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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「瞳の奥の秘密」(2010)

 
瞳の奥の秘密」(2010)は、アルゼンチンの映画で、一言でいえば、サスペンスと秘めたロマンスを描いた秀逸なドラマだ。
 
瞳の奥の秘密」というタイトルがいい。それがこのドラマのキーポイントでもある。
アルゼンチンの政治を含めた歴史を背景に、未解決事件を巡るサスペンスを縦糸に、そして秘めた恋を横糸に巧みな物語が展開される。見ごたえがある。
 
 
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2009年度のアカデミー賞最優秀外国語映画賞を受賞し、評価も高かったので気になっていた映画の1本だった。主演は、なじみのない俳優、女優だが、アルゼンチンでは有名のようで、数々の主演賞を獲得しているようだ。
 
前半は、ややゆっくりした展開だったが、ラストに向かって驚きの展開があり、それでもエンディングは、この映画のタイトルの通り、「瞳の奥の秘密」がついに・・・というところで、ロマンティックな終わり方だった。
 
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刑事裁判所を退職したベンハミンは、25年前の未解決事件を題材に小説を書き始める。1974年に起こった残忍な殺人事件は、政治の力でもみ消され、ベンハミンを苦しめたが、事件を思い出すことで封印された愛が蘇ってくる・・・。
 
この物語は、幸せな新婚生活を満喫していた美しい女性が暴行された末に惨殺されるという痛ましい事件が発端。誤認逮捕などの経緯を経て真犯人を捕らえるまでは、緊張感溢れるサスペンスとして進んでいく。
 
だが主人公ベンハミンの懸命な捜査の果てに待つものは、軍事政権への協力を条件に犯人が自由の身になるという、あまりに不条理な現実だった。密告や拷問により、正義が歪められた負の時代は、どれほどの数の人間を不幸にしたことか。
 
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ベンハミンは、殺された女性の夫リカルドの深い愛情と悲嘆、何より想像して余りある無念を思いながら、ブエノスアイレスを離れる。そこには、身分や学歴など、とうてい自分とは釣りあわない美しい上司イレーネへの恋を封印するという悲しみもあった。
 
ベンハミンは小説を書くことによって過去をリロードしていくが、Aの文字が上手く打てない古いタイプライターに向き合ううちに、彼の心にかつて携わった事件を解決したいとの強い思いが湧き起こる。
 
ベンハミンにとって、この過去に向き合わない限り、人生はないも同然なのだ。
次第に明かされる真相は、友人パブロの捨て身の友情と共に、リカルドの執念に辿り着く。
 
死刑など望まない。犯人には長生きして罪を償ってほしい」とつぶやいたリカルドの瞳には、時を凍りつかせるほどの絶望が見てとれる。ついに突き止めた事件の真実は、ありきたりな謎解きではなく、言葉を失うほど衝撃的なものだ(Webより)。
 
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サスペンス映画というのは、小道具がよく使われるが、この映画でも、旧式のタイプライターが登場する。昔懐かしいブランド、オリベッティ製品だ。随所にシャレた会話が登場する。
 
判事補の部屋の旧式タイプライターで、大文字の「A」が打てないので、そのことを判事補に告げると、なくても大丈夫という返事。これが、あとで、ニヤッとする伏線にもなっている。
 
警察署内では「ナポレオン・ソロだかペリー・メイスンだか知らないが、あまり気にするな」といった会話も飛び交う。 有名なアメリカのドラマのタイトルだ。

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時は1999年、退職した元裁判所職員のベンハミン(リカルド・ダリン)は、25年前の1974年に起こった未解決事件について小説を書くことにする。それは銀行員の妻が自宅で暴行殺害された事件だった。ベンハミンは、小説執筆にあたって、かつての上司で今は検事になっているイレーネ(レダッド・ビジャミル)に会いに行く・・・。

かつてのベンハミンとイレーネの初めての出会いのころの物語と、現在のベンハミンのドラマが同時並行で描かれていく。
 
迷宮入りとみられた事件だったが、容疑者発見に執念を燃やす被害者の夫を
目にしたベンハミンは、イレーネとともに捜査を再開し、ついに真相に迫る。
 
カメラワークが迫力をもって迫る。
俯瞰で空からサッカースタジアムをとらえると、そのまま、プレーしている選手たちを映し出す。その観客席を見ると、ベンハミンと同僚の姿が。そこでの逮捕劇が迫力満点だ。逃げる男と追う者たちの追っかけシーンは迫力がある。
 
ところが、犯人逮捕後に予想もしていなかったことが起こる。

1970年代半ば当時、軍事政権下にあった当時のアルゼンチンの複雑な状況。逮捕した犯人が、政府に利用されて、釈放となり大統領のSPに収まってしまっていたのだ。

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ベンハミンは、真相を確かめるために被害者の夫の行方を突き止めて会いに行く所はクライマックスとなる。かつて妻を残酷な方法で殺された夫は、犯人が簡単に殺されるのでは納得できず「犯人を死刑にするよりも、一生刑務所に閉じ込めたい」と語っていた夫が、吹っ切れたようにしているのはなぜなのか。
 
その裏には驚愕の真実が隠されていた!。
(そこは映画を見て、確認を!)
 

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ベンハミンの上司がベンハミンに語っていたことは、イレーネを事件に巻き込むな、だった。
 
高卒の元・裁判所職員で貧乏人のベンハミンと、ハーバード大出身の法学博士で金持ちでは身分が違いすぎる・・・ということだった。
 
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ベンハミンは小説の筆が進まず、不安からメモに「TeMO(怖い)」と走り書きをしていたのだが、いつしかその文字に「A」を書き加えて「TeAMO(愛してる)」に変えるのだった。
 
ラストシーンで、ベンハミンが、判事から検事に出世しているイレーネのオフィスを笑顔で訪れる。イレーネは、ベンハミンの瞳の奥にある秘密(愛情)を察して、ベンハミンと前を進む決心をしたようで、笑顔で、こう答えるのだ。
 
「かんたんにはいかないわよ!」
 
何しろ、イレーネは結婚していて子供が二人いるのだから・・・。
 
なかなか味のあるラストシーンだった。
以前、ベンハミンが、イレーネに対して、「(イレーネの)最高の笑顔は見たことがない」といったところ、「それはそうよ、恋人にしか見せないもの」と言っていたが、このエンディングでは、まさに最高の笑顔を見せていたのだった。
 
脚本、俳優の演技のすばらしさで、引き込まれる映画だった。
アルゼンチンにも、すばらしい俳優、作品があるということを知った。
 
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