「パーフェクトワールド」(原題:A Perfect World、1993)は、クリント・イーストウッドが監督し、主演はケヴィン・コスナーだが、イーストウッド自身も警察署長を演じて、公開当時は、2大スターの共演として話題になった。犯罪心理学者としてローラ・ダーンが味わいのある演技を見せている。
映画の冒頭で、いきなり結末のシーンを見せられることがある。そのシーンを観客、視聴者のアタマに刷り込ませて、最後にそのシーンにつながっていき、そういうことだったのかと余韻を残すやり方だ。そんな映画は枚挙にいとまがないが、古くは「逢びき」や近年では「白いカラス」などがそのクチだ。
「パーフェクトワールド」のオープニングでは、草むらに寝そべっているように見えるケヴィン・コスナーが映し出され、近くには、忍者ハットリ君のようなマスクかと思ったら、”お化けのキャスパー”のお面が転がり、1ドル紙幣が何枚もひらひらと宙を舞う。「これはラストシーンだな」の瞬時に思った。空にはヘリが旋回していた。
予想通り、最後にこのシーンが再現されていた。
・・・
そのころ、ある一家に、ハロウィンでスーパーマンなどの扮装をした子供が数人、お菓子をもらおうとやってきて、ブザーを押していた。その家の女主人は、宗教上の理由でハロウィンは関係ないと断る。
脱獄した二人が途中、たまたま立ち寄った家は、8歳の少年フィリップ(T・J・ローサー)がいるまさにその家だった。2人は少年を人質に逃亡するが、ブッチはフィリップに危害を加えようとしたテリーを射殺してしまう。
すぐに厳重な警戒線が張られ、州警察署長のレッド・ガーネット(クリント・イーストウッド)が陣頭指揮に当たった。レッドはブッチが10代のころ、彼の更生のためを思って少年刑務所に送った当人だった。
だが、ブッチはそれを契機に犯罪の常習犯となり、ついには脱獄するまでに至った。レッドは、そこまで追い込んだのは自分だと強い悔恨の念にかられ、是が非でも自身の手で捕らえねばと思っていた。
犯罪心理学者のサリー(ローラ・ダーン)が同行することになり、サリーはレッドの独自の捜査に反発しつつも次第に彼にひかれていく。一方、一人前の男として接するブッチにフィリップは親しみと友情を覚え、彼のほうでも少年が気に入った。
父親を知らずエホバの証人の信者である母親のもとで、宗教上の厳しい戒律から年ごろの男の子の楽しみは何一つ与えられずに育ったフィリップ。
少年に自分に似たものを感じたブッチは、ハロウィンやローラー・コースターなどフィリップのささやかな望みをリストに書かせ、ひとつずつ実現させる。
少年を車の屋根に載せジェットコースター気分を味わせるブッチ(ケヴィン・コスナー)
母と自分を残して二度と帰ってこなかった父がたった1度よこしたアラスカからの絵ハガキを大事にしまっていたブッチは、「小さな相棒」を連れてかの地を目指す。
車の中で眠っていた彼らにマックという男が声をかけ、一人は彼の家に泊まった。
翌朝、フィリップやマックの孫と戯れるブッチは、小さな幸せを感じる。
だが、ラジオで脱獄囚のニュースを聞き、危険を感じたマックが彼から引き離そうとするあまり孫を突き飛ばしてしまうのを見て逆上する。優しい表情から一変して「孫を愛していると言ってみろ」と、狂気につかれたようにマックを脅すブッチ。
フィリップはそんな姿を見てたまらず、銃で彼を撃つ。その時、捜索隊が到着し、彼らを包囲した。レッドの説得に、ブッチはフィリップに別れを告げ、少年を引き渡そうとする。だが、誤認したFBI捜査官の銃弾が容赦なくブッチの胸を貫く。その手には、あの絵ハガキが握られていた。
・・・
8歳の少年を誘拐しての逃亡生活の中で、少年がクリスマスも知らず、綿菓子も食べたことがなく、ジェットコースターも写真でしか見たことがないというので、それらを実現させていき、まるで実の父と子供のような関係を丹念に描いている。
犯人追跡チームの一人としてFBIの捜査官も加わっているが、同行している女性犯罪心理学者サリーにちょっかいを出そうとするところで、警察署長レッドが、「ここには仕事で来ているんだ」(”One reason and one reason only”)と一喝するところがいい。
「俺がいいというまで絶対に撃つなよ。」
署長は、FBI捜査官には、いい印象を持っていないようで、負傷した犯人ブッチに狙撃銃を構えるFBI捜査官に、自分が許可するまでには絶対に撃つなと言い聞かせていたのだが、遠くから見て、犯人がハガキを取り出そうとしたのを、銃を取り出そうとしたと思い、引き金を引いてしまう。犯人の近くで、自分も相手も銃を持っていないことを確認していた署長が激怒するのは無理もない。
”I did'nt say when.”(撃てとは言っていない!)と言って、署長(イーストウッド)が一発、顔を殴りつけるのである。 そのあとがいい。女性犯罪心理学者サリーも、「何てことしてくれるの」と、身勝手なFBI捜査官の股間に蹴りを入れるのだ(笑)。
小ネタで笑わせるシーンも多く、飽きさせない。
ブッチとフィリップの二人が、着替えの洋服を買おうと「フレンドリー」という名前の店(笑顔の店)に入ると、女性店員は何があってもニコニコ。
「どうして、いつもにこにこしているのか」とブッチが聞くと、女性店員は「笑顔のコンテストがあって、20ドルもらえるのよ」と屈託がない。ところが、店の事務方の男が、ブッチとフィリップの二人が逃亡中の容疑者であることを知ると、二人は、店を出る。子供は、店の品を万引き。女性店員たちは、ようやく事態を理解。ブッチは、「笑顔は?」とっても、笑顔が戻ることはない。
少年が、トイレに行きたいというと、木陰で用をたせというブッチ。
用を足す時間が長いので、ブッチが「RCコーラを何本飲んだんだ」と聞くと「4本」と答える少年。それは飲みすぎだ。
クリント・イーストウッドとケヴィン・コスナーの共演というのが貴重だ。
☆☆☆
※当ブログにおける最近の「クリント・イーストウッド出演作品」の【投票】では、第8位にランクされた。未見作品だったので見た。
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
「にほん映画村」に参加しています:ついでにクリック・ポン♪。