実話がベースという「ツレがうつになりまして。」(2011、略称「ツレうつ」)を見たが、漫画家・崎晴子(ハルさん)を演じる宮あおいが、表情豊かで、全編魅力たっぷり。その夫・崎幹男(ツレ)役を、今や半沢直樹で大人気の堺雅人が演じている。
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ハルとツレは結婚5年。
変わった夫婦で、イグアナを自宅に飼っている。
イグアナは「イグ」と名付けられ、家の中をわがもの顔で這っている。
ハルは、自分でも自覚しているが、料理、掃除、洗濯が苦手な、マイペースでものぐさタイプ。
反対に、夫のツレは性格が几帳面で、曜日ごとにネクタイが並べられ、弁当も自分でつくり、弁当のチーズも曜日ごとに変えるほど。出勤するため家をでる時間にハルは起きてきて、生ゴミ袋をツレに手渡す。
ツレは、パソコン関連のクレーム処理を担当。
毎日の満員電車の通勤と、仕事のストレスからか、医者から「欝(うつ)」の診断が
くだされる。
一方、出版社で漫画を書いていたハルだったが、編集担当から、読者アンケートの評判もよくなく、連載漫画が中止となってしまう。
ツレは「こころの風邪」と診断され、病気は簡単なものではなく、治療には半年から
1年半はかかると言われる。
ハルは、「がんばらないぞ!」と決めて、夫・ツレを支えるが・・・。
鬱などの病人に、かんたんに「がんばって」などと言いがちだが、それは禁句であるとよくいわれる。そうした一言が鬱のひとには重荷になるのだろう。人の迷惑になっているのではないかと落ち込みながらも頑張っている人なのだから。
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オリンピック招致で「お・も・て・な・し」の言葉が話題になったが、ツレは、講演会で、うつ病に対する対応として「あ・と・で」が大事だという。「あ」は、あせらない、「と」は、特別扱いしない、「で」は、できることとできないことを考える・・・というもの。
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うつを体験したツレが、結論づけたことは、うつは、恥ずかしい、情けないという気持ちだったが、そうではなくて、それは誇らしく思えて、生きていること自体の姿に誇りを覚えることができたという。
ハルも、もともとマイナス思考だったが、「どんな夜も明けない夜はない」と、夫・ツレのうつを通して、大きく成長することができたようだ。
タイトルは、職を失ったハルが、再び出版社を訪れ、「ツレがうつになりまして。仕事を下さい」というセリフから来ている。結婚した時から、夫・幹夫のことをツレと呼んでいるのだが、「連れ」のことだろう。
堺雅人は、この映画では、落ち込んで、もがく姿が描かれるが、自分などいなくなってもと自殺を試みる。その時の心境を、自分が死んだら、ものぐさなハルは葬式ができるかなどと、あとでふり返ってハルに話していた。
ハルの両親に、余貴美子と大杉連、そのほか梅沢富美男、田山涼成、犬塚弘などが出演。監督は「陽はまた昇る」(2002年)でデビューし「チルソクの夏」「半落ち」「夕凪の街 桜の国」「日輪の遺産」などの佐々部清監督。
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