この映画は、登場人物は2人しか出てこない低予算映画だが、駆け引きがゲーム感覚で進み、スリリングでサスペンスに満ちている。そして、男にとっては、これほど痛くて、怖い話はない。
ストーリーは、32歳の少女趣味があるらしい売れっ子写真家の独身男が、14歳の少女と出会い系サイトで知り合って、少女に男の○○を切り取られる話だからだ。しかしそこまでには、男の正体や隠された秘密が暴き出されていく。エレン・ペイジがとにかくすごい。
・・・
好奇心旺盛な14歳の少女ヘイリー(エレン・ペイジ)は、出会い系サイトのチャットで32歳の売れっ子ファッション・フォトグラファー、ジェフ(パトリック・ウィルソン)と親しくなる。3週間のやりとりの後、実際に会う約束をする。
「無邪気な子供だ」と思ったのが大誤算になるとは知らずに・・・。
カフェで待ち合わせ、ヘイリーに一目で惹きつけられたジェフは、彼女を自宅に誘いこむ。ジェフは口八丁で、いつもこんな手順で、少女たちと自宅で淫らな行為に及んでいたのだった。
無邪気に付いてきたヘイリーの写真を撮りまくるジェフ。
ヘイリーに危険が迫っているかに見えたが、しかし事態は逆転する。ヘイリーはカクテルを作ってジェフに飲ませ、まもなく彼は倒れこんでしまった。
「なんで俺がこんな目に」
ジェフが気づいた時には、キッチン台に体を縛り付けられていた。
そしてヘイリーは、父親のものだという医学書を片手に、ジェフの性器を切り取ろうとするのだ。
ヘイリーは、ジェフが多くの少女たちに犯した罪の代理復讐のため、危険なゲームを仕掛けたのだった。ジェフの去勢手術を容赦なく進めていくヘイリー。
「ひとつ取る、それとも安定のために2つにする?」
手術が終了したあと、ジェフは何とか逃げ出そうとするが、ヘイリーの方が上手でまた気を失わされてしまう。再び彼が目を覚ますと、部屋にヘイリーの姿はなかった。
ヘイリーの正体を確かめようとしたジェフは、屋上にいるヘイリーを見つけ、「お前は誰なんだ?」と怒り狂いながら問いただす。するとヘイリーは「あなたが欲情したすべての少女よ」と答えた。
そしてヘイリーは、ジェフが愛するシャネルという女性に連絡し、この家に向かうよう仕向けたと告げる。自分が少女たちにしてきたことを、シャネルに知られるのを恐れてうろたえるジェフ。
そんな彼の首に、ヘイリーは優しく縄をかける。そして屋上の縁に向かってゆっくり歩き始めたジェフは、そのまま飛び降りて自殺するのだった。
・・・
ジェフが普通のカメラマンで、人が良さそうに登場するが、最後にはその本性がみえてくる凄まじさ。モデルで失踪扱いとされていたドナという少女は、既に殺されており、ドナの写真がジェフの金庫に隠されていた。なぜ? 別の男がドナを殺害し、それを見ていただけだと主張するジェフだが・・・。
緊迫感のある駆け引き。
はじめから最後まで、言葉のやり取りの緊迫感があった。
14歳の異常性格者を演じたことで、公開された2006年には「今年最も複雑な、不穏な、忘れられない演技の一つ」と賞賛された。
ヘイリーは、男性器の去勢手術は「クッキーを売るより簡単。ガールスカウトにも教えたらいい」と平然と言い放つ。ジェフは、死ぬ間際に何というかと聞かれ「ガキにタマを抜かれている」だった。「(淫行疑惑で逮捕された)ロマン・ポランスキーだってオスカーを受賞した」とヘイリー。ヘイリーの一連の事件は「ジョディ・フォスターが映画化してくれる」(ヘイリー)と言ったセリフも飛び出していた。
・・・
アメリカの郊外の住宅は、点在しており、ひとつの家の中で事件があって大声で助けを求めても、気がつかれるのはまれ。ヘイリーが、たまたま物を捨てに表に出たところを3軒隣のトクダ夫人(サンドラ・オー)に見られていたことなどで、夫人が訪ねてくるというサスペンスも・・・。サンドラ・オーはよく見る顔だが、東洋系の顔だがカナダ人で「サイドウエイ」などに出演している。
予算をかけなくても面白い映画ができる見本のような映画だった。
ヘイリー役のエレン・ペイジの大人びた発言と、相手の考えを読み取る力、狂気の演技などには圧倒される。
チャットでの会話で「KIDDING!」(なんちゃって)や、最後に男を首吊り自殺させていうせりふ・・・「なんてね」の衝撃。
この映画は、第38回(2005年)シッチェス・カタロニア国際映画祭グランプリ受賞、サンダンス映画祭上映作品。赤ずきんをモチーフとした作品で、日本の女子高生によるオヤジ狩りのニュースに着想を得て製作された作品という。変なニュースが海外に広がり、それも怖い。
☆☆☆
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
「にほん映画村」に参加しています:ついでにクリック・ポン♪。