
「クレージー・ハート」(原題: Crazy Heart、2009)を見た。アル中のシンガーソングライターのカントリー歌手が、シングルマザーの女性記者との出会いによってアルコールを断つ決意をし再生する姿を描く。
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かつて一世を風靡したシンガーソングライターのバッド・ブレイク(ジェフ・ブリッジス)は57歳になった今、ドサ回りの歌手に落ちぶれていた。彼の弟子トミー・スウィート(コリン・ファレル)は、若手トップシンガーとして人気を集めている。
バッドは新曲もかけず、酒に溺れていた。バッドはショーのため訪れたサンタフェのバーで、バンドのピアニスト、ウェズリー(リック・ダイアル)から、彼の姪で地元紙の記者ジーン・クラドック(マギー・ギレンホール)の取材を受けるよう頼まれる。
バッドはジーンと打ち解けるが、トミーや結婚といった核心に触れると、一方的に取材を打ち切ってしまう。ショー終了後、バッドはジーンとなりゆきで一夜を過ごす。しかしジーンは4歳の息子バディを持つシングルマザーで、離婚の痛手から、バッドとの関係を深めるのを躊躇う。
バッドの次の仕事は、フェニックスの巨大スタジアムでのトミーの前座だった。
バッドは長年の付き合いのバーのマスター、ウェイン(ロバート・デュヴァル)に、ジーンの存在を告白する。スティーヴンに電話をかけ、元妻の死を知ったバッドは、スティーヴンに会いたいと伝えるが、スティーヴンは身勝手だと言い放つ。
ジーンはためらいつつもバディを連れ、ヒューストンを訪ねる。
ジーンはバッドに、バディの前でお酒を飲まないことを念押しする。しかしバッドはバーに立ち寄ってしまう。バッドがウィスキーを注文する間に、バディが姿を消す。警察に捜査を依頼した末、バディは見つかるが、ジーンとバッドの関係は変化し始める。バッドはジーンへの想いや新たな人生への希望を、新曲作りに託す。
その曲のタイトルは「クレージー・ハート」といった。1年4か月後、トミーが大観衆の前で「この曲は私の師匠が作ってくれた曲です」と前置きして、クレージーハートを歌うのだった。舞台裏からバッドとジャックが見守る。
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アルコール依存症で、口が悪く頑固な初老のカントリー歌手をジェフ・ブリッジスが見事に演じている。アル中で文無し、4回の結婚歴がある。28歳の息子がいるが、4歳の時以来会っていないことから、知り合ったジーンの息子に、自分の子供をダブらせたのかもしれない。一緒に遊ぶことに喜びを感じていた。
このバッドという男は、マネジャーが地方の仕事(ドサまわり)を入れてくるので、「ジャックの野郎(=ジーザスクライスト)」と電話で毎度文句を並べるが、教え子のトミーの前座の話を持ってくる。「トミーの前座なんか」と屈辱に感じたが、どん底から這い上がれるチャンスと思い「ジャックの野郎、恩に着るぜ」とつぶやいたりするのがいい。
アルコール依存症矯正会という会に入るバッド。そこで自分の体験を語る。
矯正会の指導者から「歌手だったとか?」といわれるとバッドは「今もそうだ」と答える。
シングルマザーを演じるマギー・ギレンホールは、バッドに好意を感じつつも、慎重に将来を選び、バッドとは別の道を歩みはじめていた。
マギー・ギレンホールといえば「主人公は僕だった」(原題:Stranger Than Fiction、2006)が印象に残る。ほかに「ダークナイト」などに出演。「ブロークバックマウンテン」のジェイク・ジレンホールは弟。
名わき役ロバート・デュヴァルが出演して、円熟味を見せている。
ジェフ・ブリッジスが歌っているのも驚きだが、ロバート・デュヴァルも歌うシーンがある。
人気歌手を演じるコリン・ファレルはひげ面だったので、最初はわからなかった。
師匠であるバッドに対しては、自身が有名になっても謙虚で、バッドに尊敬の念を抱いているところは、師弟感があってよかった。「フォーンブース」(2002)が代表作か。
ハリウッド俳優は、自身で製作を担当するケースがあるが、この映画では、ロバート・デュヴァルが製作に名を連ね、ジェフ・ブリッジスはエグゼクティブ・プロデューサーの一人でもある。
しみじみとした味わいのある映画だった。
”ワインのような”大人のドラマ(微妙な関係、空気感、機微・・・)を味わいたいという人あるいは、アル中に近い人?(笑)にはお勧め。
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