ベートーベンの「第九」を日本で初めて演奏したドイツ人捕虜の実話を壮大なスケールで映画化。真の正義感にあふれた人情派の収容所所長を「暴れん坊将軍」の松平健が熱演。共演は、高島礼子、阿部寛、國村隼、大杉漣、平田満、市原悦子など。
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1914年に勃発した第一次世界大戦。
日本軍はドイツの極東における拠点地である中国・青島(チンタオ)を攻略した。
この戦いで敗れたドイツ兵4700人は捕虜として日本国内の12ヶ所の俘虜(ふりょ)収容所に送られた。(俘虜は捕虜の古い言い方)。
ここでは捕虜たちによるオーケストラが活動し、パンを焼いたり、収容所内向けの新聞を印刷・発行することも許されていた。
ソーセージを肴にビールを飲む自由さえあった。脱走を計った捕虜・カルルがパン焼き職人だと知った松江所長はパン焼きを任せることにする。
そんなある日、日本とドイツの混血少女・志を(しお、大後寿々花)が、ドイツ人の父を探してやってくる。調べによって志をの父が戦死していたことが判る。ある兵士から父の形見のロケットを渡され、泣き崩れる志を。
そんな頃、捕虜たちが作った製品や菓子、演奏などを披露する世界でも類を見ない「俘虜製作品博覧会」が開催された。そこで出会ったカルルと志をの間に親子のような交流が生まれる。
終戦によって解放されたドイツ人たちは松江所長や地元民への感謝を込めて日本で初めてベートーヴェンの「第九」を演奏した。その高らかな演奏が響き渡り、日本人とドイツ人の間に敵味方を越えた一体感が生まれるのだった。
ハインリッヒは感謝の印に松江に愛用のステッキを贈呈し、カルルは日本に残って志をを養女として引き取り、共に生きていく決心をした。様々な人々の想いを乗せて、「第九」は熱狂的な大団円を迎えるのだった(MovieWalker)。
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映画は、収容所もので、戦闘シーンはあるものの、舞台はほとんどが収容所の中だけ。「第十七捕虜収容所」にも似た設定だが、収容所・所長が、それぞれが敵・味方ではなく、祖国のために戦った人間として、平等に扱う姿に捕虜たちも所長を信頼して行く姿を描く。
模範収容所として2年半ほど実在した坂東収容所というのがあったことも、この映画で初めて知った。
映画のほぼ半分近くはドイツ語が使われているが、所長をはじめ、軍人の一部がドイツ語を話していたが、映画だからか(笑)。副所長役の国村隼は、通訳も兼ねて流暢なドイツ語を話していたが、もしかしたら、吹き替えかも。
ベートーベンの「第九」(第4楽章の旋律は有名な「歓喜の歌(喜びの歌)」)が日本で初めて演奏されてという史実が興味深い。映画の最後に、ベルリンフィルを率いた故カラヤンの演奏風景と、元ソニー社長&会長でバリトン歌手の故・大賀典夫の指揮する姿も見える。
主人公の松江は、会津の出身ということで、ドイツ人将校に、会津人の歴史について説明するシーンがある。将校が自殺を図ろうとしたからだ。老人、子供、女性が戦争に駆り出され、日本の悲しい歴史があり、会津は日本政府の敵とみなされたこと、生き残ったものも、日本のシベリアといわれた北の極寒の地に追いやられたことなどについて説明したのだ。
今は、テレビなどでは、ハーフ・タレントが多くなっているが、当時は、差別用語ともいうべき「混血」「あいのこ」といった言葉が(映画の中でも)使われていた。
映画としての一般的な評価は低かったようだが、第一次大戦中のさなかにあった史実を、一部脚色しているものの、うまく再現しているので、歴史の一端を知るには面白い。
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