女優になるきっかけは、歌手として1970年代から活躍していた小柳ルミ子がデビューから5年経った頃、違う表現をしたいと思い「星の砂」という曲に出会ったことだという。この曲は、作詞は関口宏、作曲は出門英。出門が小柳のために書いた曲と聞いて、周囲の反対を押し切ってこの歌を歌ったという。
といっても、当時製作出資サイドは主演には大物女優の吉永小百合や大原麗子を望んでいたのだが、伊藤監督が小柳に固執し、東映の岡田社長に直談判して実現したという。結果、小柳は最優秀助演女優賞を受賞。翌年の「白蛇抄」へと続くことになった。
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「白蛇抄」は、若狭の山寺を舞台に、そこに後妻として住みついた女と住職、その息子との愛を描く。水上勉の同名小説の映画化。脚本は「南極物語」の野上龍雄、監督は「誘拐報道」の伊藤俊也、撮影は「陽暉楼」の森田富士郎がそれぞれ担当。
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ある日、華蔵寺にうたの遠い親戚に当るという十五歳の少女鵜藤まつの(仙道敦子:せんどうのぶこ)が引きとられてきた。この寺での初めての夜、まつのは異様な女の呻き声を耳にした。その声は隠寮から聞こえてきた。夜ごとうたの体に執着する懐海。それを覗き見する昌夫。彼はうたに惹かれていた。
もうひとり村井警部補(夏八木勲:当時は夏木勲)もうたが身を投げ救助された時に立ち会って以来、彼女に魅せられていた。投身の時、うたが抱いていた石骨の中味に疑問を抱いた村井は、石骨を取り戻そうとするうたに力づくで情交を迫った。その石骨はうたの死んだ赤ん坊であった。
そうしたある日、懐海はうたと昌夫が密会している場所に動ける筈のない体を引きずっていって殺された。昌夫は本山に修業に出た。懐海の死に不信を抱いた村井は、まつのに死んだときの様子を問いただし、うたと昌夫が愛し合っていることを知った。
うたは昌夫に会うべく京都に向ったが、昌夫もうたに会いたいために寺を飛び出していた。若狭に戻り、心中滝に立つうたの背後に村井が近づいて懐海を殺したのではないかと詰め寄った。
口論のうち村井は足を滑らせて滝壷へ落ちた。
華蔵寺に着いた昌夫にまつのは愛を告白するが、彼は振り切って外に飛び出した。そこにうたの姿が。本堂に走ったうたを昌夫は追うが、うたは「来たらあかん」と斧を持ちながら叫ぶ。斧を奪った昌夫が激昂してふりかざした下にうたは微笑みながら身体を入れてきた。血飛沫が舞った。昌夫も自殺し、心中を眼にしたまつのは本堂に火をつけた(MovieWalker)。
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小柳ルミ子が「サワコの朝」で語っていたが、「歌手は、衣装やヘアメイクなどで綺麗に撮るという面があるが、映画ではまったく違って、全てをさらけ出すという気持ちだった」という。映画では、ヌードも惜しまず、濡れ場を演じていて、まさに体当たり演技だった。バレー、ダンサーとしても鍛えていて、プロポーションに自身もあるようで、”見事な”豊満バストを見せていた(笑)。
高校生の血気盛んな少年だが、セリフなどはややぎこちないものの、今の50歳前半のヤクザっぽいイメージもかいま見られた。映画出演にあたり、それまでのリーゼント頭をすべて剃って住職の息子という役であり、丸刈りにした。日本アカデミー賞の新人賞を受賞した。
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