スタンリー・キューブリック監督の「恐怖と欲望」(原題:Fear and Desire、1953年)を見た。この映画は、巨匠スタンリー・キューブリックの幻のデビュー作と言われている一点だけでみる価値はありそうだ。
一般的にデビュー作と言われる「非情の罠」以前に製作されたが、その出来に不満を抱いたキューブリックが、プリントを買い占め、自らの手によって封印してしまった戦争ドラマ。キューブリック作品であり、62分という短さだったので見た。アメリカでは2011年、日本では、2013年に公開された。Gyaoで配信中。
戦場に取り残された4人の兵隊たちが極限状態に陥り、精神を崩壊させていく姿が描かれているが、監督が「アマチュアの作品」と位置づけているように、作品は中途半端だった。
映画の冒頭で、主人公らしき兵隊の独白、ナレーションで語られる。
この物語は、実際に起こった話ではなく、戦争の極限状態に置かれた場合に、普遍的なものである、といった意味の言葉である。
どこかの国で起こっている戦争。爆撃を受け敵地の森へ墜落した4人の兵士たちがいた。空軍の上官コービー中尉(ケニス・ハープ)、ベテランのマック軍曹(フランク・シルヴェラ)、若い新米のシドニー二等兵(ポール・マザースキー)とフレッチャー(スティーヴ・コルト)二等兵である。
彼らは森に沿って流れる河を、筏(いかだ)を作り下って脱出することを計画。
その対岸に敵軍のアジトを発見する。マック軍曹は奇襲をかけることを提案するが、コービー中尉に反対される。
翌日、河で洗濯中の地元の女性(ヴァージニア・リース)に姿を見られた4人は彼女をベルトで木に縛り付け拘束する。女性の見張をしていたシドニー二等兵は、言葉が通じない女性に、なんとか言葉を伝えようと、コメディアンのような仕草で笑わそうとするが、反応がない。ベルトを外して自由にすれば、自分に興味を持つだろうと考えたが、ベルトが外れた瞬間、女は彼を振り払って逃げ出す。
出演俳優は、ほとんど無名で、やたらと顔のアップが多いが、森の中で、敵軍に近いところに墜落して生き延びたのだが、極限状態で、精神状態がおかしくなるものや、イチかバチかで敵陣のアジトに奇襲をかけ、相手を問答無用で殺したり、投降したものも銃殺してしまう。誰もが死にたくないという幻、幻覚に支配されてしまうことが起こると言いたかったのか。
戦争の狂気を描いたのだが、実際に相手を殺すシーンなどは、直接的な表現は避け、手の動きなどで見せているところはインパクトがあった。同じ狂気を描くにしても、後の「博士の異常な愛情」のような鋭さ、皮肉はなく、単調だった。
予告篇
・・・
監督作品:(16本中11本鑑賞:太字)
「拳闘試合の日」 Day of the Fight (1951年)
「空飛ぶ牧師」 Flying Padre (1951年)
「海の旅人たち」 The Seafarers (1952年)
「恐怖と欲望」 Fear and Desire (1953年)★★
「非情の罠」 Killer's Kiss (1955年)
「現金に体を張れ」 The Killing (1956年)☆☆☆☆
「突撃」 Paths of Glory (1957年)
「スパルタカス」 Spartacus (1960年)☆☆☆☆
「ロリータ」 Lolita (1962年)☆☆☆
「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」 Dr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the
Bomb (1964年)☆☆☆☆
「2001年宇宙の旅」 2001:A Space Odyssey (1968年)☆☆☆
「時計じかけのオレンジ」 A Clockwork Orange (1971年)☆☆☆☆
「バリー・リンドン」 Barry Lyndon (1975年) ★★
「シャイニング」 The Shining (1980年)☆☆☆
「フルメタル・ジャケット」 Full Metal Jacket (1987年)☆☆☆
「アイズ・ワイド シャット」 Eyes Wide Shut (1999年)(遺作)☆☆☆
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
「にほん映画村」に参加しています:ついでにクリック・ポン♪。