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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「シックス・センス」(1999)を再見。2度目で様々な伏線に唸る。

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シックス・センス」(1999)を再見した(NHKBSプレミアムで放送)。ほとんどの観客がラストシーンになって初めてあっと驚くという作りになっている。こうした映画は、予備知識なしで見るに限る。

一方で、初回の時は最後に気づく伏線も、2度目に見るとここにも、あそこにも伏線が…とわかってくるので、初回見たときの登場人物の”微妙な”不自然さや違和感が理解できる。

すでに亡くなっている主人公のマルコムや少年コールの姿は、現実社会に溶け込んでいるように見せかけて、実は、現実の人たちの目には映っていなかったのだ。

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小児精神科医のマルコム(ブルース・ウィリス)はある晩、妻アンナ(オリヴィア・ウィリアムス)と自宅にいたところを、押し入ってきた患者のヴィンセントに撃たれた。

ヴィンセントは彼を撃つと自殺し、この事件は彼の心に拭いがたい傷を残す…。それから1年後、アンナと言葉を交わすこともできず悶々とする日々を送っていたマルコムは、他人に言えない秘密を隠して生きる8歳の少年コール(ハーレイ・ジョエル・オスメント)に出会った。(銃で撃たれて亡くなったはずのマルコムが1年後にピンピンしている!)

コールの秘密とはなんと「死者が見えること」だとマルコムに言い、母リン(トニ・コレット)にも話せず、コールは友達からも異常者扱いされて悩んでいた。

やがて、ふたりは心を通わせるようになり、コールはついに秘密を打ち明ける。死者は彼にいつも”何か”をさせたがっているというのだ。

この映画が公開された当時の宣伝文句は「映画のラストは決して言わないでください」…というものだった。キャッチコピーも「死者が見える少年と心に傷を負った精神科医が互いに交流を通じて癒されていく姿を描く異色なサスペンス・ホラー」というものだった。決して主人公が○○だったなどとはほのめかしてもいけないのだった。

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映画全体を通してシャマランは、ブルース・ウィリス扮するマルコム・クロウにはなにか秘密がある、ということを観客に示す伏線をたくさんちりばめている。

マルコムとコール・シアー(ハーレイ・ジョエル・オスメント)が、カイラの通夜のときに彼女の寝室に入って立っている場面がある。ドアが開くとカメラが床を映すが、コールの影だけが見える。また、寝室のドアノブが鏡のようになっていて(シャマランお得意の映画のトリック)、映っているものにカメラがズームすると、そこに映っているのはコールの顔だけだ。

 

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マルコムはコールのそばに立っているのに、彼の顔はまったく隠れてしまっていて見えない。  これは映画の中では見落としがちな本当に些細な伏線なのだが、回想シーンではこうしたちょっとしたスパイスが、絶妙な味つけになっていて、ラストへのサプライズに観客をいざなっていくようになっている。

シャマランが映画の中に意図的に加えたもうひとつのヒントは、ウィリス演じるマルコムが冒頭の寝室での銃撃シーンを含めて、最初からいかなるものにも触らないことだ。  

この点から、観客が映画の中のキーになる要素を明確に把握することができないようになっている。例えば、マルコムが妻と会いにレストランに行くシーン。彼は座る椅子に決して触わらない。

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テーブルの上の伝票に手を伸ばそうとすると、妻が代わりにさっとつかんでしまう。 ほかの場面でも同じだ。マルコムは決してドアを開けたりしないが、映画はこんな些細なヒントを観客に気づかせないようにうまく撮られている。

その代わり、マルコムはしかるべき場面場面で現われるだけ。これが観客に、マルコムがドアを開けたに違いないとか(見えていないが)彼が途中でなにかに触ったに違いないと思わせているのだ。

映画を一回見ただけでは、とても気がつかないような些細なヒントが隠されている一方で、より目ざとい観客のために、事実上映画の筋を伝えている意外に目立つヒントも組み込まれている。  

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映画の大部分では、特にという色が意識的に使われているわけではない。キーになる瞬間に特別な意味をもたせるためだ。例えば、地下室へのドアノブが、コールが追いかけていく風船も、コールの着ているセーターも、彼の特別テントもだ。

2000年のミー賞、いやアカデミー賞では、最優秀作品賞、助演男優賞助演女優賞、監督賞、脚本賞編集賞など数多くの部門にノミネートされた。残念ながら受賞には至らなかったが、ノミネートされただけでもすごいことで、アカデミー賞に絡んだ4つのホラーサスペンス映画のひとつとなった。 残る3作品は「エクソシスト」「ジョーズ」「羊たちの沈黙」といった名作ぞろいで、これら伝説的な映画の中に堂々と名を連ねたことはたいしたものだった。

この映画は、”どんでん返し”で驚かされた、で終わる映画ではなく、途中に散りばめられた監督のこだわりを理解するには、2度、3度の鑑賞がいいようだ。