映画「終の信託」予告編
「終(つい)の信託」(2012)は、シリアスかつ重厚なドラマだった。
「それでもボクはやってない」の周防正行監督が、法律家でもある朔立木(さく・たつき)の小説を実写化したラブストーリーである。
重度のぜんそく患者と恋に落ち、彼の願いから延命治療を止めた行動を殺人だと検察に追及される女医の姿を見つめる。
草刈民代と役所広司が「Shall we ダンス?」のコンビが、16年ぶりとなる共演を果たし、愛と死に翻弄される男女を熱演。
あらすじ:
だんだんと距離が近づき、お互いに思いを寄せるようになる二人だったが、江木の症状は悪くなる一方。死期を悟った彼は、もしもの時は延命治療をせずに楽に死なせてほしいと綾乃に強く訴える。
それから2か月後、心肺停止状態に陥った江木を前にして、綾乃は彼との約束か、医師としての努めを果たすか、激しく葛藤する (Yahoo映画より)。
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延命治療、終末医療における判断などの難しさを問題提起している。
全体的にやや重苦しさがあったが、後半、呼び出しを受けた綾乃が検察庁を訪ねてからの検察側のやり取りは迫力があった。
検察の強引ともいえる調書の取り方と、長い間患者と接してきた現場の女医との激しいぶつかり合いのリアリティが見どころだった。
検事の大沢たかおの言動が迫力がある。
検事側では、裁判所に対して、納得させるためのストーリーがすでに出来上がっており、被疑者に無理やりにそれに合わせるような誘導尋問をするやり方で、被疑者を追いつめる。
延命治療を中断するには、死に至ることが確実な場合や、それに加えて肉体的な苦しみが耐え難い場合、さらにそれに本人がその旨文書でしたためた場合以外は、殺人に相当するという。
窮地に立たされた女医は、逮捕されたが、患者の数十冊に及ぶ日記の最後のほうの「呼吸器内科医の折井さんの判断にゆだねます」との一文があったため、2年間の懲役、4年間の執行猶予判決となった。
それにしても、実話だというだけあって、難しいテーマながら、考えさせられる映画ではある。草刈民代が、苦悩する女医を好演している。
2012年度邦画の「キネマ旬報」ベスト10映画は以下の通り。(7)のみ未見(後日鑑賞)。
(1)「かぞくのくに」☆☆☆☆
(2)「桐島、部活やめるってよ」☆☆☆☆
(3)「アウトレイジ ビヨンド」 ☆☆☆
(4)「終の信託」 ☆☆☆☆
(5)「苦役列車」☆☆☆
(6)「わが母の記」☆☆☆☆
(7)「ふがいない僕は空を見た」☆☆☆
(8)「鍵泥棒のメソッド」 ☆☆☆
(9)「希望の国」★★
(10)「夢売るふたり」 ☆☆☆
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