クリント・イーストウッドが製作・監督・主演の3役を務めたサスペンス・ドラマ。
心臓移植をした元FBI心理分析官の男が、移植に絡む因縁のために猟奇殺人犯を追う姿を重厚なタッチで描く。原作は犯罪記者出身の作家マイクル コナリーの傑作サスペンス「わが心臓の痛み」。「L.A.コンフィデンシャル」のブライアン・ヘルゲランドが脚本を担当。
この映画の撮影当時、72歳のイーストウッドが、「ダーティ・ハリー」を彷彿とさせるような銃撃シーンもある。
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FBIの捜査官テリー・マッケイレブ(クリント・イーストウッド)は、彼宛てのメッセージを現場に残す連続殺人犯を追跡していたが、心臓発作を起こして倒れてしまい、犯人を取り逃がしてしまう。マッケイレブはFBIを退職し、心臓移植手術を待つことになる。
2年後、無事に移植手術を終えて退院したマッケイレブは、港のクルーザーに生活の拠点を移して生活していた。そこにグラシエラ(ワンダ・デ・ヘスース)という女性が訪れ、妹が強盗に殺された事件の捜査を依頼する。
マッケイレブは依頼を断ろうとするが、移植された心臓が彼女の妹のものだったことを知り、殺人によって自分の命が生かされたことに怒りを覚え、依頼を受け入れる。
マッケイレブは市警のアランゴ刑事(ポール・ロドリゲス)、ウォーラー刑事(ディラン・ウォルシュ)に協力を求めるが、現役時代から折り合いが悪かったため十分な協力が得られず、市警と捜査権を争う保安官事務所のウィンストン女警部を訪れる。
マッケイレブの手助けで女性でありながら出世を出来たこともあり、ウィンストンは快く協力を申し出て、必要な捜査資料を渡す。
捜査を進めるうちに、彼女とコーデルは同じ希少な血液型でドナー登録していたこと、二人とも犯人から脳死状態にされていたことが判明し、マッケイレブは、犯人が同一犯で、自分に心臓移植をさせるためにドナーの二人を殺したと推理した。そんな中、容疑者の一人だったボロトフが殺害され、続けてコーデル夫人も殺害される。
マッケイレブの元にアランゴ刑事、ウォーラー刑事が現れ、三件目の殺人事件が発生したことを告げる。被害者は容疑者の一人だったロックリッジで、現場には「ハッピー・バレンタイン」の文字と、2年前の連続殺人犯が残したものと同じ数字が残されていた。
再び現れた犯人を捜すマッケイレブは、グラシエラの甥が数字を見て「1の数字だけない」と言ったことが頭に残り、そこから数字の意味が「1がない=ノー・ワン」だと知り、ノーワンの元に向かう。
ノーワンは犯行を認め「昔のように自分を追い掛け回して欲しいから、二人を殺して心臓を提供した」と語り、同時にグラシエラと甥を人質にしたことを告げる。
マッケイレブはノーワンを連れて、二人が監禁されている廃船に向かい二人を助け出すが、ノーワンに逃げられてしまう。マッケイレブは二人をクルーザーに乗せて逃がし、ノーワンと対決する。対決の末にノーワンを射殺したマッケイレブは、グラシエラと彼女の甥と三人で新しい人生を歩み出す。
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珍しい血液型をめぐる殺人と血液ドナーなどをめぐる謎に迫る元FBI捜査官を演じるイーストウッドの渋さが目立つ。
警察官から、携帯を持たないのかと聞かれると「(携帯は)信用できない。線がつながってないとね」という頑固さ。
テリー・マッケイレブ(C・イーストウッド)が警察署を訪ねた時に「ドーナッツ」を箱で持参するが、二人の刑事に食べるように勧めると、最初は渋っていたが、二人とも、ドーナツを口にする。テリーが、話が終わったあと、「ドーナツは置いていく」というと、刑事は「ドーナツもあんたの顔も見たくない」というのが笑わせる。この刑事は、ヒスパニック系で、負けん気が強く、どこか僻(ひが)み根性があるようだ(笑)。
犯人が意外な人物だったのも驚き。
アメリカでは、引退したあとなどに、ヨットやトレーラーで生活する人もいるというのが日本と違うところか。
監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド(テリー・マッケイレブ)、ジェフ・ダニエルズ(バディ/ノーワン)、ワンダ・デ・ヘスース(グラシエラ)、ティナ・リフォード(ジェイン刑事)、ポール・ロドリゲス(アランゴ刑事)ほか。
この映画はどちらかといえばイーストウッド作品では地味な部類の作品。
イーストウッドはこの翌年に「ミスティック・リバー」(2003)、さらに「ミリオンダラー・ベイビー」(2004)など重厚な作品を残していく。
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