「俺はまだ本気出してないだけ」(2013)を見た。
監督は、先日見たばかりの「大洗にも星はふるなり」や「HK/変態仮面」の福田雄一。主演は堤真一で、ダメダメ男ぶりを演じて、友人の子供からは「パパがあんな大人になったらいやだ」と言われるほどのだらだら人間を熱演。漫画を原作としたコメディ。
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「本当の自分を見つける」と勢いで会社を辞めてから1ヵ月経つが、朝から寝転んでゲーム三昧、志郎はそんなシズオに毎日怒鳴り散らしている。
「まともな仕事をしてくれ」と嘆く父親(石橋蓮司)。
ある日、本屋で立ち読みをしていたシズオは突然ひらめき、「俺、見つけちゃった。マンガ家になる」と宣言。親の志郎からは「バカだな」と言われ反対されるが「俺の人生の40年を描ききってやるよ」と気合で始めるが・・・。
「まずはタイトルからだ。ダメだ、描くことができない。漫画家と言ったら徹夜だろう。太陽が眩しすぎる」などと自分に言い聞かせる。
根拠のない自信をもとに出版社に持ち込みを続け、「大人の実力を見せちゃっていいかな」と担当編集者の村上(濱田岳)にいうと、「いいとも!」などと励まされつつ雑誌掲載を目指すも、原稿はすべてボツ。
バイト先のファーストフード店でのあだ名は“店長”だが、新米の外国人の新人に叱られ、バイト仲間と数合わせの合コンに行ってもギャグは不発。さらには鈴子に「2万円貸してくれない」と借金。鈴子は「いいよ」とポンと貸す。そして、何かと理由をつけては幼馴染の宮田(生瀬勝久)と飲みに行ってしまう。
そんな中、バイト先に金髪の新人・市野沢(山田孝之)がやってくる。
初日からやる気がない彼をシズオは飲みに誘うが、宮田の奢りで自分は泥酔。
シズオを送った市野沢は大黒家に泊まり付き合いが始まる。
しばらく後、市野沢はバイトを辞めてキャバクラで働き始めるが、何かと揉め事が多い様子。
シズオも自信作の自伝マンガを持ち込むが結果はボツ。
家では志郎と取っ組み合いの大ゲンカになり、シズオは家出。
宮田には断られ、市野沢の家に転がり込むシズオ。
「マンガは本気か、趣味か」悩んだシズオは改めて「デビューしたい」と思い直す。「俺には運がないだけ」と考えたシズオは、いかにも怪しげな占い師(佐藤二朗)に運気の上がるペンネームを付けてもらい“中村パーソン”の名前で描いたマンガが新人賞の佳作に引っかかる。一コマだけ小さく掲載された雑誌を買い占めたシズオ。
果たしてシズオにデビューの日は訪れるのか・・・。
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シズオは、娘の鈴子に「俺がデビューしたらどうする」と聞くと鈴子は「わかんないから、デビューしてみてよ」という言葉が、シズオの頭にこびりつく。
シズオは、妄想が膨らみ、5年後に「新作がハリウッドで映画化される」という鈴子は結婚して子供もいて・・・と自分に都合のいい夢を見ている。
時々、このままでいいのか、という問い掛けが聞こえてくる。17歳の時のオールバックのシズオ、22歳のミュージシャンを目指していた時のシズオ、32歳のサラリーマン、さらに「カミ」という文字が書かれたシャツを着た、死後のシズオが登場して、ああでもないこうでもないと意見を交わす。
宮田を演じる生瀬勝久が、珍しくクセのない、まっとうな役を演じている。
妻と離婚し、小さな息子と月に一度会うのが楽しみの様子。子供には、優しく、美味しいパンなどを好きだけ食べさせている。そして、なんと、サラリーマンを辞めて、パン屋を始めるというのだ。子供が、父の友人・シズオのようなだらしない人間にならないように「パパと一緒にいたい」というのがいじらしく、別れた妻(水野美紀)と宮田は復縁する。
金髪男の市野沢(山田孝之)も、就職の面接でことごとく落ち、宮田のパン屋「ミ・ヤータ」で働くことになった。
大黒が、初めて気晴らしで風俗に行って、帰ろうとすると、なんと、娘の鈴子がそこでバイトをしていて鉢合わせ。気まずい空気で言葉も出ない。親子ふたりが、土手沿いを歩きながら、帰るときに、鈴子が「お父さん、よく行くの?」「なわけ無いだろ」「そうだよね」」と久しぶりにお父さんという言葉を発して、宮田も嬉しくなる。
「お父さんらしい事を言っていいか」「うん」「あの仕事やめなさい」。
鈴子は、ダメおやじと思っていたが、まともに父親らしいことを言われ、嬉しくなり「うん(辞める)」というのだった。シズオも、仕事の面で本気モードとなっていく。
タイトルは「本気出してないだけ」と気負っているが、本気出して、これからどうなっかまでは描かれていない。ただ、父親が、シズオのようになったら嫌だという子供には、反面教師の役目も果たしていた。