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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「警察日記」(1955):森繁久彌ほか名優共演。

 
警察日記」(1955)を見た。モノクロ、スタンダード作品。
ちょうど60年前の1955年(昭和30年)2月公開日活映画。名作は色あせずか。
 
映画の冒頭で、♪会津磐梯山(あいずばんだいさん)は~宝の山よ♪という有名な歌が流れるように、福島県会津磐梯山麓(ふもと)の小さな町(劇中では横宮町という架空の土地。現在の猪苗代町大字川桁周辺)を舞台に、警察官とその町に暮らす人々のエピソードが人情味豊かに描かれている。第29回「キネマ旬報ベスト・テン」では第6位。
 
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東北地方の田舎町の警察署。
署には頑固な石割署長(三島雅夫)、金子主任(織田政雄)、赤沼主任(十朱久雄)、人情家の吉井巡査(森繁久彌)、純情な花川巡査(三國連太郎)、剣道自慢の署長の相手役・藪田巡査、倉持巡査等がいる。


刑事部屋は毎日様々の人で大にぎわいで、今も窃盗容疑の桃代(小田切みき)、神社荒しの容疑者でお人好の岩太(伊藤雄之助)が取調べを受けている。
 
駅前では戦争で5人の子供達を失くしてから頭がおかしくなってしまった元・小学校校長の村田老人(東野英治郎)は、「空中警報、解除!」などと言って、交通整理を行っている。


ある日、吉井巡査は6歳くらいのユキコ(二木てるみ、子役)と赤ん坊の弟の捨子を発見した。
 
預ける所もないので、赤ん坊は料亭の内儀ヒデ(沢村貞子)が、ユキコは自分が一時的に引きとった。しかし、ユキコは、家を出て、赤ん坊を探し歩き、赤ん坊がいる料亭にたどり着くのだった。
 
花川巡査(三國連太郎)は、もぐり周旋屋・杉田モヨ(杉村春子)に身売りされかけた二田アヤ(岩崎加根子)を保護したがアヤはお金のためにまた町を抜け出そうとしたので、彼は給料をさいてお金をやった。
 
杉田モヨは人身売買(”奉公”と称していた)の件で検挙されたが平然としていた。セイ(千石規子)と息子の竹雄が万引で捕って来たが彼女は亭主に逃げられたのだった。
 
丸尾通産大臣稲葉義男が帰郷し、町長や署長等役人は大騒だった。交通安全週間中だというのに大臣一行の傍若無人な振舞に町の人々は唖然とした。
 
その夜、ユキコの母親・シズ(坪内美子)が二人を引き取りに署へ来たが子供達が幸せと知ると安心し、子供の顔を一目見て東京へ去って行った。セイと竹雄が無銭飲食で挙げられ、セイの夫・重四郎も取調べをうけていたが、金子主任にさとされ一緒に帰って行った。
 
花川巡査はアヤから手紙を受け取ったが、中には彼に返すためのお金と真赤な紅葉が入っていた(MovieWalkerより)。
 
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主演は森繁久彌で、前年に「次郎長三国志」シリーズ7作品(東宝)が終了したあとの作品であり、この「警察日記」の翌年(1956年)から東宝「社長シリーズ」(全33作品)が1970年まで続いた。
 
森繁は、昭和の国民的俳優として2009年に96歳で亡くなるまで出演映画本数は、250本を超える一方で、舞台のミュージカル「屋根の上のバイオリン弾き」で主演し、上演回数900回・観客動員約165万人の記録を打ちたてた。「知床旅情」の作詞・作曲者でもあり、歌手として紅白歌合戦に7年連続で出場。
 
 
1991年(平成3年)に大衆芸能分野で初の文化勲章を受章。ほかの栄典・称号に紫綬褒章文化功労者、名誉都民、国民栄誉賞従三位など。
 
名優の一人三國連太郎は、当時、映画デビュー3年で、31歳と若い。
とぼけた味わいの左卜全を始め、後の黄門様・東野英治郎、名女優と言われた杉村春子沢村貞子、この作品が映画デビュー作となった宍戸錠などが出演している。
 
