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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「雨あがる」(2000)・・・黒澤明脚本。日本アカデミー賞作品賞ほか受賞。

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雨あがる」は、黒澤明監督が脚本を手掛けながら病床に付したため、脚本をもとに黒澤没後映画化された。映画のオープニングで「黒澤明に捧ぐ」と字幕が出る。

 
第24回日本アカデミー賞では、 最優秀作品賞、最優秀脚本賞(黒澤明)、最優秀主演男優賞(寺尾聡)、最優秀助演女優賞(原田美枝子)、最優秀音楽賞(佐藤勝)、最優秀撮影賞(上田正治)、最優秀照明賞(佐野武治)、最優秀美術賞(村木与四郎)の計8部門を受賞した。そのほかの部門でも優秀賞(ノミネート)を得ており、この年の賞を独占したといってもいい。
 
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亨保時代(18世紀初頭)
武芸の達人でありながら、人の好さが災いして仕官がかなわない武士・三沢伊兵衛(寺尾聡)とその妻・たよ(宮崎美子)。旅の途中のふたりは、長い大雨で河を渡ることが出来ず、ある宿場町に足止めされていた。
 
ふたりが投宿する安宿には、同じように雨が上がるのを鬱々として待つ貧しい人々がいた。そんな彼らの心を和ませようと、伊兵衛は禁じられている賭試合で儲けた金で、酒や食べ物を彼らに振る舞う。
 
翌日、長かった雨もようやくあがり、気分転換に表へ出かけた伊兵衛は若侍同士の果たし合いに遭遇する。危険を顧みず仲裁に入る伊兵衛。そんな彼の行いに感心した藩の城主・永井和泉守重明(三船史郎)は、伊兵衛に剣術指南番の話を持ちかけた。
 
ところが、頭の固い城の家老たちは猛反対。ひとまず御前試合で判断を下すことになるが、そこで伊兵衛は、自ら相手をすると申し出た重明を池に落とすという大失態をしてしまう。
 
それから数日後、伊兵衛の元にやってきた家老は、賭試合を理由に彼の仕官の話を断った。だが、たよは夫が何のために賭試合をしたかも分からずに判断を下した彼らを木偶の坊と非難し、仕官の話を辞退するのだった。
 
そして、再び旅に出る伊兵衛とたよ。ところがその後方には、ふたりを追って馬を駆る重明の姿があった・・・。
 
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三沢伊兵衛(寺尾聡)の殺陣や、いで立ちは、黒澤明の名作「椿三十郎」の桑畑三十郎(三船敏郎)をほうふつとさせるものがありオマージュを思わせる。「椿三十郎」のラスト・シーンの血しぶきもあった(「椿三十郎」はモノクロだったが、こちらはカラーで)。
 
三沢伊兵衛の性格はいたって穏やか。
常に困っている人々のためになることをする。力を持ちながらも、野心家ではない。
当時は、武士たるもの、賭け試合によって賞金を得るなどは、御法度とされていた。
城主も、伊兵衛の力を見込んで、剣術指南番にしようとしたが、過去に賭け試合をしたことを理由に、家老に「話はなかったことに」と伝えるよう厳命。
 
それを伊兵衛に伝えると、伊兵衛の妻が言う。
「何をしたかではなく、何のためにしたかでしょう。あなたたちでくの坊にはわかるまい」と。このことを家老が、城主に伝えると、「お前たちは、それを聞いて、引き下がったのか。なんというでくの坊だ。呼び戻せ」と。
 
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すでに、伊兵衛と妻は、宿を出た後だった。
城主自らが、伊兵衛らに追いついて、呼び戻すというシーンは撮影されていたようだが、映画ではカットされていた。そのほうが、観客に余韻を残してよかったかもしれない。
 
寺尾聡は、ひょうひょうとしているが、出演作品は、印象深い役柄が多い。
歌手としての「ルビーの指輪」(日本レコード大賞受賞)は、どうも軽い調子で、決してうまいとはいえずあまり好きになれない(笑)。日本レコード大賞日本アカデミー賞最優秀主演男優賞の両方を受賞しているのは、寺尾聡だけ。
 
最近は、アイスクリームのCMでとぼけた味わいを見せている。
 ※ 無料動画「Gyao」でも全編(1時間30分)見られる。