この映画は、ブロードウェイの文字通り、舞台裏を描いて、アカデミー賞では、作品賞、助演男優賞(ジョージ・サンダース)、監督賞(ジョセフ・L・マンキーウィッツ)、脚本賞(ジョセフ・L・マンキーウィッツ)、衣裳デザイン賞(白黒)(イーディス・ヘッド)、録音賞の6部門で受賞。
主演女優・マーゴ役は当初、クローデット・コルベールが演じる予定だったが、怪我のために降板。スーザン・ヘイワードやマレーネ・ディートリッヒ、バーバラ・スタンウィックの名前も挙がったが、脚本を読んで気に入ったベティ・デイヴィスが演じ、デイヴィスの代表作となった。
物語:
アメリカ演劇界最高の栄誉であるセイラ・シドンス賞が、新進女優イヴ・ハリントン(アン・バクスター)に与えられた。満場の拍手のうち、イヴの本当の姿を知る数人だけは、複雑な表情で彼女の受賞を見守るのだった・・・。
田舎から出てきた女優志望のイヴは、ブロードウェイの大女優・マーゴ(ベティ・デイヴィス)の付き人となる。自分の大ファンだというイヴに目をかけるマーゴだったが、イヴは次第に本性を表してゆき、批評家やマーゴの周りにいる人々に取り入ってゆく。
ある日、出るはずの舞台に間に合わなかったマーゴの代役として出演するチャンスをつかみ、イヴは批評家たちから絶賛される。これを皮切りに、劇作家や有名批評家に巧く取り入り、マーゴまでも踏み台にしてスター女優へのし上がっていく・・・。
・・・
「イブの総て」の映画自体が舞台劇を見ているようで、会話の妙、女優・俳優の演技で見せている。タイトルのとおり、イヴがいかにして、主役の座を射止め、のし上がっていくかが描かれている。
授賞式のスピーチにそれがよく現れているが、謙虚なスピーチで、自分に賞をもたらした関係者を持ち上げる、完璧なスピーチだった。
しかし、一旦家に戻ると、やり遂げた満足感があった。化粧台に目を向けると、うしろのソファーに見慣れない若い女がいた。問い詰めると、メイドの目を盗んで部屋に入ったが、眠ってしまったという。
女子高で、クラブの委員長で、イヴ・ハリントンのようになりたいと訪ねてきたという。ブルックリン出身で、女優も、バーバラ・スタンウィック、スーザン・ヘイワードなどもブルックリン出身だとアピール、早くもイヴに取り入ってきた。
たまたま、トロフィーをタクシーに置き忘れたからと届けに来たイヴのプロデューサー的な後見人アディソン・ドゥイット(ジョージ・サンダース、アカデミー賞助演男優賞受賞!)と鉢合わせしたその女性がトロフィーを受け取る。「欲しいかね?」とドゥイットが言うと「世界中の誰よりもほしい」と女優への意欲の強いことを告げる。
すると、ドゥイットは一言、こう言い放つ。
「女優になりたかったら、イヴに聞きなさい。彼女は全てを知っている。」
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なんとも痛烈だが、辛辣でもあるエンディングだ。イヴとドゥイットは、同じ種類の人間で、野心にあふれていて、同じ穴の狢(むじな)という意識があった。フィービーと名乗る女性は、トロフィーを手に持って、イヴの見ていないすきにイヴの衣装を着て、鏡の前に立って、女優になった気分を味わうのだった。
マーゴ(ベティ・デイヴィス)のセリフなども面白い。
「ピース&クワイエット(平和と静けさ)は図書館だけで十分」
カーラジオをつけセンチメンタルな音楽が流れると「安っぽい感傷は嫌いよ」
ピークを経験し落ち目となっていく女優と、新進気鋭の若い女優のポジション争い・・・といった古典的なストーリーだが、見ごたえのある映画である。
これぞ映画:fpdの生涯マイベスト30の1本。
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