マリリン・モンローを演じるなど活躍が続くミシェル・ウイリアムズが主演の2012年の作品「テイク・ディス・ワルツ」を見た。原題がTake This Waltzだからと言って、タイトルを原題をそのままカタカナにしたが、発音に近いからといって「ディス」はない!(笑)。昔から中学英語の一つ覚えでいけば、「ジス」のほうがまだわかりやすい。
「テイク・ディス・ワルツ」予告編
世界中が不安定な時代。
こういうときには人間も不安になるのか、最近はメンヘラ女子という言葉まで生まれるほど、精神的に病んだ人々が増えているという。「メンヘラ」とは、「メンタルヘルス」(心の健康)をなまっていうようで、精神的に不安定な状況を言うようだ。
「テイク・ディス・ワルツ」は、そうした気質の女子(主人公のマーゴは28歳、結婚
5年)の悩みや行動原理を、極めてリアルに描いた映画。
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この映画は、そうだそうだと納得できる人、私には無理、主人公の行動はおかしい、など感想は分かれそうだ。
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フリーライターのマーゴ(ミシェル・ウィリアムズ)は、取材先でダニエル(ルーク・カービー)という青年に出会う。自分の心を的確に言い当てる彼に好意を持った彼女は、タクシー相乗りで帰宅しようとするが、驚くべきことにダニエルは向かいの家に住む隣人だった。
マーゴは、結婚5年目で、夫のルー(セス・ローゲン)とは変わらず、言葉遊びなどをして、一見ラブラブのように思われたのだが、マーゴは青年(といっても1歳年上)に会って以来、心はさざ波に揺れ動かされ始める。
映画の前半は、ごく普通の恋愛ドラマのように進行する。
取材先で出会った男の子と偶然隣人だったというロマンチックな展開。
夫がいながら新しい男にひかれていく様子が、スリリングに描かれる。
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「隣の芝生は青い」か?(笑)
はたからみれば理想的な夫婦関係なのに本人には何か気に入らない部分があり、よその男にときめきを求めてしまうのが、まさにメンヘラ気質というものらしい。
さて、ヒロインが精神的に不安定なだけに、また夫があまりにいい人なだけに、彼女マーゴが浮気をしてしまうのでは、という点がスリルを生む。
これは現実の恋愛も同じで、情緒不安定な女性が案外モテるのはじつはここに要因があるらしい。恋愛の駆け引きを楽しみたい男は、そうした女性を常に選ぶのである。
空港での会話でヒロイン・マーゴが、「自分は飛行機の乗り継ぎが怖い。怖いと思うことそれ自体が怖い」などと言うのは、この女性が典型的な情緒不安、メンヘラ気質である証明。演出的にはここでいう「乗り継ぎ」に、当然男性を乗り継ぐ恋愛遍歴、という意味も込められている。この映画は女性監督で2作品目という。
これはそういう女性のお話ですよと、最初に観客に示しているわけである。
この映画には、こうした病気に近いような不安定な人間が何人も出てくる。
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終盤意外な展開になったとき、マーゴが彼女(夫の姉)と再会するシーンが用意されるのである。ここでの会話が、2人が同類だったことを観客に明らかにする。
主演のミシェル・ウィリアムズの体当たりの演技がリアル。
シャワーシーンから一糸まとわぬ濡れ場(女性監督が・・・と思うような大胆なシーン)まで、ヘアもお尻も全部見せる。
美人だが、ぽっちゃり系であるため、体型がまた何ともリアルな女そのものである。
・・・・というのは、ネットの解説(まったくその通り)。
終盤の身も蓋もない展開(ポルノ映画シーンも顔負け)に、女性監督ならではの繊細さより、大胆さの方が勝っているといった作品だ。「ラブストーリー」だろうと、間違ってもカップルで見る映画ではないし、一人で見る映画だ。
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既婚者のマーゴは、そこに縛られていて、一線を越えられない。
その代わりに、相手の男に“あなたならどういう風に私を(フィジカルに)愛してくれるか?”と尋ねるのだが、妄想シーンがあってエロティック。ミシェル・ウィリアムズのリアルな表情がお見事。
このエアセックスは精神や人格と切り離された肉体、精神と肉体を分離可能なものと考える(西洋的な)二元論に乗って居るのだという。本当に「寝た」訳じゃないから不貞ではないと・・・。
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マーゴは、30年後のXX月○○日に会いましょうと男に告げる。
「その時に私は58歳。キスしても夫は許してくれるでしょう」というのだが、その時は意外に早くやってくる。
その男・ダニエルとの新生活をモンタージュ風の映像で切り取っていくシークエンスの残酷さ。全く生活感のない部屋で愛し合う日々。やがて家具や衣装、家電製品=ありふれた日常に埋もれていく寂しさ。
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再び、かつてのルーの時と同じ倦怠感に満ちた生活となる光景が描かれる。
映画のシーンが、あれ、最初のシーンに戻ったのかと一瞬思ったが、女の足のマニキュアの色が違っていたので、結局、相手こそ変わったが、また平凡な生活を続けていると思わせるエンディングだった。
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