「ダイアナ」(原題:Diana, 2013)を見た。
元英国皇太子妃ダイアナがパリで1997年8月31日に交通事故死してから、満20年になる。36年の生涯を閉じたダイアナ妃の死の直前までの2年間の苦悩などその知られざる一面に迫る人間ドラマ。監督は「ヒトラー 最期の12日間」のオリヴァー・ヒルシュビーゲル。ダイアナを演じるのはナオミ・ワッツ。
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【背景】1981年、保育士だったダイアナが、チャールズ皇太子と結婚、20歳の可憐なプリンセスの誕生に人々は熱狂。翌年には長男、続いて次男が誕生するが、伝統を重んじる英国王室と現代的な都市生活を愛するダイアナとの間に溝ができていく。
さらにチャールズの不倫と、ダイアナの秘密の恋が発覚。おとぎ話は離婚で終わった。初めて自立した人生を歩み始めたその矢先、1997年8月31日、事故により全世界を夢中にした36年の生涯を閉じる。ダイアナ自身の人生―それはたった2年間のことだった。
映画は「人々の関心は地雷の恐怖ではなく、ダイアナ妃とドディのロマンス。昨夜もダイアナ妃の車が・・・」というナレーションで始まる。
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1995年、英国皇太子妃ダイアナ(ナオミ・ワッツ)は夫チャールズと別居して3年、2人の王子とも離れ、寂しい暮らしを送っていた。そんなある日、心臓外科医のハスナット・カーン(ナヴィーン・アンドリュース)と出会う。
心から尊敬できる男性にやっと巡り逢えたと確信するダイアナ。
BBCのインタビュー番組に出演し、別居の真相を告白、“人々の心の王妃”になりたいと語って身内から非難されるが、ハスナットは彼女を励ましてくれた。
1年後、離婚したダイアナは、地雷廃絶運動などの人道支援活動で世界中を飛び回る。自分の弱さを知るからこそ、弱者の心を理解する彼女は、人々を癒し、政治を動かす力も持ち始めていた。
一方、ハスナットはゴシップ紙に書きたてられ、彼の一族からも反対される。ダイアナは、ドディ・アルファイド(キャス・アンヴァー)との新しい関係に踏み出すが・・・(MovieWalker)。
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1997年8月31日、パリ。ホテル前には、大勢のマスコミとカメラ、車がならんでいた。ホテル内では、一人の女性がボディガードらと共にホテルの通路を歩きエレベーターに乗り込んだ。
われわれは知っている。この後、ダイアナの車がパパラッチに追われ、ダイアナの車が事故を起こしダイアナも同乗していたドディが亡くなったことを。そのシーンは一切映さずに、場面は「その2年前」へタイムスリップする。
そして「ダイアナ妃がチャールズ皇太子と別居して3年が経とうとしていた」という字幕が出る。ダイアナは、鏡の前で、インタビューの受け答えの準備(リハーサル)をしていた。「手と足を傷つけました。私たちの結婚は2人ではなく3人でした。人数オーバーでした」と。3人というのは、チャールズの長年の愛人で公然の秘密といっていいボウルズ夫人の存在だった。
一方、テレビのニュースでは、チャールズ皇太子にインタビューが行われていた。「離婚の原因は、あなたの不倫が?」「またその話か」・・・ダイアナはリモコンで「またその話か」のところにビデオを巻き戻し、リモコンを投げつける。
この映画は、ダイアナの悲劇を描くというよりも、死ぬ直前の2年間の病院の心臓外科医でダイアナを特別扱いせず、まるでその身分も知らないような態度で接するハスナットというパキスタン人との充実した時間の幸福感とその一族、とりわけ母親の反対などによる心の葛藤などを描いている。
ダイアナと心臓外科医との出会いのシーンもいい。
病院を個人的に見学に来たダイアナに、外科医のハスナットは、希望するなら病院内を案内しますよと自然に気軽にいうのだった。「どうやって連絡すれば」と石が言うので、携帯を4台持っていると答えるダイアナ。「ではそのひとつの番号を教えてほしい」とハスナット。こうして二人は、ハンバーガー店などで、会い、距離を急速に縮めて行く。
ダイアナは宮殿に住んでいると、ジャンクフードといわれるハンバーガーなども食べたことがないという。ハスナットは、デリバリーでハンバーガーを届けてもらい、ワインを飲む。(ちなみにバーガーはマックではなく、バーガーキングだった)これを見て「こんなジャンクフード、ワイン、タバコなど宮廷にはないわ」とダイアナ。
金髪のダイアナだが、黒髪のかつらをつけて、ハスナットとジャズを聴きに行くシーンがなかなかいい。ド・ウエィン・ジョンソン・カルテットというバンドの司会者が、マイクを手にして「きょうはマイクが死んでいる」というと、ダイアナは、その言葉に吹きだして、大声で笑ってしまう。常連客たちから注目もされてしまう。司会者は「(ダイアナのほうを見て)今夜のマダムは初めてのようで」とフォローする。
ハスナットの出身地であるパキスタンのラホールに、ダイアナはハスナットの家族、とりわけ力を持っている母に会いに行く。この母親が、知識が豊富で、セリフがすごい。英国人に対する過去の歴史への反発の言葉だが、「英国人と見ると話したくなってしまう」という。
ハスナットも二者択一を迫られる。医師として人を救っていくか、一族の反対を押し切って結婚に踏み切るかである。ダイアナが、ハスナットが言えないなら自分がいうとして「結婚はノー」だろうと問い詰める。
新聞の一面に「ダイアナの恋人はパキスタン人」と大々的に報道される。結婚すると、パパラッチに追いかけられ、医師の仕事ができなル刈ることを案じた。
一方、ダイアナは、時代を踏んで、足を無くしたり、心臓が飛び出してしまったという子供たちを慰問。自ら、地雷が元あったところを歩き、地雷撤去を訴えていく。これがイギリスの労働党などから「はた迷惑な女」というレッテルを張られることになる。
アンゴラ訪問で、地雷事故は60%削減されたと文字が出る。
ダイアナの死から3か月、対人地雷の禁止条約が成立。
現在までに161か国が調印を行った。ハスナット・カーン医師は今も、外科医の職務にあるという文字が出る。
主な出演者:
ナオミ・ワッツ(ダイアナ)、ナヴィーン・アンドリュース(ハスナット・カーン)、キャス・アンバー(ドディ・アルファイド)、ジェラルディン・ジェームズ(ウーナ・トッフォロ)、チャールズ・エドワーズ(パトリック・ジェフソン)ほか
監督:オリバー・ヒルシュビーゲル
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映画はイギリスでは酷評だったという。「クイーン」(2006)では、エリザベス女王を「ダイアナ」では、元皇太子妃ダイアナを描いているが、ほぼ事実に基づいた映画で、知られざる一面を知ることができ、その意義は大きい。
1997年9月上旬、たまたま仕事で日本からツアーでパリを訪問中、ダイアナ妃が事故にあったアルマ橋近くをバスで通ったが、献花の山があった。わずか1週間前に不慮の事故があった痕跡を見たのがいまも記憶に新しい。
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