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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「日の名残り」(1993)

 
ほとんど予備知識もなしに「日の名残り」(原題:Remains of the Day,1993)を見た。
 
この映画を見るきっかけになったのは、guchさんが熱心に勧めてくれた映画「大統領の執事の涙」(2014)を見たところ、それなら次はバトラー(執事)の神様とも言うべき映画「日の名残り」だと10回くらい勧められていたからだった。
 
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日の名残り」を見てしまうと「大統領の執事の涙」が遠くに霞むほどの、なかなか深い、にじみ出るような人間ドラマとして面白かった。
 
この映画の素晴らしさを一言では言えないが、仕える人(主人)に対して、プロ意識で忠実に仕事をこなすことで、仮に意見を求められても、決して自分の意見を主張しないことだった。
 
この映画は、執事の物語であると同時に、秘めたラブストーリーと言えるかもしれない。ブログの「名作に進路を取れ」というサブタイトルに相応しい?名作だった。
 
重要な招待客が、執事に対して、長年勤めているということで、世界の経済情勢、政治、ロシア問題など忌憚のない考えを言ってくれと求められたが、何度聞かれても「申し訳ありませんが、お役に立てません」だった。
 
客の中にもさまざまな政治的なスタンス、意見の持ち主がおり、執事の立場をわきまえた回答だった。後から分かるが、わざと固い質問をして、執事の忠誠心、中立性を試すものだったのだ。
 
また、執事という職業柄、使用人として面接した際にも、女性に対しては、念のためとして、執事間のロマンスなどを求めることは厳禁であると伝えた。実際に過去にそういった問題(駆け落ち事件)を起こした使用人もいたという。
 
 
 
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1958年。オックスフォードのダーリントン・ホール(写真↑)は、前の持ち主のダーリントン卿(ジェームズ・フォックス)が亡くなり、アメリカ人の富豪ルイス(クリストファー・リーヴ)の手に渡っていた。
 
1930年代には政府要人や外交使節で賑わった屋敷は使用人もほとんど去り、老執事スティーヴンス(アンソニー・ホプキンス)の手に余った。そんな折、以前屋敷で働いていたミス・ケントン(エマ・トンプソン)から手紙をもらったスティーヴンスは彼女の元を訪ねることにする。
 
離婚をほのめかす手紙に、有能なスタッフを迎えることができるかもと期待し、それ以上にある思いを募らせる彼は、過去を回想する。1938年、スティーヴンスは勝気で率直なミス・ケントンをホールの女中頭として、彼の父親でベテランのウィリアム(スティーブンス・シニア)(ピーター・ヴォーン)を執事として雇う。
 
ティーヴンスはケントンに、父には学ぶべき点が多いと言うが老齢のウィリアムはミスを重ねる。ダーリントン卿は、第二次大戦後のドイツ復興の援助に力を注ぎ、非公式の国際会議をホールで行う準備をしていた。
 
会議で卿がドイツ支持のスピーチを続けている中、病に倒れたウィリアムが亡くなる。1936年、卿は急速に反ユダヤ主義に傾き、ユダヤ人の女中二人たちを解雇する。
 
当惑しながらも主人への忠誠心から従うスティーヴンスに対して、ケントンは卿に激しく抗議した。2年後、ユダヤ人を解雇したことを後悔した卿は、彼女たちを捜すようスティーヴンスに頼み、彼は喜び勇んでこのことをケントンに告げる。
 
彼女は彼が心を傷めていたことを初めて知り、彼に親しみを感じる。ケントンはスティーヴンスへの思いを密かに募らせるが、彼は気づく素振りさえ見せず、あくまで執事として接していた。
 
そんな折、屋敷で働くベン(ティム・ピゴット・スミス)からプロポーズされた彼女は心を乱す。最後の期待をかけ、スティーヴンスに結婚を決めたことを明かすが、彼は儀礼的に祝福を述べるだけだった。
 
20年ぶりに再会したケントンとスティーブンスの2人。
孫が生まれるため仕事は手伝えないと言うケントンの手を固く握りしめたスティーヴンスは、彼女を見送ると、再びホールの仕事に戻った。
 
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ナチスのシンパと言われたダーリントン卿に仕えていたというだけで、ダーリントン卿の考え方を支持したのかと後に聞かれることがあったスティーブンスは、「意見が合う、合わないは関係ありません」だった。
 
主人公のスティーブンスを演じたアンソニー・ホプキンスがすばらしい。
ミス・ケントン(エマ・トンプソン)に対して、心の片隅に特別な感情があったことは明らかだが、最後まで、ケントンは優秀な執事だと認める以外には、個人的な感情を示すことはなかった。
 
ダーリントン卿役のジェームズ・フォックスは、「ジャッカルの日」のジャッカルを演じたエドワード・フォックスの弟で、最初に見た時に間違えるくらいに似ていた。
 
ダーリントン卿が名付け親の若い記者・カーディナルはヒュー・グラントダーリントン卿が亡くなったあと、その邸宅を競売で購入したルイスは、”スーパーマン”を演じたクリストファー・リーブだ。
 
ミス・ケイトン(エマ・トンプソン)もまた、すばらしかった。
あるとき、スティーブンスが本を読んでいたので、ケイトンは、何を読んでいるのかと尋ねた。スティーブンスは、「本を読んでいる」というだけで、頑なに本を見せようとしない。「ワイセツな本か」とさらに詰め寄る。「そんな本が、この家にあるはずがないだろう」とうので、近づいて本を奪い取ると・・・。恋愛本だった。この時のスティーブンスの言い訳がおもしろい。「どんな本でも読むのです。言葉(英語)を学ぶために。プライベートの時間なので、一人にさせてくれ」だった。
 
ティーブンスは、仕事に対しては厳格で、テーブルの食器の位置なども、若い執事に、その位置などをメジャーで測りながら、チェックしていた。執事に必要なことは何かと聞かれた時には「品格(Dignity)」だと答えていた。
 
ミス・ケイトンが、「結婚するので、仕事を辞める」と伝えると、スティーブンスの言葉は「おめでとう」と一言いうだけだった。
 
ミス・ケイトンは「長年、一緒に仕事をしてきて、たったそれだけ」と訴えるように言うのだが「忙しいので」とスティーブンスは立ち去ってしまう。これは、ミス・ケイトンの最後の賭けだった。「行くな」と引き止めてくれるかどうかの。
 
あとから、スティーブンスは地下のワインセラーから「年代物ワイン」のボトルを持って、ミス・ケイトンの部屋を訪ねた。案の定、ケイトンは泣き崩れていたが、スティーブンスの言葉は、「執事の小部屋が散らかっている。それを言い忘れたので」だった。
 
 
20年ぶりに再会したスティーブンスとケイトン
 
仕事一筋と決め、恋だの愛だのは捨てストイックに生きる男スティーブンスと、スティーブンスに想いを寄せるも、別の男と結婚し、離婚寸前のケイトンは20年ぶりに再会を果たすが・・・。
 
アカデミー賞では、主演男優賞主演女優賞美術賞衣装デザイン賞監督賞作曲賞作品賞脚本賞8部門にノミネートされた。
 
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