2012年の邦画ではキネマ旬報のベスト10(7位)に選ばれながら唯一未見の作品だった「ふがいない僕は空を見た」をみた。
Wowowでも放送があったようだが、深夜の2時過ぎだったようで、それも当然「R15」指定で、いきなりの大胆で過激シーンがある。
しかし、Wowowの解説によれば、各自、深い悩みや行き場のない閉塞感を抱えた複数の男女が、懸命にもがきながら日々を生きていくさまを、気鋭の女性監督タナダユキが痛切なタッチで描き出した秀作群像劇ということになる。
この作品の前の「俺たちに明日はないッス」と同様、お先真っ暗のやりきれない人生を送りながら、それでもなお懸命に日々を生きようとする彼らの姿をタナダ監督が優しく見守り、見応えのあるドラマに仕上げている。
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高校生の斉藤卓巳(永山絢斗)は、助産院を営む母・寿美子(原田美枝子)と二人暮らしの母子家庭のひとり息子。友人に誘われて行ったアニメの同人誌販売イベントで、あんずと名乗るアニメ好きの主婦・岡本里美(田畑智子)にナンパされる。
里美は卓巳を自宅に招き、大好きなアニメキャラクターのコスプレをさせて情事に至る。以降、里美が用意した台本通りにセリフを言いながらコスプレセックスをすることが日常的になっていた。
卓巳の親友・福田良太(窪田正孝)は、団地での極貧の生活に耐えながらコンビニでバイト中。店長の有坂(山本浩司)からは“団地の住民たち”と蔑まれ、共に暮らしている痴呆症の祖母は辺りを徘徊、新しい男と暮らしている母親には消費者金融の督促が後を絶たない。
だがバイト先の先輩で元予備校教師の田岡良文(三浦貴大)が「団地から脱する武器を準備しろ」と勉強を教えてくれるようになる。痴呆が進んだ福田の祖母を父親の病院に入院させる田岡だったが、彼もまた心の闇を抱えていたのだった・・・(MovieWalkerより)。
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一歩間違うとAV映画かと思うようなシーンが多いが、人間の根源的な「生」と「性」などを描き、不妊治療や、とくに出産シーンなどをリアルに描いている。
元病院勤務で、個人の助産婦医院を経営する斉藤寿美子を演じる原田美枝子がうまい。この映画で登場する様々な人物が問題を抱える中で、唯一聖人のような存在だが、助手のみっちゃんと呼ばれる助産婦の女性からは、「案外腹黒い」といわれているのだが「(生きていくための)ビジネスだからね」と本音もチラリ。
しかし、お寺で祈っている光景を見た息子の卓巳が「何をお祈りしているのか」ときくと「子供たちのこと。あなたも含めて、これから生まれてくる子供。亡くなった子供、すべての子供が幸せであるように」だった。
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田畑智子が、体当たり演技で熱演している。
田畑演じる里美の学生時代の過去まで、お金にものを言わせて調査したり、子供が産めないからと「外れクズ」「欠陥品」とののしる姑(銀粉蝶)も強烈だ。
みっちゃんと呼ばれるアシスタントの助産婦を演じる梶原阿貴は、言葉は乱暴だが、気に食わないことには、”ツッ”と舌打ちし、女教師に対しては「オメェ、自分のことがわかっていない。オメェ見たいな教師がいては、日本もおしまいだな」と鉄槌を下すような発言。しかしこれが案外的を得ていたので痛快。
セリフのあちこちに味わいがあり、一見の価値のある映画だった。
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