は、ひとりひとりに隠された欲望のジャングルに踏み込んでいく姿が描かれている。

監督・脚本の三浦大輔は、濡れ場のシーンは、決して妥協はしなかったというからリアルだ。R-18指定。激しいシーンが多いので、鑑賞は要注意。

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主な登場人物:

■森中 領/リョウ

20歳。大学生。恋愛も大学生活もつまらないと感じており、週に1度しか大学に行かない。下北沢のバーバーテンダーのバイトをしている。

■御堂静香(みどうしずか)

40代。会員制ボーイズクラブ「Le Club Passion」のオーナー。

■田島進也/シンヤ

領の中学時代の同級生。ホスト。自信家で調子のいい男。

■咲良(さくら)

「Le Club Passion」で働く女の子。生まれつき耳が聞こえない。実は静香の娘。

■平戸東/アズマ

VIP向けの特別な娼夫。リョウは売れっ子になると断言する。痛みに快楽を感じるマゾヒスト。体中がムチで打たれた傷だらけ。

■白崎恵/メグミ

リョウのゼミの同級生。リョウにバーでの飲み放題と引き換えに、ゼミのノートと代返を任されている。