「ピエロがお前を嘲笑う」(原題:Who Am I - Kein System ist sicher、2014)を見た。ドイツの犯罪サスペンス映画。 バラン・ボー・オダー監督、トム・シリング主演。 ドイツ語の原題は「安全なシステムなど存在しない」といった意味。
警察に出頭した天才ハッカーの青年が語る事件の顛末と、その自白によって進められる捜査の行方を描く。
仮想空間であるウェブでの人間同士のやり取りを現実世界の地下鉄に見立てて表現するシーンが随所で登場。このあたりは面食らいそうだ。ドイツ・アカデミー賞で6部門にノミネートされ、ハリウッドでのリメイクが決まっている。
14歳でコンピューターにハマり、ハッキングに興味を持ち、”ダークネット”と呼ばれるネットのいわば裏社会の「ハッカー界の王」と呼ばれるスーパーヒーローの存在を知り、ハッキングの世界に染まっていく人物の物語である。
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映画は、ある殺人容疑で捕まえられた天才ハッカーベンヤミンが警察に出頭してくるところから物語がスタートする。ハッカー集団である「CLAY」の一員となり、それからサイバー犯罪を犯し、連坊捜査局の盗んだ情報から殺人事件を引き起こすまでの独白というカタチで進んでいく。
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(ストーリー)
世間を騒がせている「WHO AM I」と呼ばれる最重要指名手配ハッカー・ベンヤミン(トム・シリング)が出頭する。彼は「捜査官ハンネ・リンドベルグにしか事実を話さない」と言い、取調室に来たハンネ・リンドベルク(トリーヌ・ディルホム)に、ベンヤミンの物語を語り始める。
ベンヤミンは子供のころ、透明人間として生きながら、スーパーヒーローに憧れていた。8歳の時に母親が自殺し、父親も行方不明で、祖母と二人暮らしをしてた。
彼はネットの世界に没頭するようになり、英雄的なハッカー・MRXに憧れ、リタリン薬を飲みながらハッキングをするようになる。ピザのバイトで配達中に、中学時代の初恋の相手マリ(ハンナー・ヘルツシュプルンク)に再会。
マリはベンヤミンに気づかなず「試験問題を盗んで」と言う。
マリが未だ忘れられないベンヤミンは大学に侵入し、試験問題を盗もうとするが警備員に見つかり、警察に捕まってしまう。
刑の代わりに清掃活動が処せられ、その仕事中にマックス(エリアス・ムバレク)に出会う。マックスはベンヤミンをパーティーに誘い、そのパーティーで、マックスの仲間のシュテファン・パウル(ヴォータン・ヴィルケ・メーリング)と出会う。
3人ともハッカーでMRXに憧れていたことから、4人は意気投合。
4人は「CLAY」と名乗り、金融業界、製薬会社などのハッキングに成功し、世間に広く知れ渡るようになるが、MRXはCLAYを無視する。優秀なハッカーと認められたい4人はいらだちを隠せない。
そんな中、サイバー攻撃を捜査する捜査官ハンネ・リンドベルグは、CLAYよりもフレンズというハッカー集団を追っていた。MRXへの苛立ちから、本来のハッキング目的から逸脱した行動をするようになったCLAYは、仲間の間でも意見が割れるようになる。
ベンヤミンはマリを誘うも拒絶され、さらにいらだつようになる。
そんな中、MRXが捜査資料をハッキングし、「CLAYは大物扱いされていない」と公表したことから、CLAYは力を示そうと、侵入不可能といわれた連邦情報局に侵入し、ついにハッキングに成功。
そんな中、MRXが捜査資料をハッキングし、「CLAYは大物扱いされていない」と公表したことから、CLAYは力を示そうと、侵入不可能といわれた連邦情報局に侵入し、ついにハッキングに成功。
ベンヤミンはこの時に、仲間に隠れて極秘資料も入手していた。
その日の夜に、みんなで成功を祝うも、マリとマックスがいちゃついているのを見たベンヤミンは、家に閉じこもってしまう。
そんな時、ハッキング集団フレンズの一人が殺された。
遺体の傍には、連邦情報局で盗まれたデータが落ちていた。それはマックスとマリに苛ついたベンヤミンが、MRXにひそかに送ったものだったのだ。
世間ではCLAYが殺人を犯したとされ、その濡れ衣を晴らすために、CLAYはMRXを捕まえようと接触を図る。しかし失敗に終わり、4人はユーロポールへ侵入し、MRXに決定的な罠を仕掛けようとする。しかし実際にはベンヤミンの正体がばれてしまい、ベンヤミンは逃走を図る。
CLAYの拠点に戻ってみたものは、マックス、シュテファン、パウルh死体となっていた。ユーロポールへ出頭したベンヤミンはMRXを渡す代わりに、証人保護プログラムを要求。それを飲んだハンネの前で、ニューヨークにいたMRXの正体を暴き、警察に逮捕させた。
ハンネは一躍ヒーローになった。
しかし、ベンヤミンの話に穴があると感じたハンネは、彼の生い立ちから調べ始める。そこで知ったのは、母が多重人格者であったこと、マリはベンヤミンに再会していないこと、そしてマックス・シュテファン・パウルはベンヤミンの多重人格が生んだキャラクターで、実際には存在しない、ということだった。
多重人格者は証人保護プログラムを受けられないが、ハンネはベンヤミンを助ける道を選ぶ。名前も出生も全てハッキングで変えたベンヤミンに「気を付けて」と優しく見送るハンネだったが、その時、本当の真実に気づく。
ベンヤミンは容姿を変え、船に乗っていた。
横にはマリ、マックス、シュテファン、パウルがいた。
それは幻想ではなかった。警察やハッカー集団から逃げ切るために、母が多重人格者であることを利用し、全てハンネにそう思わせたのだった。「リンドベルグは気づいているんじゃないか?」という仲間にベンヤミンは「彼女はもう気づいているよ」と笑う。
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コンピューター、ネット社会の裏にハッカー集団が存在することに驚く。
その集団の親玉のMRXの3つのスローガンのようなものがある。まず、「サイバー社会と現実を楽しめ」2番目に「不可能に挑め」3番目に「安全なシステムはない」というもの。ハッキングは人間を騙す、ソーシャル・エンジニアリングだというのだ。
ネットの脆弱性(ぜいじゃくせい)をを知り尽くしたサイバー・マフィアといってもいい集団だ。「世間の連中は眠らされているんだ。何も知らずに」といったセリフもあり、怖い存在だ。
主人公が、角砂糖4個を片手に持って、もう一方の手に移すと4個が1個になるという手品をするが、捜査官が種明かしを聞くと、意外に簡単なからくりだった。主人公が「人は見たいもの(だけを)みる」というのが印象的だ。
ネットの世界が現実に投影されるシーンなどが混在し、やや混乱するが、スタイリッシュな映像などは見所。好みが分かれそうな映画か。
■主な登場人物:
・シュテファン・パウル:ヴォータン・ヴィルケ・メーリング:弱点探索の得意なハッカー。無謀。
・マリ:ハンナー・ヘルツシュプルンク:ベンヤミンの中学時代の同級生。
・マルティン・ボーマー:シュテファン・カンプヴィルト:捜査官。
・ハンネ・リンドベルク:トリーヌ・ディルホム:ユーロポールの捜査官。
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