「任侠ヘルパー」(2012)を見た。
先日見た同じ主演の草なぎ剛の映画「ホテル・ビーナス」と比べると、月とすっぽん、「任侠ヘルパー」の方が面白い。2009年7月期に、ドラマが放送されていたが、全く見ていなかった。どちらの映画にも脇役として出演している香川照之は、こちらでは、弁護士資格を持つ地方議員で、環境と老人施設の充実などを目指す珍しくまともな役だった。
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高齢者を狙った違法な”貧困ビジネス”によって利益を上げているヤクザ社会と、虐げられてきた高齢者たちに生きがいと再生の道を与える元ヤクザの姿を描いている。
指定暴力団「隼会」を抜け、堅気となった元極道者・翼彦一(草なぎ剛)はコンビニで働きながら細々と暮らしていた。ある日、金に困って強盗に入ってきた元極道の老人・蔦井雄三(堺正章)を見逃したことから刑務所送りになった彼は、獄中で蔦井と再会。
元極道であることの生きづらさを感じていた彦一は、出所後、その老人のツテを頼って「極鵬会」組長・朝比奈道俊(宇崎竜童)を訪ね、そこで再び裏の仕事に手を染め始める。
なんの設備もなく、悪臭漂う最悪の環境の中で生活する老人たちを見ながら、最初は淡々と仕事をこなしていた彦一だったが、次第に老人を食い物にする状況に苛立ちが募るようになっていく。
そして遂に彦一は「うみねこの家」の立て直しを決意。だが、貧困ビジネスを目の敵にする市議会議員・八代照生(香川照之)と、老人を金づるとしか思わず、施設の改善など意に介さない極鵬会が彦一の前に立ちはだかるのだった・・・(MovieWalker)。
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弱者につけこんだビジネスである貧困ビジネスというのが一時話題になったことがあるが、これは、老人相手のヤミ金から始まり、自己破産させて、自分たちの劣悪な施設とも呼べない掃き溜めのような場所に入れてしまい、生活保護のお金や、年金などを横取りするというものである。
当初は、廃人のようになった老人が半畳程の狭いスペースで、寝起きしていたのだが、”任侠ヘルパー”として翼彦一(草なぎ剛)がやってきて、建物の改造をし、老人たちに、掃除をさせたり、軽作業をさせることで、生きる希望を与えていく。
翼彦一を見た老女は「市川雷蔵に似ているね」というと、翼は「よく言われるよ。市川雷蔵って誰? テレビに出ている人?」と当人は知らないのがおかしい。中には、ミシンを使うものもいた。管理人(リリィ)によると、「おばあちゃんといっても、元はみんな主婦だったんだ」。認知症になっても、手作業などを体で覚えているというものもいた。ある老人(品川徹)などは、若いキャバクラ嬢から教えられた「ピンクレディ」の歌の振り付けを覚えようとしていた。
「うみねこの家」の雰囲気が今までの掃き溜めから、明るい社交場のような雰囲気に変わり、この楽しそうな様子を見た近所の主婦たちは、「昼間、おじいちゃんを預かってくれると助かる」などと、ディサービスのような依頼をしてきた。
高齢者が求めているのは、贅沢な施設でもない。人との交流であり、他人から認められることだ、といった言葉が聞かれた。
草なぎ剛の刺青を見て、亡くなった元ヤクザの夫と勘違いする年寄りもいた。
草なぎのヤクザっぷりも、”平成の高倉健”というと持ち上げすぎだが、かなりハマっていた。草なぎは、昨年はドラマ「銭の戦争」で、お金に執着する闇金融のヤクザ稼業の人間を演じていたが、予想以上に見ごたえはあった。
「任侠」と「ヘルパー」という組み合わせは一見荒唐無稽だが、超高齢化社会で、老人ホームなどは、空きがない状況という。そこで、議員(香川照之)が、施設の拡充などを訴えるのだが・・・。この議員と真っ向から対立するヤクザ組織との関わりなども描かれていた。
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