フランス映画でアカデミー賞主演女優賞(イザベル・ユペール)にノミネートされた「エル ELLE」(2016)を見た。カタカナでは「エル」だが、邦画「L-エル-」(広瀬アリス主演)と異なり「ELLE」はフランス語で「彼女」のこと。
映画は相当に変態・アブノーマルな映画。
主演のイザベル・ユペールの名演(怪演)などがなければ、ただのポルノチックなレイプ映画になっていたかもしれない。
ただ、レイプ被害者が犯人を探して復讐するサスペンスを予想すると肩透かしを食う。自宅で覆面男に襲われた女性が、警察に届けず、自分の回り全てを疑い始めていくが、やがて”彼女”の本性があぶりだされていくエロティック・サイコ・サスペンス映画。
イザベル・ユペールは「ピアニスト」(2001)「8人の女たち」(2002)「愛、アムール」(2012)などで知られるフランスの至宝とも呼ばれるフランスを代表する女優。フランス・アカデミー賞と言われるセザール賞主演女優賞に史上最多の14回ノミネートされている。フランスのメリル・ストリープと言えるかもしれない。
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その後も、送り主不明の嫌がらせのメールが届き、誰かが留守中に侵入した形跡が残される。自分の生活リズムを把握しているかのような犯行に、周囲を怪しむミシェル。
父親にまつわる過去の衝撃的な事件から、警察に関わりたくない彼女は、自ら犯人を探し始める。だが、次第に明かされていくのは、事件の真相よりも恐ろしいミシェルの本性だった(HPより)。
暴行された女性が犯人に復讐する映画化と思うと、そうではなく主人公の女性の行動は「あれあれ」と思わせるのだ。冒頭のシーンで、主人公は突如現れた暴漢からレイプされるが、その後に彼女は冷静に割れた食器を片付け、なんと電話で“寿司の出前を頼む”だ。
ツッコミが入りそうな展開だが、さらにその後の会食では、主人公は自分がレイプされたことを友人たちに打ち明けるが、当然ドン引きされ、警察に訴えていないことを知らされ、愕然とされる。
主人公がレイプ被害を警察に訴えない理由とは・・・?
主人公の女性の隠された面とは・・・?
この映画は、タイトルにある「elle(フランス語で“彼女”の意味)」ことミシェルを演じた主演女優イザベル・ユペールの怪演が見所。内面の演技力が凄まじい。実年齢63歳(撮影当時)のユペールが49歳の独身女性を演じているが、職場の若手男子から、妻子持ちやらイケメン隣人まで、周りの男たちにモテまくるが、そうした彼らを手玉に取る女性を演じているところが悪女映画の歴史を塗り替えるほどのヒロイン像となっている。
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ミシェルの父親は、大量殺人鬼で現在も服役中。幼少期にパパラッチに追われた経験から、レイプに関しては警察に話して大事になるのを嫌い、秘密にしておくことにした。レイプ魔に備えて、金づちやスプレーを購入するミシェル。
とにかく登場る人物は、みなまともとは言い難い。
ミシェルの母親は、若い男(明らかに金目当てっぽい)と同居中。
ミシェルの息子とは何となくうまくいっていない。
ミシェルの元旦那は、ミシェルもよく知る若い美人と付き合い中で何とも複雑な気持ち。ミシェルはビジネスパートナーでもあり親友でもあるその元旦那と不倫中。そんな浮気中のミシェルは、隣人の銀行マンのパトリックに夢中で、彼を双眼鏡で眺めながら一人、マスターベーションをする日々。そして、3度目の黒ずくめのレイプ犯の覆面をはがすと、なんと、それは○○だった!(↓後の記事で犯人をバラしている!笑)。
クリスマスパーティを開くミシェル。
ミシェルが招待したのは、息子とその嫁、元旦那とその彼女、親友とその浮気相手である旦那、ミシェルの母、そして隣人のパトリックとその妻たち。
ミシェルは机の下から、足で股間をもんだりとパトリックを誘惑。パーティが終わりに近づくと、ミシェルの母が倒れる。病院に運ばれるさなか「お父さんに会って」と遺言を残し、亡くなる。
