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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

<span itemprop="headline">映画「夢売るふたり」(2012):松たか子の怪演。</span>


映画「夢売るふたり」予告編
 
 

 
今年後半、一番期待していた映画「夢売るふたり」(2012)を見てきた。
女(松たか子)のカンの鋭さ、嗅覚。強さ、したたかさ、息がつまるような凄味・・・。
 
結論は、女は怖い
 
松たか子の存在感はあの「告白」を遥かにしのぐ!
 

  
東京の片隅で狭くて窮屈な小料理屋を営んでいた夫婦、貫也(阿部サダヲ)と里子
松たか子)だが、貫也が焼き鳥を炭火にかけたまま放置して、冷蔵庫などの作業をしていたために、火が燃え上がり、火災を起こしてしまう。火災までの流れがスピーディに展開して、出演俳優のクレジットが出た後、「夢売るふたり」のタイトルが出る。
 
”自分たちの店を持つ”という夢を諦められない二人は、お金が必要。
 とりあえず、1,000万円集めなくては…どうする?
 

 

 
里子は、客などの会話に聞き耳を立てていて、心の隙のある女たちに目星をつけて、夫・貫也を近づけ親しくなったところで、あれこれ理由をつけて、お金を巻き上げていく。
 
そんな女たちには、結婚したい独身OL・咲月(田中麗奈)、DV(暴力)夫(伊勢谷友介)から逃れたい男運の悪い風俗嬢(安藤玉恵)、不倫で大金(手切れ金)を手にした玲子(鈴木砂羽)、大柄でコンプレックスがある孤独なウエイトリフティング選手のひとみ(江原由夏)、幼い息子を抱えたシングルマザー・滝子(木村多江)がいた。貫也はこれらの女たちと関係を結び、成功していくかに見えたが、やがて、歯車がくるっていく。夫婦間にも、食い違い、さざ波が寄ってくる。
 
映画は、喧騒の中、途中で、何回か、全く音声もなくなり、ポツリポツリと静かになるシーンがある。映画の意図的アクセントかわからないが、やや緩やかさ、だるさを感じさせる。
 
これから見る人は、スキップも・・・。
 
小料理屋の常連客の玲子(鈴木砂羽)が横断歩道の手前で男と別れのキスをしている。相手の男・勇作(香川照之)は、そのあと交通事故で病院に運ばれるが死亡。
 
病院に駆けつけると、勇作に瓜二つの弟・明浩(香川照之2役)がいて、「玲子さんと会えないかもしれないからと預かっていた」というお金(手入れ金)を渡される。自暴自棄になっていたところで、駅のベンチでばったりと行きつけの店の貫也と出会う。玲子は、相当酔っていて、ゲロをはき、貫也のズボンを汚してしまう。
 

     鈴木砂羽が体当たりを見せつけた。
 
終電車もなくなり、二人は玲子の家で、行きずりの関係を結んでしまう。貫也は「あいつ(妻)は、文句ひとつ言わずバイトをして、頑張っているが、俺と一緒だと不憫で・・・」などと泣き言をいう。
 
玲子は、手切れ金をそのまま、未練も執着もなく貫也に手渡し、「一つだけお願いがある」と言って、一発、貫也にパンチをくらわす。自分が不倫相手から受けた屈辱を晴らしたかったのか。
 
そのお金を持って帰宅した貫也は、「昔の友達に会って、気前よくお金を工面してくれた」とうそを言うが、衣類がきれいになっているので、里子は「どこで洗濯した?」と封筒を開けると、現金のほかに玲子にあてた文面が・・・。里子は、「玲子とどうだった」と問い詰め、「普通にしていた」とごまかすが、勘のいい里子をだませるはずもなかった。
 
里子は、現金を見て、頭に来た様子で、食パンと牛乳をむさぼるように食べる姿が、怖い。貫也が風呂に入っている時に、札束をコンロで燃やし始める里子だったが、燃やすのを途中でやめて、風呂に入っている貫也に、燃えかけの札束を殴りつけるのだった。お湯を熱湯にし、水道で水を出そうとする貫也を遮り、足で、水道蛇口を遠ざける里子(松たか子)。
 

 
ここから、里子にある考えが浮かぶ。
夫に対する復讐心からか、夫を利用して、結婚したい症候群の女たちに近づいて、お金を巻き上げていこうと・・・。


冴えないOLの咲月(田中麗奈)は、妹(倉科カナ)から、結婚しないことをなじられ妹に向かって「親から言われてきたのか」と怒りをあらわにする。
 
この時、里子と貫也は目配せをして、妹がトイレに立ったすきに里子が貫也にハンカチを渡し、タイミングをみて、貫也は悲嘆にくれている咲月にそっとハンカチを差し出す。貫也はさらに、咲月の涙を指で拭いたりする。
 
咲月は、貫也に惹かれていき、咲月から貫也に電話がかかってきたときに、里子が、そばにいて、返答の文句を次々に紙に書いて、そのとおりにいうように「指示」するというすさまじさ。そうして大金を次々にせしめた二人はいつの間にか、店にはいなくなっていた。
 
店には、だまされた女たちが、数人。
恨むでもなく、いい人だったとか口々に語っていたが、咲月だけは「だまされた」と気づき、後で、復讐に立ち上がるのだが・・・。
 
・・・
この映画は、最初は引き込まれるが、途中やや中だるみの傾向があり、最後も、しっくりと終わっていない。女優・俳優の演技を堪能するには十分な映画だが、やや好き嫌いはあるかもしれない。
 
映画の宣伝文句は、「女性監督・西川美和(「ディア・ドクター」「ゆれる」)が迫る{男と女}予測不可能な<愛>のエンタテイメント」ということだが、見どころは、松たか子の目の演技。セリフは少ないが、鋭い眼差しと深い心理描写にはうなってしまう。
 

鈴木砂羽
の体当たり演技(バスタブでの男との激しい絡み合い!)。探偵を演じている笑福亭鶴瓶も「ディア・ドクター」で主演だったが、ここでは、刺青をしているヤクザな探偵ぶりだった。
 
阿部サダヲは、「なくもんか」でも、泣きを見せたが、この映画でも、女々しいほどに泣く。そんな役柄はお手の物だ。妻が企て、夫が騙す詐欺夫婦のストーリーと言ってしまえばそれまでだが、人間の深層心理の奥底をえぐるような、空恐ろしい話でもある。
 
映画は、ポルノ映画まがいの過激な描写が少なくとも3回プラスα(アルファ)?でてくるので、「R15」指定。(失礼ながら、女性監督だったけ?と思わせる大胆さ(笑))
 
出演者で、香川照之木村多江という現在の日本の映画界を代表する演技派俳優・女優の出番・見せ場がほとんどなかったのが残念。脇役でワンポイントで使う俳優・女優ではないと思うが・・・。ほかに中村靖日など。

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