fpdの映画スクラップ貼

「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

<span itemprop="headline">映画「噂の二人」(1961):オードリー・ヘプバーン、シャーリー・マクレーン主演。</span>


 
ローマの休日」「大いなる西部」などのウィリアム・ワイラー監督で、オードリー・ヘプバーンシャーリー・マクレーンという2大女優が主演の「噂の二人」(原題:The Children's Hour、1961)を見た。
 
明るいロマンスものかといった予想をすると完全に裏切られることになる、ショッキングかつシリアスな社会派ドラマである。

ウィリアム・ワイラー監督が、同じ原作で1936年にすでに「この三人」という映画を撮っており、自身でリメイクした作品であることから見ても、”ある偏見”が色濃かった時代の悲劇が時代を超えて普遍的なテーマになりうるということだったのかもしれない。
 

 
オードリー・ヘプバーンは、同じ年に公開された「ティファニーで朝食を」とは全く別のシリアスな一面をのぞかせていていたほか、シャーリー・マクレーンは、前年の1960年公開の映画「アパートの鍵貸します」で人気女優となっていたが、「噂の二人」では、苦悩する悲劇の女性を見事に演じていた。
 
この映画は、二重、三重に驚かされる。

この映画を見ると、一般的によく言われる「子供は正直だ。無邪気だ」は全く通用しない。一人の悪意を持った子供(少女)の虚言を大人たちが信じ込んでしまったことから起こる悲劇を描いている。
 

しかし、その嘘が「あながちウソでもなかった」という展開となるのだ。
嘘をついた少女というのは、寄宿学校で先生から怒られてばかりいることから、女生徒仲間の弱みに付け込んで、悪意に満ちたデマを流し、それを聞いた親たちが娘たちを寄宿学校から引き上げさせてしまうのだった。
 
このメアリー(カレン・バルキン)という少女の、意地の悪いような目つきがたびたびアップで映し出されるが、それは子供の目というよりは大人の陰険で邪悪な目のようだった。子役とはいえ、演技がすごい。
 
・・・
カレン・ライト(オードリー・ヘップバーン)とマーサ・ドビー(シャーリー・マクレーン)は学生時代からの親友であり、共同で寄宿学校を経営していた。父兄からの信望も厚く、カレンの2年越しの恋人はこの地方の有力者ティルフォード夫人の甥である医者のジョー・カーディン(ジェームズ・ガーナー)だった。
 
しかしカレンが婚約に踏み切った時、なぜかマーサは重い微笑で答えただけだった。ティルフォード夫人の孫娘メアリーは病的なほどのわがまま娘で、学校でのしくじりに家へ逃げ帰り、そのまま学校へ戻りたくないばかりに祖母に訴えた。
 
「カレンとマーサは同性愛だ」と。その噂はたちまち広まり、驚いた父兄たちは子供を引き取ってしまった。カレンとマーサはティルフォード夫人を訪問し名誉棄損で訴えたが潔白を証明することができなかった。
 
婚約者のジョーですら「本当か?」と疑いを持っていることを知ったカレンは婚約を解消。マーサはそれを知って心が激しく揺れた。
 
マーサは、カレンに、子供のウソを通して自分の中にある潜在的なカレンに対する愛情に気づいてしまったのだと告白する。
 
やがて孫娘メアリーの嘘を知ったティルフォード夫人が「子供たちがウソだと白状した」といって謝罪に来た。
 
裁判で敗訴した判決を無効にし、名誉回復のために新聞で謝罪広告をするといってきたのだが、カレンは「謝罪とお金で、自分の心の安らぎを買うというのか」と許せなかった。
 
カレンは久しぶりに空の青さをしみじみとした思いで仰いだが、ふとそこにいないマーサに気づき不安にかられて名を呼んだ。
 
2階にかけ上がったカレンが見たのは、暗く閉ざされた部屋の中で自らの生命を絶ったマーサの姿だった。このあたりも直接的な自殺の描写はなく、シルエットで映し出していた。
 
ラスト・シーンは、マーサの葬儀が行われ、カレンは棺に献花をした後、参列者やジョーには目もくれずに、きりりと姿勢を正して、前を向き歩く姿は、あの「第三の男」のラストを連想させるものだった。
 
1960年当時のハリウッドでは、同性愛に対する描写は厳しく検閲されていたとのことで、ハリウッドの製作者や監督らの抗議により、1961年10月に条件付きながらも同性愛を映画で描く事が認められたことから、本作は映画協会の認可を受けた最初の同性愛を描いた映画だという。
 
・・・
メアリーの顔、言動、行動がとにかく腹立たしい。
ぶさいくの悪魔のように見えるメアリーという娘の存在が、作品のかなりのウエイトを占めている。盗癖のあるロザリーという少女の弱みにつけこんで、嘘を強要し、断れば、盗みをばらすと脅かすところなどは、相当のワルガキだ。苦し紛れについた嘘が、結果、人を死にまで追いやってしまった。

メアリーのお祖母さんであるティルフォード夫人(ジョーの伯母)も子供のウソを疑いもせず、思い込みが激しく、頑固。マーサの叔母も自分勝手で幼稚で救いようがない。
 
ことばの怖さ。嘘ひとつで、人を死にまで追いやる怖さ。
前半は、淡々と進むが、後半は一転して、暗転。重苦しい展開となるが、さすが大監督ウィリアム・ワイラー。見ごたえ十分のドラマだった。ヘプバーンの美貌と、マクレーンのキュートさが相変わらず際立っていた。
    
●1961/米
●監督・製作:ウィリアム・ワイラー
●脚本:ジョン・マイケル・ヘイズ
●原作:リリアン・ヘルマン 「子供の時間」
●音楽:アレックス・ノース
●衣装:ドロシー・ジーキンズ
●キャスト:オードリー・ヘプバーンシャーリー・マクレーンジェームズ・ガーナーミリアム・ホプキンス、フェイ・ベインター、カレン・バルキン、ベロニカ・カートライト
 
 
 
☆☆☆☆
 
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
 「にほん映画村」に参加しています:
 ついでにクリック・ポン♪。