この映画の名シーンは、自分が置き去りにした子供が楽しそうにしている姿を、遠くから見るシーンだろう。
 
子供を置き去りにしたものの、経済苦から育てられないので、もう一度引き取って、一家心中をしようとしたシズだったが、吉井巡査から「子供たちを見たいだろう。ジープに乗って見るといい。」と言われるのだった。
 
料亭の家族・従業員たちによって育てられ、元気に暮らしている子供を、吉井巡査が、抱き抱えて料亭の外に連れ出す。あらかじめジープの運転を頼んでいた若い巡査が、シズを乗せて、料亭の前を、往復する。


ジープのなかで、ハンカチで顔を覆い、涙ぐむ・シズの目に、ユキコの顔が映る。
 
シズに気づいたような視線を投げかけるユキコだったが・・・(写真)。
                            
人身売買事件をめぐっての、行政の縦割りの弊害というと大げさだが、容疑者の身柄を拘束した警察、職業安定所(安定法違反)、労働基準監督局のそれぞれが、自分たちの言い分で、担当する権利を主張するのだ。
 
それにしても「奉公」の名のもとに、貧しい家の娘たちを事実上の人身売買で、違法に稼いでいた業者がいたようだ。元締めの主犯格は、1人につき、5,000円、その斡旋人は、3,000円で、斡旋人によれば、これまでに21人を斡旋した、という言葉も出ていた。当時、3,000円といえば、現在に換算すれば、ざっと30万円というところか。戦後10年も経っていない時代で、闇のビジネスというのが蔓延(はびこ)っていたようだ。
 
”おらが村の”大臣が地元にくるというので、迎える村民が、総出で出迎え、”大臣様のお通りだ~♪”と(国松さまのお通りだい?のように←意味のわからない人は、太字部分をハイライトしてGoogleでご確認を。)大宴会を催し、歓迎するというシーンも、今では考えられない。
 
平成で、天才子役といえば、芦田愛菜がいるが、おそらく天才子役の先駆けとなったのは、二木てるみではないか。美空ひばりは、天才少女歌手だったが。
 
二木てるみは、3歳で黒澤明の「七人の侍」でデビュー。1955年の久松静児監督の「警察日記」で主人公に引き取られる捨て子を演じ、それ以来、天才子役として数多くの映画やドラマに出演。特に、1965年の「赤ひげ」(黒澤明監督)出演により、ブルーリボン賞助演女優賞を当時の史上最年少である16歳で受賞した。
 
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「刑事・ポリス映画」投票で、複数の人が「警察日記」に投票していたこと、森繁久彌の「社長シリーズ」を10作品くらい見ている中で、森繁の主要作品の1本として気になっていたので、見ることにしたのだった。

出演者:
吉井巡査:森繁久彌
花川巡査:三國連太郎
村田老人:東野英治郎
藪田巡査:宍戸錠
労働基準署員・紅林:多々良純
倉持巡査:殿山泰司
石割署長:三島雅夫
杉田モヨ:杉村春子
水亭の内儀・ヒデ:沢村貞子
二田アヤ:岩崎加根子
セイ:千石規子
ユキ子の母・シズ:坪内美子
赤沼主任:十朱久雄
緑川大三郎:富田仲次郎
金子主任:織田政雄
丸尾通産大臣稲葉義男
金次:三島謙
飯岡熊太郎:左卜全
孤児収容所主事:加原武門
労働基準署員・黒川:高品格
助役:山田禅二
岩太の父親・千代松:片桐常雄
職業安定所所長・松木福原秀雄
掬水亭・マツ:三好久子
バー八千代の女将:田中筆子
伊藤巡査:深江和久
ユキ子:二木てるみ劇団若草
セイの子・竹雄:香川良久劇団若草
 
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