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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「女経」(1960)若尾文子、山本富士子、京マチ子のオムニバス映画。

 
若尾文子”追っかけ”シリーズの第2弾は「女経」(じょきょう)(1960)。
3話からなるオムニバス映画で、監督もそれぞれ別。1960年前後の風俗がよく出ていておもしろい。この当時の日本映画は、ネオン街、夜の街や風俗を描いた映画が多い。
 
3話の中では、第1話の若尾文子のしたたかで、アバズレ的な中に男を惹きつける演技は絶品。第2話の山本富士子といえば、1950年に第1回ミス日本の座に輝き、翌年ミス日本の肩書きで公式渡米し、マリリン・モンローらに会っている。
 
53年に映画界入りした。「女経」では、登場したときは、セリフの棒読みかと思ったら、すべてが策略で、裏がありあっと驚かされた。第3話の京マチ子は、姐御肌で、きっぷがいい役が多いが、この映画でも堂々としていた。
 
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耳を噛みたがる女」(主演:若尾文子
紀美(若尾文子)は隅田川にもやうダルマ船の娘だが、貧しい家庭に愛想をつかし銀座のキャバレー・ゴンドラにつとめて男どもを巧みにだましては金をまきあげ、株を買っていると若さに似合わないしたたかさ。
 
会社社長の後とり息子・正巳(川口浩)は、この紀美を陥落させて見せると友人の春本(田宮二郎)と賭けをした。スポーツカーでのドライブ、それからパチンコ屋、ついでゴンドラで飲んだ正巳と紀美はホテルの一室へ落ち着いた。
 
正巳を好きでたまらないという紀美。翌朝、紀美の寝ているうちに正巳はホテルをぬけ出した。ついに賭けに勝った。が、正巳にはどうもスッキリしない後味だった。どうも紀美は商売ぬきで本気に自分を愛していたのではないか・・・。
 
実は、この日、正巳は父の命令で好きでもない娘と結婚式を挙げることになっていた。昨夜は、いわば自由と恋愛の最後の夜だったのだ。好きでもない女と結婚するより、自分を本当に愛している女と・・・。正巳は紀美を探しに出た。そのころ紀美は友人の五月(左幸子)のアパートで、五月あての正巳の結婚披露の挨拶状を見つめていた。
 
そこへ正巳が飛込んできた。正巳は紀美の心を確かめようとした。が、紀美は、昨夜のお金を頂戴と手を出した。怒った正巳は部屋を飛び出した。正巳の将来を思う紀美の心も知らずに。今夜からまた男をだまして金を巻上げよう・・・。紀美の顔に悲しいかげが走った。「兜町(かぶとちょう)へ行ってくる」と出かける紀美だった。
 
 
物を高く売りつける女」(主演:山本富士子
流行作家三原靖氏失踪か! 自殺の恐れあり」と新聞が報じたころ、当の三原氏(船越英二)は空ろな眼をして湘南の海岸に身を横たえていた。その彼の眼前を一瞬よぎった白い顔の女。三原氏はギョッとした。翌日三原氏は砂浜に泣く彼女(山本富士子)の姿を見て再びギョッとした。
 
夜、女は燃える手紙の束を見ていた。三原氏は彼女の傍に立った。女は死んだ主人の手紙を焼いていると言った。激しく惹かれた三原氏は彼女の眼を盗んで手紙の端をポケットに入れた。
 
翌日、一軒の別荘の前に彼女が立っていた。三原氏は招ぜられて中へ入った。
風呂をすすめられた。湯舟につかる三原氏の前に白い裸身の女が入ってきた。
上気した三原氏は女の頬に思わず接吻した。
 
女は、主人がお風呂のとき、いつも私に背中を流させました、あなたの背中を主人と思って流させて頂きありがとうございましたと礼を述べた。そして、女は実家も主人の家も東京にあり、この家は売りに出してあると話した。
 
三原氏は好奇心にかられ、この家を女もろとも買うと言った。
売値は六百万。契約の日、三原氏は百万円を持って女の家を訪ねた。
売買契約書を持った女の態度は大へん事務的だった。
 
