「第33回高崎映画祭」授賞式に参加した。ローカルの映画祭としては「ヨコハマ映画祭」と並んで、かなり重要な映画祭のイベントとなっている。会場に行ってみて、映画ファンが多いことに改めて驚いた。
会場にはスクリーンが3つ。
群馬県高崎といえば「ダルマ」が有名。その他では全国に先駆けて交響楽団が結成され、音楽の街としても知られ、近年では映画の街として知られている。
年間60本の映画が高崎市内で撮影されているという。
エキストラ200人といえばすぐにでもボランティア・エキストラが集まるという。
高崎映画祭(3月23日~4月7日)までの間に60本の映画が上映される。
受賞者登壇では、最優秀新人賞、主演・助演賞、監督賞、作品賞などの受賞者がスピーチした。
最優秀助演男優賞を受賞した東出昌大が登場した時には、あまりにも高長身(189センチ)でスタイルが良く、会場がどよめいた。「菊とギロチン」は自由な雰囲気が失われつつある世相の中、東京近郊で出会った女相撲一座の女力士たちとアナキスト・グループ“ギロチン社”のメンバーが惹かれ合っていく姿を描いている。
初の時代劇「斬、」で監督を務め、自ら出演してスタッフ・キャストとともに最優秀作品賞に選ばれた塚本晋也は「今の時代の不安を、映画としての実験的な精神を盛り込んで描いた。理解していただけるかどうか微妙だが、どうしてもやりたいものを力を込めて作ったときに、高崎映画祭で賞をいただき、非常にうれしい」と述べた。
5年前に川越の映画館で「野のなななのか」の上映の時は、元気な大林監督の姿を見ていたので、車椅子で舞台に登場し、小さくなってしまったような姿を見たときは衝撃を受けた。
しかしそんな車椅子の状態で弱々しかったかというと逆で、来場者は大林監督の「あと30年は映画を撮り続ける」という力強い言葉には拍手が起こった。
大林監督は「映画は、観客に見られて初めて存在する」として、大手映画会社では上映されない映画も多いが「花筐/HANAGATAMI」についてはDVD,ブルーレイが発売されたので、「1回でわからなければ100回見てもらいたい」と語った。
「僕も8ミリで出発したが、かつては塚本晋也も8ミリ小僧だった」(笑)。
「今撮っている映画は、黒と白を使わない作品だ」と語り、期待を寄せていた。
「若い人たちがすばらしい作品を作っている。個人が集まって、集まることが平和の輪になっている。人こそが大切だとわかってきて、うれしい。そういう映画は生きたジャーナリズムであり、みなさんがそれを育てている」と語った。
戦争を知らない世代が増えており、伝えていかなければならないと反戦を強調していた。監督を60年間支えてきた妻・恭子も会場に来ていて、「売れない作家と思って結婚した」という妻の”売れない作家”というのが気に入っていると明かした。
映画にかける情熱は計り知れないほど強さが感じられたが、ガンに対しては「ガンに、下手なことをすると、お前も死んでしまうぞ」と語りかけるように、”共存”しているというのだが・・・。とにかく、「二度と戦争の道を歩んではならない」という振り絞るような、大林監督の日本の現状を憂うるメッセージが会場を包んだ。
追加:大林宣彦監督は、2020年4月10日、肺がんのため帰らぬ人となった。
今考えると最後のメッセージだった。https://fpd.hatenablog.com/entry/2020/04/11/082802
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映画関係者の挨拶では「映画はエンタメだけでなく、市民や行政の力により、高崎の文化を世界に発信できるのが映画の力だ」という。東京オリンピックを目指して、高崎の女子ソフトボール・チームの監督により、オリンピックへ向けての意気込みが語られていた。
「家族のレシピ」という映画では、シンガポールの料理と高崎のラーメンの創作料理が登場し、高崎の食文化もアピールしているという。