アルフレッド・ヒッチコック監督の作品のなかで、比較的評価の高い(英国の調査で1位というのもある)「めまい」(原題:Vertigo、1958)を見た。テレビで、一部だけ見た記憶はあるが、全て通してははじめて。”狐”につままれたような、けむにまかれたような映画だった。
ヒッチコック映画の導入部は、いつものように緊張感が漂い引き込まれる。パラマウントの山の真ん中に、まず「V」の大文字が出てきて、何かなと思ったら、VISTAVISIONの中央のVの文字だった。そして唇の大きなアップ、続いて目のアップ。
同時に不安を煽るような、サスペンスフルな音楽はバーナード・ハーマンの音楽で、全編に流れていた。大きな瞳の中から、小さい文字が浮き出してくる。Vertigoのタイトルだ。そして、渦巻きがくるくると・・・。
解説にはこうある。
「過去のトラウマから高所恐怖症になってしまった元刑事が、ある人妻の身辺調査を続けるうちに彼女の奇異な行動に翻弄(ほんろう)されていくさまを描き出す。
ということだが、あまりピンと来なかったというのが正直な感想。
・・・
元刑事のジョン・ファーガスン(ジェームズ・スチュアート)が、主人公にしては、悪意はないようだが、かなり強引な性格。屋上で犯人追跡中に同僚を墜死させたことから、高所恐怖症にかかって今は退職していた。
あるとき、昔からの知り合いの男から「(妻が)何か過去の亡霊で苦しんでいるようだから探ってくれ」とその妻の尾行を頼まれるのだが、行き先のホテルやら、教会やらにズケズケと入ってしまう無遠慮さ。
ましてや、友人の妻のマデリン(キム・ノヴァク)が、美人だからといって、恋におちた・・・というのでは。
似ているからといって、強引に食事に誘い、送り返すと、「また明日の朝会ってくれ。出来るだけ一緒にいたい」って、相手が「仕事がある」とい言えば「理由をつけて休めばいい」って、退職したおっさんは暇だろうが、いくらなんでも強引(笑)。
ラストシーンも理解に苦しむ。
ジョンを愛するジュデイは、彼への愛を口走りながら、恐怖のために塔から足をふみ外して墜死してしまう。そこにタイミングよく修道女が現れて、って。
キム・ノヴァクも、メイクがキツく(眉を、へのへのもへじのように描いているが)魅力を感じない。ヒッチコックは、別の女優の都合が付かず、代打でキム・ノヴァクを起用したようだが、キムが撮影方法で意見をしたことで、ヒッチコックは、ノヴァクが気に食わなかったようだ・・・という記述もあった。
ジョンには絵を描いている女友達がいて、出入りしているが、このふたりの関係も曖昧。女性の方はジョンに気があるようだ(かつてのジョンの婚約者だったようだ)。
高所恐怖症になった原因
高所恐怖症の主人公・ジョンが高いところから下を見るシーンで、カメラがズームになったり引いたり、というシーンは、めまいを感じさせた。
「鳥」「サイコ」「北北西に進路を取れ!」「ダイヤルMを廻せ!」などと比べて、どうもしっくりこなかったのは、複雑怪奇な話を織り交ぜた過去の亡霊に苦しむというストーリーのせいか。ついて行けずに”めまい”を感じたfpdのせいか。
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