この映画は、タイトルは知っていたが未見だった。
2位は「誰も知らない」で、この1位、2位作品は3位の「ゆれる」以下を大きく引き離している。
「Helpless」「EUREKA ユリイカ」「サッド・ヴァケイション」は、“北九州サーガ”の3部作である。ユリイカ(EUREKA)は、ギリシャ語で「発見」の意。キャッチフレーズは「癒しと再生の一大叙事詩」。DVDで見たが、これは、横長のシネマスコープのようなサイズなので、映画館で見たかったなと思う。
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いまや日本を代表する俳優の役所広司が主演だが、映画出演4作目の若かりし頃の宮崎あおい(撮影時14,5歳)と実兄・宮将(まさる)(同17歳)、名脇役の光石研、でんでん、松重豊、塩見三省、近年人気女優の一人となった尾野真千子も出演している。
映画は、3時間37分の長編。邦画でこれほど長い作品を見たのは「愛のむきだし」(2009)の4時間(237分)くらいか。しかも、3時間半以上も(←ここがポイント!)セピア調のモノクロ映画だった。モノクロ・フィルムで撮影して現像時にカラー・ポジにプリントするクロマティックB&Wという手法を採用。
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脱線するが、EUREKAという言葉を「ユリイカ」とよませるのには、抵抗を感じる。
どう見ても、「ユーレカ」ではないか。”サキイカ”や”イカの塩辛”ではないのだから。(余談だが、ヨーロッパの最先端技術プロジェクトでEUREKA(ユーレカ)プロジェクトというのがかつてあったので、その読みに慣れている。)
それはさておき、この映画は、かなり斬新で、ユニーク。
バスのハイジャックにあい、数名が命を落とすが、生き残ったバス運転手と、乗り合わせていたきょうだい(兄妹)のショックから受けた深い心の傷からの再生の話が中心となる。
この4人のうち、秋彦は、無遠慮な人間で、映画の中では”狂言回し”的な存在。疑問をずけずけと口にし、いわば観客を代弁しているような行動をとる。ストレートな物言いで、カチンと来ることが多いが、常識的な見方をしている。
4人の行く先々で、女性ばかりを狙った通り魔殺人事件が相次ぐ。
秋彦は、新聞のニュースを見て、沢井に向かって「殺人犯は、あんた(沢井)か直樹以外にはありえない」と断言する。
映画の2時間50分ほどたって、ナイフを持った犯人がついに動いた。
このあたりはかなりサスペンスタッチだった。果たして、犯人は・・・。
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多少ネタバレになるが、この兄妹は、最初から最後まで、一切言葉を発しなかったが、最後に発する。ついに梢が言葉を発したシーンは、驚きと、やや安堵感を感じさせるものだった。映像では、最後の5分間は、相当の驚異と言える。
映画の最初のハイジャックのシーンは、実話に基づくのかわからないが、かなりリアリティがあった。
刑事の松岡(松重豊)が、重要参考人を取り調べるときに、机をコツコツと鉛筆で何度も叩くシーンがあったが、あれは、後のテレビドラマ「半沢直樹」の銀行・次長が、机をバンバンに匹敵するくらいの、耳障りな尋問だった(笑)。
宮崎あおいを初めて映画で見たのは、迷宮入りとなった昭和の最大の事件「3億円強奪事件」の犯人役の女子高生を演じた「初恋」(2006)だったが、その時の目力が印象的だったが、「ユリイカ」でもほとんどセリフはないものの、目の演技が印象的だった。役所広司と宮崎あおいは後に「わが母の記」(2012)で親子の役で共演している。
主な登場人物:
沢井真 - 役所広司
田村梢 - 宮崎あおい
田村直樹 - 宮崎将
秋彦 - 斉藤陽一郎
弓子 - 国生さゆり
シゲオ - 光石研
犯人 - 利重剛
松岡 - 松重豊
沢井義之 - 塩見三省
田村美郷 - 真行寺君枝
吉田 - でんでん
田村弘樹 - 中村有志
沢井美喜子 - 尾野真千子
ヒトシ - 本多哲朗(うたいびとはね)
「21世紀の日本映画ベスト10」(2008年版)は以下のとおり。
①「EUREKA ユリイカ」(2001)
②「誰も知らない」(2004)
③「ゆれる」(2006)
④「下妻物語」(2004)
⑤「それでもボクはやっていない」(2007)
⑥「ハッシュ!」(2002)
⑦「いつか読書する日」(2005)
⑧「パッチギ!」(2005)
⑨「血と骨」(2004)
⑩「フラガール」(2006)
方言〈北九州弁)が聞き取りにくい、わかりにくい、という面があり、日本語の字幕がほしいくらい(笑)。
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