「人魚の眠る家」(2018)を見た。昨年11月に公開され、篠原涼子の演技(第42回日本アカデミー賞・優秀主演女優賞授賞)が話題になっていた映画。人気作家・東野圭吾のベストセラー小説が原作のミステリー。監督は東野作品「天空の蜂」を手がけた堤幸彦。
脳死状態の意識不明という状態からの娘の回復を願いつつも、決断を迫られる夫婦を篠原涼子と西島秀俊が初共演で演じている。人間の死について考えさせられる、過酷で重いテーマを扱う。
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夫の浮気で別居状態にあった和昌(西島秀俊)と薫子(篠原涼子)の夫婦は、娘の瑞穂の有名私立小学校の受験が終わったら離婚するつもりでいた。円満な関係をアピールするため、面接試験の予行演習を待っていたある日、薫子の母や妹たちとプールに行った瑞穂がプールの排水溝の網に指を突っ込んで抜けずに溺れてしまう。
和昌と薫子は病院に駆けつけるが、集中治療室に運ばれた娘が脳死状態であることを告げられ脳神経外科の医師・進藤(田中哲司)から厳しい選択を迫られる。もう二度と目を覚まさない瑞穂の臓器を提供するかどうか。他人を思いやれる心優しい我が子を思い2人は一度は臓器提供を決断するが、最期の日、瑞穂の手がかすかに動くのを薫子は目撃する。
薫子は判断を覆し臓器提供を拒み、そこから心臓は動き続けるが眠り続ける瑞穂を家族の協力のもと自宅で介護をしつづけるのだが・・・。
和昌はIT系機器メーカーのハリマテクスを経営。人工呼吸器を外し人工知能呼吸コントロールシステムを装着する手術を瑞穂に受けさせる。社員の星野(坂口健太郎)の協力で瑞穂の筋肉に電気信号を流し手足が動かせるようになり筋肉量も維持していく。瑞穂の体調は良くなり、普通の子がただ眠っているような姿のまま成長していくが、脳死したはずの瑞穂が動くことに気持ち悪がる人間もおり、その偏見の目は瑞穂の弟・生人にまで及ぶ。
家族は、薫子が、動けない娘を乳母車で、公園などに連れ出す行為に違和感を覚えるが、口に出せずにいた。死を受け入れられない母親というのは理解できるが、狂気の異常な行動に出て、問題が大きくなっていく。
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脳死、臓器提供、ドナーなど生と死の境界線をシリアスに描いている。娘の死の宣告を受け入れない母親のだんだんと壊れ行く姿が、ホラー的に描かれるところも怖い。瞬きもせず脳死状態を演じる子役など、見所も多い。
主な出演:
■篠原涼子(播磨薫子)…和昌と結婚し二児の母となるが、夫との関係に悩み精神状態が不安定になる。
■西島秀俊(播磨和昌)…薫子の夫でIT系機器メーカー・ハリマテクスの社長。家族に関心を持たない仕事人間。
■坂口健太郎(星野祐也)…ハリマテクス社員でエンジニア。
■川栄李奈(川嶋真緒)…星野の恋人。播磨家を頻繁に訪れる星野を尾行し、意識が無いのに体が動く瑞穂を目撃する。
■山口紗弥加(美晴)…薫子の二歳下の妹。瑞穂の介護に協力する。
■稲垣来泉(播磨瑞穂)…和昌と薫子の長女。6歳の時にプールで事故に遭い脳死判定され、そこから植物状態で薫子に介護されながら生き続ける。
■斎藤汰鷹(播磨生人)…和昌と薫子の長男で瑞穂の2歳下の弟。元気だったころは姉とも仲が良かったが、徐々に姉が原因で苛められそうになり、瑞穂は死んだと言うようになる。
■荒川梨杏(若葉)…美晴の娘で瑞穂の同い年の従妹。瑞穂が事故に遭った日もプールで一緒に遊んでいて、自分のせいで瑞穂が事故に遭ったと誰にも言えずに抱え込む。
■田中泯(播磨多津朗)…和昌の父で、ハリマテクスの創業者で引退している。
■松坂慶子(千鶴子)…薫子と美晴の母親。孫の瑞穂を事故に遭わせてしまったと責任を感じている。
■大倉孝二(門脇)
■駿河太郎(江藤)
監督:堤幸彦
脚本:篠崎絵里子