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<span itemprop="headline">映画「終着駅」(1953):(再見)ジェニファー・ジョーンズの魅力。</span>





ヴィットリオ・デ・シーカ監督の「終着駅」(原題:(伊)Stazione Termini、(米)TerminalStation、1953、米伊合作)を約40年ぶりに再見した。テレビ放送(1974年10月30日、「水曜ロードショー」)とその前には、深夜放送でも見たので、印象深いシーンなどはよく覚えていた。映画はモノクロ、1時間28分。キネマ旬報ベストテンの5位に支持された。

恋愛映画、メロドラマ(英語でSoap Opera)の大傑作の1本で、主演のジェニファー・ジョーンズが演じる若き人妻(夫や家族は登場しない)のためらいやそれを押さえる理性との葛藤などが豊かな表情で見事に描かれており、この種の映画ではデヴィッド・リーン監督、シリア・ジョンソン、トレバー・ハワード主演の「逢びき」(1945)と双璧と考えている。

ハリウッドの大プロデューサー、デヴィッド・O・セルズニックは「逢びき」に匹敵するドラマをつくろうという意図があったというのだから意気込みが違う。映画の舞台となるのは、「ローマのテルミニ駅(ターミナル駅の一つ)」だけであり、列車の出発時刻
20:30に向けて、ほぼリアルタイムに時間が同時進行していくところもいい。



・・・
米国人の若い人妻メァリー・フォーブス(ジェニファー・ジョーンズ)は、マフラーとコートに身を包み、”ジョヴァンニ・ドリア”という名前のアパートの一室のドアブザーを押すのをためらって、ジョヴァンニに別れを告げることなく、ローマを立ち去ろうと駅に急ぐ。

メァリーは、断ち切りがたい想いを残してローマの中央駅にやって来た。
彼女は妹の家に身を寄せて、数日間ローマ見物をしたのだが、その間に1人の青年と知り合い、烈しく愛し合うようになってしまったのだった。

青年はジョヴァンニ・ドリア(モンゴメリー・クリフト)という米伊混血の英語教師で、彼の激しい情熱に、メァリーは米国に残してきた夫や娘のことを忘れてしまうほどだったが、やはり帰国する以外になすすべもなかった。

妹に電話で荷物を持って来るよう頼み、午後7時に出発するミラノ行の列車にメァリーは席をとった。発車数分前、ジョヴァンニが駆けつけた。彼はメァリーの妹から出発のことを聞いたのだ。

彼の熱心なひきとめにあって、メァリーの心は動揺した。彼女はその汽車をやりすごし、ジョヴァンニと駅のレストランへ行った。ジョヴァンニの一途な説得に、メァリーは彼のアパートへ行くことを承知したかに見えたが、丁度出会った彼女の甥のポール(「ウエストサイド物語」の子役時代のリチャード・ベイマー)少年にことよせて、彼女は身をかわした。

ジョヴァンニはメァリーを殴りつけて立ち去った。メァリーとポールは3等待合室に入って、次の8時半発パリ行を待つことにした。そこでメァリーは妊娠の衰弱で苦しんでいる婦人の世話をし、心の落ち着きを取り戻した。

ジョヴァンニは強く後悔して、メァリーを求めて駅の中を歩きまわった。
プラットホームの端に、ポールを帰して1人たたずむメァリーの姿があった。
彼は夢中になって線路を横切り、彼女のそばに駆け寄ろうとした。そのとき列車が轟然と入ってきた。一瞬早くジョヴァンニは汽車の前をよぎり、メァリーを抱きしめた。

2人は駅のはずれに1台切り離されている暗い客車の中に入っていった。
しばらく2人だけの世界に入って別れを惜しむのも束の間、2人は公安委員に発見され、風紀上の現行犯として駅の警察に連行された。

8時半の発車時刻も間近かに迫り、署長(ジーノ・チェルヴィ)の好意ある計らいで
2人は釈放された。いまこそメァリーは帰国の決意を固めて列車に乗った。ジョヴァンニは車上で彼女との別れを惜しむあまり、動き出してから飛び降りホームの上に叩きつけられた。列車は闇の中に走り去っていった(MovieWalker)。

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ジェニファー・ジョーンズは「慕情」のチャイナ・ドレスもいいが、「終着駅」の表情、魅力というのは、「ローマの休日」のヘップバーン並み。最後に電車で別れる時も、ジョヴァンニを名残惜しく見つめながら「私はすぐあれこれと考えてしまう。今この瞬間、あなたはどうしているか、何を考えているか、恋人はいるのか、きれいなひとかしら」というシーンなどがなかなかいい。ジョヴァンニは、メァリーがアメリカに着いたら手紙で連絡をしてくれと頼むと「できない」というのだが、「せめて無事に着いたということだけでも電報で知らせて欲しい(Will you cable for me?)」と懇願すると、「できるかぎり」という返事。

この映画の駅の署長が素晴らしい。
男女が引き込み線の列車に侵入したという報告を受けたのだが、メァリーから話を聞き、「ご主人と子供がいて、報告書が公になり裁判になれば、面倒なことになるだろう」と、報告書を破り捨てて、パスポートを返し「8時30分の列車だと、急がないと。お気をつけて」と寛大な計らいだった。

相手役のモンゴメリー・クリフトエリザベス・テイラーと共演した「陽のあたる場所」や「ニュールンベルグ裁判」とともに代表作の1本だろう。

この映画が公開された当時は、駅の終点を示す言葉はそのまま「終点」しかなかったが、この映画のタイトルから「終着駅」という言葉が定着したというから、映画の影響は大きい。


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