fpdの映画スクラップ貼

「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

<span itemprop="headline">映画「醜聞(スキャンダル)」(1950)</span>


 
黒澤明監督作品として未見作品だった「醜聞(スキャンダル)」(1950)を見た。
昨年亡くなった山口淑子李香蘭)の出演作品でもあり、追悼となった。
 
三船敏郎が、まだ若く、のちの作品のような豪快な面はなく、バイクが趣味で、”絵かき”で、自分のことを、”ぼく”というのが最初は抵抗があったが、役柄としては、スキャンダルに巻き込まれながらも、裁判で戦う青年を演じ、ピアノを弾いたり、歌ったりする、珍しい側面もみせている。
 
・・・
バイクがトレードマークの画家、青江一郎(三船敏郎)は、絵を描きに行った山で有名な声楽家、西條美也子(山口淑子)とたまたま出会う。バスがなかったので、宿泊先まで西條をバイクで送る。
 
旅館で一緒にいるところを雑誌社「アムール」のカメラマンに撮られ、嘘の熱愛記事を書かれてしまう。雑誌は、この写真を元に記事をでっち上げて、「恋はオートバイに乗って」という見出しで、雑誌を大々的に宣伝し、増刷して売り込む。
 
これに憤慨した青江は、アムール社に「責任者は?」と言って乗り込み、編集長・堀(小沢栄太郎)が、「どうぞよろしく」と挨拶をするまもなく、堀を殴り倒したことで、更に騒ぎが大きくなる。「ゲンコツだけが暴力ではない。活字も暴力だ」と青江。
 
そんな折、青江のもとに蛭田(ひるた、志村喬)と名乗る弁護士が現れた。風采の上がらない初老の男だが「無報酬でも良いから、ぜひ」という蛭田を青江は信用し、弁護を依頼することになる。
 
しかし、この蛭田は、被告の堀にも話を持ちかけるという悪徳弁護士ぶり。
堀と蛭田は、競輪に一緒に出かけ、蛭田が無一文になると、堀が競輪資金を渡す有様。
 
蛭田の自宅には、妻の他に、病に冒されて、5年も寝たきりの娘・正子(桂木洋子)がいた。蛭田自身は、純粋な娘を見るたびに、自分の不甲斐なさや、悪事に染っていく自分に嫌気がさしていた。
 

 
蛭田が青江のスキャンダルの一件に目をつけたのは、「幸福な人を不幸にすることはおもしろいらしい」という風潮に反発したからだが、娘は父親の考えが手に取るようにわかってしまう。
 
蛭田は、娘や妻の前でつぶやく。「人間はね、誰かに胸の内をぶちまけないとね。父さんは、喋らないとダメなんだ。今まで人に騙されてきた。人に騙されないために、人を騙すことを覚えてしまった」という自分勝手な理屈を並べる。
 
「堀なにがしという男は、悪党だ。天才的で下劣な悪党だ。父さんは負けたんだ」という。
 
・・・
黒澤明監督は、この映画の製作について、つねづね、ジャーナリズムの強引な取材を不愉快に思っていたといい、ある日、電車の中吊り広告のセンセーショナルな見出しをヒントにしたという。
 
この作品の実質的な主人公を演じた志村喬は、これまで自身で演じた役の中で一番好きなものに、蛭田乙吉を挙げている。
 
この映画では、クリスマスの時期が背景になっており「蛍の光」の曲が何回も流れる。青江が酔っ払っている蛭田に向かっていう。「人生は、涙っぽいな。お前みたいなどうしようもない人間にも、正子のようなお月様のような娘がいる。お前だって、お月様かも知れない」。
 
・・・
スキャンダル裁判の結果は、原告側の勝利に終わる。
蛭田弁護人が、被告側から、口止め料として10万円の小切手を受け取っていた事を、証拠として提出したからだった。
 
青江は、裁判の勝利についての感想を記者から求められる。
青江の言葉は「星が生まれたこと(蛭田が正しさに目覚めたこと)から比べたら、裁判の勝利なんてケチくさくて問題にならん!」だった。
 
パパラッチと言った言葉は当時はなかったが、昔も今も、週刊誌などは、スキャンダルや有名人の私生活の暴露などスクープ合戦を続けていることを思えば、60年以上も前にワイドショー的な報道のあり方を予見していたような映画でもある。
 

主な出演者:
三船敏郎(青江一郎)
山口淑子(西条美也子)
桂木洋子(蛭田正子)
千石規子(すみえ)
小沢栄太郎(堀)    バイクシーンは「ローマの休日」の3年前
志村喬(蛭田乙吉)
日守新一(朝井)                             
三井弘次(カメラマンA)
大杉陽一(カメラマンB)
清水一郎 (俳優)(荒井)
岡村文子(美也子の母)
清水将夫(裁判長)
北林谷栄(蛭田やす)
青山杉作(片岡博士)
高堂国典(木樵の親父A)
田吉二郎(木樵の親父B)
左卜全(酔っ払いの男)
殿山泰司(青江の友人A)
増田順司(新聞記者)
神田隆(青江の友人B)
千秋実(青江の友人C)
縣秀介(木樵の親父C)
島村俊雄(宿屋の番頭A)
遠山文雄(宿屋の番頭B)
 
スタッフ:
企画:本木荘二郎(映画芸術協会
製作:小出孝
監督:黒澤明映画芸術協会)
撮影:生方敏夫
美術:濱田辰雄
照明:加藤政雄
 
☆☆☆☆
 
 
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

「にほん映画村」に参加しています:
ついでにクリック・ポン♪。