アカデミー賞を頂点とする賞レースに名前が挙がっている「マリッジ・ストーリー」(2019)を見た。この作品も「アイリッシュマン」同様にNetflix作品。
タイトルこそ「結婚の物語」だが、内容は「離婚調停」モノで、映画の冒頭、ある夫婦の7分間に及ぶ幸福なモンタージュが明けると、観客はこの夫婦が離婚の危機にあることを知らされ、「離婚」に向かってまっしぐらのストーリーを目撃する。
過去に似たような作品を挙げれば「クレイマー、クレイマー」(1979)が近い。主演のスカーレット・ヨハンソンとアダム・ドライバーの後半の口論(罵り合い)の激しさと迫力は映画史に残りそうだ。「ローズ家の戦争」も真っ青か。
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女優のニコール(スカーレット・ヨハンソン)と夫で映画や舞台の監督を務めるチャーリー(アダム・ドライバー)は、8歳の息子ヘンリーがいて幸せな結婚生活を送っていた。
チャーリーの劇団は、結婚当初は無名だったが、女優としてある程度キャリアのあったニコールの加入も後押しし、徐々に知名度が高まり、ついにはブロードウェイに進出するまでになる。
しかし、そんな夫の劇団の成功に比例して、ニコールは自分が主体性を喪失し、夫の劇団に従属する存在になっているような感覚を味わうようになる。
お互いに愛し合っていた2人だが、些細な不満が積み重なり、ついには離婚調停が始まってしまうのだった。
当初、2人はお互いに歩み寄る姿勢を見せていたが、ニコールが敏腕弁護士のノーラ(ローラ・ダーン)を招き入れたことで状況は一変し、2人の離婚調停は泥沼化の様相を呈していく。
お互いが何も決められず、感情的になってしまう一方で、外部委託された弁護士たちが議論を進め、淡々と2人の関係を解体していく。
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スカーレット・ヨハンソンは、近年では「アベンジャーズ」などアクション映画が多いが、この映画では、アダム・ドライバーとともに映画賞レースで演技部門の賞を受賞しそうだ。ヨハンソンの長回しのセリフが圧巻の迫力。
弁護士を演じるローラ・ダーンは長身(179センチ)で、弁が立つ、鋭い切れ味を見せる。アメリカでは、離婚訴訟が日常的に多いようで、理由も様々。双方に弁護士がついて争う事になる。手付金が10,000ドル(約100万円)、時給900ドル(9万円)などと提示される!弁護士が多いわけだ(笑)。
親権を持たなかった側(主に夫のケースが多い)は、2週間一度子供と会うことができるなどの契約にサインをする。裁判になった場合の、親の子供との関係などを調べるために、弁護士から派遣される人物(調査専門)も描かれる。この人物(中年女性)は父親との会話,子供との接し方などを見聞きして「わかった」と言って帰っていくが何がわかったのか♪ 結婚とは何か…などを考えさせられる。
スカーレット・ヨハンソンが、ほとんど化粧も無しで、これまでとは全く違った顔を見せているので、そこは見応えがあった。アダム・ドライバーは見たことがあると思ったら「スター・ウォーズ」新三部作で、主要な役の一人を演じている。名前が似通って紛らわしいがアダム・サンドラーは、ハリウッドの高額ギャラランキングで上位に君臨している。