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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「肉体の門」(1964):鈴木清順監督。

 
鈴木清順監督の「肉体の門」(1964)を見た。
原作は、田村泰次郎が1947年に発表した小説だが、これを原作とした映画は、第一回作品(1948年、マキノ雅弘監督)を含めて計4本(1964年、1977年、1988年)がある。このほか、田村泰次郎の「肉体の門」及び「埴輪の女」の両作を原作とした「女体」(1966)と、テレビドラマ版(2008)などがある。
 
原作は、戦後日本初のベストセラー小説でもあり「肉体の解放こそ人間の解放である」をテーマに自由な性表現などで話題となった。何度も映画化されるところを見ると、戦後の一時代を生きた女たちのたくましさに魅力があるからだろう。
 
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映画の冒頭、イラストで女たちの裸の姿の死体の山が映し出される。まさに、阿鼻叫喚の地獄絵図のよう。そこに、真っ赤な色のタイトル文字「肉体の門が映し出される。背景に、終戦後流行った歌「星の流れに」が流れる。♪星の流れに 身を占って 何処(どこ)をねぐらの今日の宿~ ~こんな女に誰がした♪
 
 
ナレーションが入る:
戦争が終わったとき、東京はケモノの街になりました。生きるか死ぬかの・・・。」
 
敗戦に虚脱し、疲れきった男たち。焦土と化し、貧民窟のような戦後の闇マーケット。戦争の帰還兵や、仕事にあぶれた男たち、MPなどの米国駐留軍の間に、けばけばしく、毒々しい悪夢の花を咲かせる女たちがいた。
 
17歳のマヤ(野川由美子)が、関東小政のおせん(河西都子のグループに仲間入りしたのも、たった一人の兄をボルネオで亡くし、外国兵に肌を奪われてからだ。
 
焼ビルの地下には、ジープのお美乃(松尾嘉代)、ふうてんお六(石井富子、町子(富永美沙子と、皆暗い過去を背負った女たちがたむろしていた。今日も闇市では、仲間の掟を破った夜の女が、激しいリンチをうけていた。掟というのは、よその女に縄張りを荒させない、ただで男と寝ないという規則だった。
 
一方、関東小政の刺青をもつ、おせんは、進駐軍の兵隊を半殺しにした復員姿の伊吹新太郎(宍戸錠)を助けた。
 
すさんだ生活をしていても、小政たちもやはり女だった。たくましい男を見て、彼女らの中に愛に似た感情が湧いて来たのだ。そんな時、町子が小笠原(江角英明というなじみの客と、結婚を約束して代償なしに身体を与えていることがバレてしまった。
 
怒り狂った小政、マヤらは、地下室に町子を宙吊りにすると、リンチを加えた。
途中、新太郎にさえぎられたものの、すさまじいリンチは、マヤの身体に忘れていた女の感情をよみがえらせていった。そして新太郎に強烈にひきつけられていくのだが・・・。
 
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鈴木清順監督の映画は、二番館の2本立てで「けんかえれじい」(1966、高橋英樹主演)を1969年当時に見たほかは、チャンツィイー、オダギリジョー主演のオペレッタ狸御殿」(2005)を見たくらいだった。キネマ旬報第1位の「ツィゴイネルワイゼン」が未見なのが悔やまれる(鑑賞済み)。
 
肉体の門」は、昭和20年代終戦直後の東京の有楽町から勝鬨橋(かちどきばし)あたりに多かったという、進駐軍の兵隊を相手にしたパンパン(生きるため肉体を切り売りする売春婦)を扱っている。
 
この当時は、パンパンを主題とした文学や映画、演劇、流行歌はこの時代の息吹と連動して集中的に登場したという。「肉体の門」の冒頭に流れる歌が「星の流れに」だったのは、この歌以外ではありえなかった必然性があったからとみられる。
 
この映画では、画面に、二重写しのシーンが多く登場するが、最初はやや違和感があったが、ひとつの映画手法かと思う。
 
人妻の町子(富永美沙子)のリンチシーンにかぶるマヤの顔のアップなどは、リンチシーンでムチで打たれることにマヤ自身が疑似体験をしている様子をうかがわせるような効果なのか、違和感のない二重写しとなっている。
 
伊吹(宍戸錠)が、牛を一頭、盗んできて、牛の頭をハンマーで叩いて、牛の胴体を切り裂くシーンは、目を覆いたくなるが、牛肉は、当時切り売りで40円だったという。パンパンの女が、「40円で体を売って、40円で牛肉を買う。食うために売るのか売るために食うのか」という言葉も印象的だ。
 
伊吹は「色気と食い気のために生きているんだ」と女たちに語っていたが、進駐軍の兵士を刺したことで、MPから追われて、銃で撃たれて命を落とす。伊吹とともに、現状を抜け出そうとしたマヤだったが、伊吹が橋の下で撃たれたあとの血だらけの衣服が残っていたのを見てマヤは、呆然とするばかりだった。
 
リンゴの唄」「東京ラプソディ」などの曲も、当時の流行歌として流れていた。
 
 
野川由美子はこの映画で鮮烈なデビューを飾った。
野川由美子をはじめ、河西都子、石井富子、松尾嘉代、富永美沙子などの女優陣は、チャキチャキ、バリバリの演技で、自然体で驚くばかり。
 
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