映画「拳銃無宿」(原題:ANGEL AND THE BADMAN、1947)を見た。「駅馬車」のジョン・ウエイン主演の西部劇。スティーブ・マックィーン主演の同名テレビ映画とは別物。
凄腕の早撃ちガンマンと恐れられた主人公(ジョン・ウエイン)だが、本人が銃で撃つシーンはない。ユーモアや洒落たセリフがある、意外にもコメディ色のあるメロドラマ的要素のある西部劇だった。
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荒野で、怪我をしたカウボーイ(ジョン・ウエイン)が落馬した。たまたま荷馬車で通りかかった美女ペネロペ(愛称ペニー)(ゲイル・ラッセル)が近づくと、カウボーイは警戒して拳銃を抜く。彼も馬も疲労困憊しており、もはや一歩も進める状態ではないにもかかわらず「電信局に急がねばならない」と言う。ペニーは彼を馬車で連れて電信局に向かった。彼の名はクォート・エバンス。エバンスは復讐のためだけに生きてきた男で名高き西部のガンマンだった。しかし、エバンスは、クエーカー教徒との交流を通して、人間としての心を取り戻していく。エバンスを狙う敵との戦いは…?ペニーとの運命は…。
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この映画は「真昼の決闘」のモデルとも言われる。
前半は牧歌的で、ゆったりと物語が進むが後半は、牛の大移動に絡む争奪戦や、馬車と追手との追撃シーンなどが描かれる。主人公のエバンスは、もともとトゥームストーン(アリゾナ州の都市)の副保安官だったようだが、身内を殺されて復讐の旅に出るが、やがて平和に暮らす一家と交流し、銃を置く決心をするまでが描かれる。
その一家が、地域の隣の住人から用水路を板でせき止められて、水が流れてこないことから、エバンスがせき止めされている板のうち上の二枚ほどを外して欲しいと頼みに行く。するとそこの地主フレデリックに雇われている若い連中は「お前は何者だ」というので「クォート・エバンスだ」と名乗ると、フレデリックはその轟く名前を聞いて、黙って二枚の板を外すのだ。
そのフレデリックを伴って、クェーカー教徒一家に戻ると、水が流れていて一家は大喜び。一家からお礼の食料や飲み物をたっぷりともらったフレデリックは喜んでいう。「近隣づきあいはいいものだ」と。
そんな中、エバンスを影のように追っていた人物がいた。老境の保安官(ハリー・ケリー )だった。保安官は、エバンスの決闘の場面の尻尾を捕まえて、いつか「吊るし首」にすると公言していた。保安官はエバンスに「敬意も込めて、新しい縄で吊るしてやる」というのだ。
そして、エバンスを狙う男たちとエバンスが決闘をする場面がやって来た。銃は置くようにとペニーから言われたエバンスは銃をペニーに渡すが、敵は二人、銃を持って後ろに迫ってきた。銃のないエバンス。後ろを振り返れという男たち。一瞬の銃声が響く。男二人が倒れる。銃を持たない男と、銃を抜こうとするふたりの男を、見ていた保安官が、ふたりの男を銃で撃ったのだ。
保安官の口癖は「俺は辛抱強い男だ」。「お前(エバンス)が相手二人を撃って、俺がお前を撃てば、一石三鳥だった」という保安官。
保安官
保安官が「そのうちに、お前を吊るす」というと、エバンスは「オレは今から農夫になる」といって、ペニーとともに馬車で過ぎ去ってしまう。保安官助手が、「エバンスの銃が落ちていますよ」というと、保安官は、「銃を事務所に”吊るして”おくか」。洒落たエンディングだった。保安官を演じたハリー・ケリーが円熟味と人の良さで味わい深かった。
モノクロ、100分。(上の写真はカラー)。