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<span itemprop="headline">映画「蛇イチゴ」(2002)・・・西川美和監督第1回作品。</span>


蛇イチゴ」予告編
 

 
蛇イチゴ」(2002)は、現在公開中の「夢売るふたり」(2012)の西川美和監督の第1回監督作品(脚本も)。西川監督は、「蛇イチゴ」で注目された後「ゆれる」「ディア・ドクター」と2-3年に一度のペースで作品を監督しているが、どれも問題作となり、高い評価を得てきた。
 
見る順番が逆になったが、初めて西川美和作品を見たのは「デイア・ドクター
(2010)。次に、先日劇場で見た最新作「夢売るふたり」(2012)。そのあと「ゆれる」(2006)。そして、今回の「蛇イチゴ」だ。現在長編4作品を監督しているので全作品を見たことになる。
 
夢売るふたり」のインタビューなどで西川監督は語っている。
映画は、俳優・女優との戦いだ」と。「夢売るふたり」では、相当に驚くような演技を俳優・女優に演じさせている。松たか子がまさかの行為も平然とやってのける。女優根性にうなるしかない。
 
蛇イチゴ」は、家族の崩壊の様をぐいぐいと描いていく。
ほとんど救いようがないくらいだ。しかし、映画としては、強烈なパンチを食らったような、見ごたえのある映画だった。
 

西川美和監督(写真)は、1974年生まれで、美人の誉れ高い監督。
蛇イチゴ」監督時は、28歳。自作脚本のブラックコメディ「蛇イチゴ(主演:宮迫博之)で監督デビュー。

日本の典型的な家族の崩壊をシニカルに描いた同作は、第58回毎日映画コンクール脚本賞のほか、その年の数々の国内映画賞の新人賞を受賞する。製作は是枝裕和
 
蛇イチゴ」は、一見どこにでもいるごく平凡な家族のように見える明智一家の内情を中心に描いている。家族は、外からはうかがいしれないさまざまな問題を抱えていた。映画は始まりから、時間経過とともに、次々に明かされることが出てくる。
 

同僚の教師との結婚を控え幸せいっぱいの長女・倫子
(ともこ)(つみきみほ)は、仕事第一の典型的なサラリーマンの父・芳郎(平泉成)と、毎朝同じ電車で仲良く通勤。
 
しっかりものの母・章子(大谷直子)は、痴呆症の祖父・京蔵(笑福亭松之介)の世話を嫌な顔せずにこなし、家族を守っている。京蔵は、自分がまだ軍隊の士官と思い込んでいて、食事も食べ散らかし、口元はいつも汚れていた。章子は、義父との同居生活にほとほと疲れ切っていた。
 
父・芳郎は、リストラの憂き目に遭ったことを家族に内緒にし、元同僚や、金融業者などからお金を借りまくっているという始末。母は介護に疲れ、もはやその我慢も限界まできていた。倫子は子供の頃からの夢を叶え小学校の教師になったものの、生徒の扱いを持て余している。心の安らぎは、婚約者・鎌田(手塚とおる)の存在のみ。
 
ある晩、明智家では、鎌田を招くことになった。父にも、よろしくと伝える倫子。
「あいつのことは?」と父。後でわかるが、あいつとは、10年前に勘当されて出て行った、平気でうそをつく兄・周治(宮迫博之)のことだった。明智家で、ささやかで幸せな夕食の宴が催されていた。お互いにお互いを誉めあい、お坊ちゃま育ちの鎌田のハズれた発言にも、和気あいあいと笑顔で答える明智一家。
 
そこへ電話のベルがなり、父が呼び出される。借金取りからの催促の電話を仕事と偽り外出する父。鎌田を見送りに出かける倫子。
 
まさか、残された母が、京蔵の突然の発作に見て見ぬふりをし、一心不乱に風呂掃除をしているなどとは考えもせずに・・・。明智家のいびつな幸せは、小さな亀裂とともに、ついに終焉を迎えようとしていた。その頃、ある通夜会場に1人の男の姿があった。
 
知人を装い遺族に近づいては、隙をみて香典泥棒を働く明智家の長男・周治(宮迫博之)だった。父に勘当されて以来、一度も家に帰っていない放蕩息子は、その晩も大漁の収穫をあげ、夜の闇に消えていく。この長男、見ていて腹立たしくなるくらい、薄っぺらい男で、どうしようもない人物。
 
そして数日後、葬儀場で新たな仕事を終えた周治は、たまたま京蔵の告別式に鉢合わせをしてしまう。おまけに、そこには借金取りまでが押しかけてきて大混乱に。
 
怯える父や遺族たちをよそに、周治は弁護士を装って、立て板に水の大弁舌、みごとその場を丸く治める。成り行きで、10年ぶりに周治を迎えることとなった明智一家。しかし、家にも借金取りが現れ、脅迫をはじめる。
 
皆で頭を下げ、今日のところは帰ってもらおうと父を説得する倫子をよそに、香典泥棒で手に入れた120万を手渡す周治。父は、ついに勘当したはずの息子からその金を受け取ってしまう。ショックを隠せない倫子は、この騒動がもとで鎌田からも去られてしまう。一方的に別れを告げられた帰途のタクシーで、倫子は、祖父の葬儀をした斎場で、同じ日に120万円の香典が盗まれたというニュースを聞く。
 
倫子は合点がいく。
 
言うことなすこと嘘だらけだが、世渡り上手でどこか憎めない周治は、いつのまにか家族の中心となっていた。すべてのことに疲れてしまった父と母は、嘘と欺瞞に満ちた生活から解放されるべく、彼の言いなりになっていく。
 
そして周治は、残った借金を精算するため、ある提案をもちかける。
それは、いったん財産の名義をほかの人間(周治)にしておき、財産がないことにしておけば、破産しないで済み、借金は帳消しになると持ちかけたのだった。ここにも周治の騙しがあった。
 
そのことを知った倫子は、両親に、借金の一部を返済するために周治からもらった
120万円は、周治が葬儀の香典を盗んだものであることなどを伝える。
 
120万円が正義を盾に家族を守ろうとするのだが、反対に父や母から疎まれるようになってしまう。そこで彼女は、ある決断を胸に秘め、兄を思い出の森へ誘い出すのだった・・・。
 

 
以前、周治から、森に蛇イチゴがあるから行ってみろと言われ出かけたが、見つからなかった。後から、兄の嘘だと気づいた。そこであえて、本当だったら案内してほしいと、森に案内させたのだ。

途中で、周治から、少し上に行けば、必ず蛇イチゴがあるから、と上に上るために手が差しのべられたのだが、倫子は、(計画があったので)後ずさりして、森から離れ、携帯電話で、警察に「香典泥棒の犯人が、森にいる」と通報したのだ。
 
そのあと、口笛を吹きながら家に帰り、仏壇の前を見ると、驚くべき場面を見てしまう。そこには、赤い「蛇イチゴ」が並べられていた。全くの嘘で固まっていたと思われた兄・周治の言動の中にも本当のことがあったのか・・・と驚きを隠せない倫子の表情だった。これが救いだったのかもしれない。

 
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