ある嵐の夜、隣人のパトリックはミシェルの家の窓が割れないように、二重窓を閉めに手伝いに来てくれる。そして、隣人パトリックを誘惑するミシェル。
パトリックもまんざらではない。しかし、パトリックは「ごめん」と言って、妻に対する罪悪感を感じたパトリックはミシェルの家を出ていく。少しの時が経ち、ミシェルは以前と同様に、覆面を被った男にレイプされる。ミシェルの必死の抵抗で、レイプ魔の手をハサミで突き刺し、覆面をはぎとる。なんと、レイプ魔は隣人のパトリックだった!。
パトリックはレイプでしか感じないようだ。隣人でありレイプ魔を追い払ったミシェル。その後、母の遺言通り、父に会いに行くミシェル。しかし、父は刑務所の中で首をつって自殺していることが分かる。それはミシェルが面会に来ると知った直後のことだった。ミシェルに合わせる顔が無かったようだ。
その帰り道、ミシェルは事故に遭う。親友や元旦那は留守番電話で出ない。
そうだ彼に助けを頼もう。男「大丈夫か?」ミシェルが助けに呼んだ男はレイプ魔のパトリックだった。パトリック「足のけがを治療しないと」ミシェルの家に到着する二人。ケガを治療するパトリックに向かってミシェルは問いかける。ミシェル「(ハサミで刺した)腕のケガはどう。どうしてあんなことしたの?」パトリック「必要だったからだ」その後、二人はレイププレイをしあう仲になるのだ。
そうだ彼に助けを頼もう。男「大丈夫か?」ミシェルが助けに呼んだ男はレイプ魔のパトリックだった。パトリック「足のけがを治療しないと」ミシェルの家に到着する二人。ケガを治療するパトリックに向かってミシェルは問いかける。ミシェル「(ハサミで刺した)腕のケガはどう。どうしてあんなことしたの?」パトリック「必要だったからだ」その後、二人はレイププレイをしあう仲になるのだ。
レイプ被害者を扱ったシリアスな映画ではなく、ミシェルをはじめ、全ての登場人物がみなおかしい、ブラック映画とも言える映画だった。
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監督のポール・バーホーベンは、初期オランダ時代の「ルトガー・ハウアー危険な愛」にしろ、シャロン・ストーンの足の組み換えで話題になった「氷の微笑」にしろ、あの悪評を買った「ショーガール」でさえ、あまり他ではお目にかかれない魅力的な強い女性を描いてきたのも事実。本作はそんなバーホーベンが、恐れ知らずのユペールという最強の共犯者を得て、映画界に一石を投じるものだ。バーホーベン監督作品では、個人的には「ブラックブック」(2006)がお気に入りの1本だ。
原題:Elle
製作国:フランス
製作年:2016年
日本公開日:2017年8月25日
監督:ポール・ヴァーホーヴェン
出演:
・ミシェル:イザベル・ユペール
・ロベール(不倫相手):クリスチャン・ベルケル
・アンナ(ロベールの妻):アンヌ・コンシニ
・パトリック(銀行員、隣人):ローラン・ラフィット
・レベッカ(パトリックの妻):ヴィルジニー・エフィラ
・リシャール(ミシェルの元夫):シャルル・ベルリング
・イレーヌ(ミシェルの母):ジュディット・マール
・ヴァンサン(ミシェルの息子):ジョナ・ブロケ
・ジョジー:アリス・イザーズ
・キュルト:ルーカス・プリゾル
・ケヴィン:アルチュール・マゼ
・ロベール(不倫相手):クリスチャン・ベルケル
・アンナ(ロベールの妻):アンヌ・コンシニ
・パトリック(銀行員、隣人):ローラン・ラフィット
・レベッカ(パトリックの妻):ヴィルジニー・エフィラ
・リシャール(ミシェルの元夫):シャルル・ベルリング
・イレーヌ(ミシェルの母):ジュディット・マール
・ヴァンサン(ミシェルの息子):ジョナ・ブロケ
・ジョジー:アリス・イザーズ
・キュルト:ルーカス・プリゾル
・ケヴィン:アルチュール・マゼ
かつてのフランスの大女優ブリジット・バルドー、カトリーヌ・ドヌーブなどと並ぶ現代のフランスの大女優の一人、イザベル・ユペールの映画だった!