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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「息もできない」(2008、韓国映画)

 
息もできない(原題:トンパリ「クソバエ」、(英題):Breathless)を見た。日本では2010年の公開。重苦しそうな印象があったので、見るのが遅れた。
 
2010年キネマ旬報ベスト・テン外国映画ベスト・テン第1位外国映画監督賞(ヤン・イクチュン)受賞するなど、この10年の韓国映画では抜きんでて高い評価を得ている作品だ。韓国の俳優のヤン・イクチュン長編映画監督デビュー作。イクチュンは、監督、製作、脚本、主演、編集をてがけた。日本映画「夢売るふたり」(2012)には探偵役で出演している。
 
暴力描写、暴言が多く「15+」の制限あり。
映画の中で、100回以上主人公が使う言葉「シバラマ」(字幕:クソ野郎)が耳に残る。ネットなどでは「究極の”シバラマ”(=英語のFで始まる4文字言葉)映画」と言われているようだ。ともかく「シバル」(=この野郎)など韓国語の俗語のオンパレードだ。シバらく耳に残りそうだ。
 
女、子供、警官にまで暴力を振るう主人公は、借金取り立てのチンピラの”イカレ野郎”だが、演じているのが初監督でもあるヤン・イクチュンという俳優。すさまじいの一言。女子高生役のキム・コッピという女優も、このチンピラに負けないほどの強気で勝気な性格が痛快でもある。この演技で様々な賞を受賞した。
 
 
・・・
取立て屋のサンフンヤン・イクチュンは、借金回収や屋台の強制撤去などの暴力の世界に身を置いてい。仕事では容赦のない男が、甥のヒョンインを気にかける一面も持っている。
 
あるとき、サンフンが路上で吐いたツバが近くを歩いていた女子高生・ヨニキム・コッピに当たる。口論はやがて殴り合いに発展する、暴力に臆さないヨニはサンフンのことをチンピラ扱いしてからか。不思議と波長が合った2人は、別れ際に連絡先を交換する。 
 
サンフンは暴力的な家庭で育ち、幼い頃父親の手で妹と母親を失った過去がある。憎しみを抱き続けているサンフンは、出所した父の元を訪ねるたびに殴りつけていた。
一方ヨニは、母親を屋台の強制撤去の最中に亡くし、精神を病んだ父親の世話をしてい。母が死んだことを理解できない父に罵倒され、弟のヨンジェイ・ファンは高校に行かず荒れた生活を送っていた。
ほどなくヨンジェはサンフンの元で働くようにな。取立て屋の仕事を見て怖気づくヨンジェに対して、ヨニの弟だと知らないサンフンは激しく罵倒する
 
 
 
 
やがてサンフンとヨニは、食事を共にする機会が増えていく。ヨニは甥のヒョンインとも仲良くなり、サンフンも姉との関係を修復しようとする。ところが姉が自分に隠れてヒョンインと父を何度も会わせていたことを知り、暴力がエスカレートしていく
                                                     それによりヨンジェが家庭環境を悪化させ、ヨニは父親と口論になった末に包丁を持って迫られ、家を飛び出してしまう
その頃、苛立ちを募らせていたサンフンは自殺を図った父親を発見。病院に連れて行き自分の輸血で父の命を助け、その後ヨニを川岸まで呼び出す。サンフンはヨニに寄り添い、2人で涙を流すのだった
取立て屋から足を洗うことを決意したサンフンは、最後の仕事としてヨンジェを連れて借金回収に向か。負傷して油断しているところをヨンジェに襲われ、ハンマーで何度も殴打され。サンフンは遠のく意識の中、ヒョンインの幼稚園の学芸会のことを考えていた。
サンフンが亡くなった数ヶ月後、サンフンの仲間が焼肉店をオープンし、ヨニやサンフンの家族が祝いに駆けつけ
帰りに街を歩いていたヨニは、強制撤去される屋台の騒ぎからヨンジェの姿を見つけ。暴力行為をする弟を見て、昔の記憶が蘇。そして、かつて自分の母親を殺した人間がサンフンであることを思い出すのだった
出演:

サンフン(ヤン・イクチュン)、ヨニ(キム・コッピ)、ヨンジェ(イ・ファン)、マンシク(チョン・マンシク)、ファンギュ(ユン・スンフン)、ヒョンイン(キム・ヒス)
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家族(とくに父親)と問題のあるチンピラ男と女子高生の男女が出逢って少しずつ人生が変わっていくというストーリー。
 
ただ、互いの生活の実態は語らないため、サンフンはヨニは裕福な家庭で幸せだと思いこんでいる。決して似た者同士だとは思っていない2人が徐々に打ち解けていくところが見どころでもある。
 
運命の皮肉と言うのか、サンフンは自分を殺した相手がヨニの弟とは知らずに死んでいき、ヨニもサンフンを殺したのが自分の弟とは知らない。
 
また、ヨニの母親を殺したのはサンフンで間違いないが、サンフンは自分がヨニの母親を殺したことは知らない。しかし、ラストのシーンで、弟が屋台を襲撃しているところをたまたま見たヨニが弟の姿と当時のサンフンの姿を重ねる場面があり、ヨニはサンフンが自分の母を殺した相手と知ったようなのだが・・・。伏線として、前にヨニはサンフンに対して「あんたは人を殺したことあるでしょ」とジョークにしても語っていたこともあった。
 
物語の背景は、韓国版「闇金ウシジマくん」のような裏社会の取り立て業に身を置く男たちの話。取り立てのリストを持って、返済が滞っている家に出向き、「10秒以内にお金を返すか答えろ。俺たちが天使になるか悪魔になるか決めろ!」とすごむのだ。
 
手が付けられないチンピラの暴力男だが、その男が号泣するシーンがあり、そこは印象に残る。「クソ~」という言葉のオンパレード。「~」には「ガキ」「アマ」「ジジイ」「野郎」などありとあらゆる罵倒の言葉が入るという、とんでもない”シバラマ”映画だ。また、最後は救いもない、”バッド・エンディング”の映画でもある。”切なさ”も残る。
 
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