「櫻の園」(1990)をようやく見た。
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さらに、前日、部員の杉山紀子(つみきみほ)がタバコを吸って補導されたというニュースに動揺する部員たち・・・。女子校生たちのリアルな会話や、うわさ話、人間関係などが生き生きと描かれていて、驚嘆させられる。
タイトルはチェーホフの「櫻の園」からとっているが、短大までの女子一貫教育の女子高を舞台に、演劇部員たちが創立記念日に毎年上演される「櫻の園」の上演をめぐって日常生活がみずみずしく描かれている。登場人物の女子校生たちが、まるでアドリブで自然体でしゃべっているような錯覚すら覚える。脚本がよくできているということかもしれない。
杉山紀子が、土曜日の夜、他の女子高の生徒たちと喫茶店でタバコを吸っていたところを警察に見つかり、楯突いたということが校内で大問題となった。場合によっては、「櫻の園」の上演は中止か、といった騒動の中で、里見先生の涙の訴えなどでなんとか上演は中止にならずに済んだのだが・・・。
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女子生徒などの登場人物が多く、名前と顔、関係性などを1回だけで頭にいれるのは大変だが、演劇部では、緊急事態時の連絡網があって、”杉山事件”も前日に全員に伝わっていたはずだが、舞台監督のかおりは外泊していたり、噂が噂となって・・・。
女子生徒が、教師たちの話をしている時に「松村先生」「有田先生」と先生と呼ぶのに対して、「坂口」先生の場合だけ、「坂口」と誰もが呼び捨て。映画には、坂口はわずかなカットだけ登場するが、その嫌われぶりが分かる。演劇部の担当の里見先生は、坂口の教え子だったということで、里見先生を先生扱いしていないこともわかってくる。
この映画の物語としては、チェーホフの「櫻の園」を演ずる演劇部の、朝から昼頃までのごく短い時間を描いた作品だというのが驚きだ。とくに驚くような出来事があるわけではない。それでいながら、いつの間にか引き込まれてしまうのは中原俊監督の巧さか。
女子高生の会話のタッチが、小気味いい。普段の会話と、舞台を演じるための芝居がかったセリフの組み合わせがうまい。女子高生たちのはしゃぐ動き、何気ない陽気な動きをうまく取り込んでいる。映画としての格式を保ち、女子高生のリアリティを捉えた映画としてすばらしい。
女子高生の会話のタッチが、小気味いい。普段の会話と、舞台を演じるための芝居がかったセリフの組み合わせがうまい。女子高生たちのはしゃぐ動き、何気ない陽気な動きをうまく取り込んでいる。映画としての格式を保ち、女子高生のリアリティを捉えた映画としてすばらしい。
例えば、ある生徒が「清水先生は、(恐れをなして)ばっくれたんじゃないの」(ばっくれる=知らばっくれて姿を消す?)と言うセリフがあり、清水先生が、それを聞いていて、立ちさろうとすると、生徒が「どこへ行くんですか?」と聞くと、「ちょっとばっくれてくる」というのだ。なかなか当意即妙のセリフだ。
また、頭をパーマにして教師から注意を受ける清水は「演劇が中止になるよう”暴動”を起こしたい」と言っていたが、結局、劇は実施されることになり、同級生から「清水さん、”暴動”できなかったですね。残念?」と聞くと、「残念」という返事だった。
エンドロールで登場人物と名前がでてくるが、あの名前があの女優だ、というようには結びつかない。中島ひろ子くらいは知っているが、ほとんどが無名の役者のようだ。
見た目による周りの判断と本人の悩みのギャップなども描かれている。
背が高く、さっぱりしているとみられる倉田は、もうすこし(背も低く)女らしく生まれてきたかったと思っていた。また、倉田に想いを寄せる清水は、しっかりもののように見られるのが嫌だった、というふうに。
この倉田と清水がツーショットでカメラをで写真を撮るシーンは、だんだんと脚立に設置されたカメラに近づいてきて、何度もリモコン・シャッターを押すのだが、二人がだんだん顔を近づけていくシーンは、ドキっとさせられる。
もう一度見てもいいような映画だ。
ひろちゃんは数年前に記事にしているが、その時点で7回見たというが、その都度引きこまれると書いていた。
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