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ドイツ映画「女は二度決断する」(2017) を見る。ダイアン・クルーガーがカンヌ映画祭女優賞受賞。

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ドイツ映画「女は二度決断する」(原題:Aus dem Nichts=「無の果てから」、2017)を見た。実話ベースのフィクション。ドイツ人によるテロ爆破事件で突然に愛する夫と息子を失った女性の苦難の日々を描き出す、家族を殺された女の復讐劇。その点では、かの「キル・ビル」に通じるところがある。そういえば、この作品、昨年のアカデミー賞外国語映画賞でノミネートされていたことを思い出した。これもNetflixで見た。

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監督はファティ・アキン。出演はドイツの代表的な女優の一人・ダイアン・クルーガー(「トロイ」「イングロリアス・バスターズ」)、デニス・モシットーなど。第70回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で上映さレパルム・ドールを争った映画。主演のダイアン・クルーガーが女優賞を獲得。第90回アカデミー賞外国映画賞ではドイツ代表作として出品された。

一度目の決断で終わるかと思いきや、女は一旦、引き返し、二度目の理解不能な決断をするので衝撃が走った。呆気にとられるエンディングで、後味が悪く、すっきりしないというのが正直なところだった。

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主人公はクルド人の男性ヌーリ・シュケルジ(ヌーマン・アチャル)と結婚したドイツ人女性カティア・シュケルジ(ダイアン・クルーガー)。ドイツ北部のハンブルクで息子ロッコと共に三人で幸せに暮らしていた。

そんなある日、事件は起きる。カティアがロッコをヌーリの事務所に預けその場を去ると、戻ってきた時には事務所の前に置かれたくぎ爆弾が爆発し二人とも即死。カティアはその何時間か前に、女が鍵をかけない自転車を置いているのを注意していた。

自分の両親や義理の両親だけでなく捜査当局などからも十分な理解や共感を得られずカティアは精神的にどんどん追いやられていく。ショックと孤独さで薬物や自殺などを試みるがそれもうまくいかない。

後悔や復讐心が複雑に深まっていく中、カティアの目撃証言を基に容疑者が見つかり舞台は法廷に移る。被告人はネオナチ夫婦の2人。現場で目撃された女性エッダ・ミュラーと、くぎ爆弾を作ったその夫アンドレミュラーである。

いくつか法廷で重要な証言が出てカティアの勝訴が濃いかと思いきや、判決は敗訴となる。訴訟が退けられたことを喜ぶ容疑者2人の姿はカティアの心境を窮地に追いやることになる・・・。

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映画は3章で構成される。

【第1章】「家族」…夫ヌーリと息子のロッコと平和に暮らしているカティア(ダイアン・クルーガー)など団欒の姿が描かれる。

【第2章】「正義」…家族を殺した犯人が検挙され、裁判が行われたが、証拠不十分でまさかの無罪となる。犯人側が知人のギリシャ人とグルになりアリバイ工作をしたのだ。ギリシャに宿泊していたという、偽りの客名簿を作り法廷に提出。

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【第3章】「海」…カティアは、犯人が爆破当時いたというホテルを訪ね、犯人の2人の写真を見せると「知らない」というがその女主人もグルだった。復讐劇の始まりには、音楽もサスペンスを盛り上げる。

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家族と法の正義に裏切られたカティアはカップルの殺人を計画。ギリシャの海岸沿いまでバカンスに向かった2人を追跡し、家族を殺された爆弾という同じ手法で爆殺しようと試みる。このあたりはサスペンス調になり、ハラハラさせられる。

 

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最初、カップルが寝泊まりしているキャンピングカーの下に爆弾を仕掛け、リモコンカーで遠隔操作し復讐を図る。しかし、いざ犯行に移るとなるとためらってしまい爆弾を退けることになる。

しかし、一晩考えたのち、翌日キャンピングカーに戻り、自分の体に爆弾を身に付け自爆テロカップルを道連れにするのだった。

憎しみが連鎖して復讐を生み続けるテロリズムの負の連鎖。憎しみの連鎖を断ち切るため自爆テロに踏み切ったのだ。

弁護士は上告を勧めたが「法廷で上訴」しても、法の正義は自分の憎しみを解消しない。また「犯人のカップルを爆殺」しても、更なる復讐を招くという、相容れない状況だ。そこで、第3の選択肢として自爆テロを選んだというのだが・・・。

原題「Aus dem Nichts」は「無」をテーマにした作品で、テロの虚しさ、醜さを訴えかける。無からは無を生じるのみということで、悲劇的な虚しい結末で終わる。

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ドイツの抱える政治、社会問題の一端を浮き彫りにしている。トルコ(主にクルド人)やポーランドからの移民問題、人種問題、一部のネオナチ(ヒトラー崇拝)の台頭、麻薬問題など。弁護士が、法の名のもとに、原告(家族を殺された妻)を貶めるような言動をするが腹立たしい限りだった。