翌日、三原氏が女を訪ねると誰もいず、売買契約の事務は不動産がやるとの女の置手紙があった。そのころ、女(土砂爪子)は不動産から売買手数料の五万円をもらっていた。
 
女は美貌を資本とする住宅ブローカーだった。してやったり、ところが彼女のアパートに三原氏が訪ねてきた。驚いて謝る爪子。しかし三原氏はあの家を売って五十万円儲けたと言った。氏は爪子が燃し残した請求書から、彼女のからくりを知ったのだ。“君と結婚すればノイローゼにもならないし、小説の種もつきない”三原氏はにやりと笑った。
 
 
恋を忘れていた女」(主演:京マチ子
お三津(京マチ子)は京都の修学旅行専門の宿屋の主人だ。
昔は先斗町の売れっ妓。碇家に嫁ぎ主人に先立たれてから舅の五助に楽隠居させ、木屋町に酒場、先斗町お茶屋を経営する働き者である。
 
死んだ主人の妹・弓子が恋人吉須と結婚するため金を借りにくるが、碇家の財産を狙ってきたものと思い、いい返事をしない。この碇家に名古屋の小学校の団体が宿泊したが、生徒の一人がオートバイにはねられて重傷を起し大騒ぎ。そこへ、お三津の芸妓時代の恋人・兼光(根上淳)から電話がくるが、お三津は居留守を使う。
 
何やかやでクサクサしたお三津は自宅へ帰るが、一度関係を持ったことのある五助(二代目中村鴈治郎)は、お三津に迫る。五助を突き飛ばして自分の酒場チャイカへ走ったお三津は、そこに彼女を待っていた兼光の傍へ座って泣き伏した。
 
が、昔のことを思って訪ねてきたと思った兼光に二百万円の手形を割引いてくれと切出され、お三津は彼との情愛に水をさされた。そのとき、刑事が入ってきた。九州で詐欺をやった指名手配の男、兼光を逮捕に来たのだ。
 
兼光は抵抗も空しく捕った。そこへ碇家から、怪我した生徒が重態という電話。
病床に駆けつけたお三津は子供の苦しそうな姿に輸血を申し出た。助かった子供の感謝の眼は、自分のことしか考えずに生きて来たお三津に新しい喜びを与えた。
 
東京へ帰る弓子と吉須が挨拶に来た。お三津は気持よく金をやった。そして自分も、刑務所へ入った男を待って女の幸せをもう一度つかみたいと明るく言った。
 
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耳を噛みたがる女」では、紀美(若尾文子)の妹が、「あたいも姉ちゃんのように稼ぎたいな」というと、紀美は「ダメダメ、オッパイが大きくならないとね」。すると妹は「なにかゴム製品ないかな」と自分の胸を見ながら言うと「オッパイだけじゃないよ。カラダの全部がさ、貫禄がつかなきゃ」。「姉ちゃんは立派だからね」と妹が言うと、紀美はウインクして立ち去るのだ。そんな紀美は、「男は信用できないけど、お金は正直よ。どんどん増えて楽しみだわ」と株投資に力を入れるバイタリティ。若き日の田宮二郎が出演していた。
 
「物を高く売りつける女」の山本富士子も、最初の登場シーンから、なにか曰くありそうだったが、やがて、その本性が明らかになり唖然とさせられる。女は怖い!だった。
 
恋を忘れていた女」の京マチ子は、普段は店を取り仕切る女将だったが、思いやりがあり、純情な所を見せる。
 
当時のパチンコの風景があったが、もちろんいちいち玉を入れていく手動式で、イスもなく全員が立ってパチンコをしている姿も、時代を感じさせる。3話では、京マチ子が「交通公社へ行ってきて」(日本交通公社は民営化され現在のJTB)だったり、オープンリールのテープデッキも登場。「ベンジン」ひと瓶30円なども。 「Always三丁目」が、当時を知らない若い監督が作り、時代考証もイマイチだったのと比べると、リアルタイムの映画は段違いに時代をそのまま反映している。
 
監督: 増村保造  
  第一話「耳を噛みたがる女」
  市川崑  
  第二話「物を高く売りつける女」
  吉村公三郎  
  第三話「恋を忘れていた女」
製作: 永田雅一
 
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