イギリス初の女性首相“鉄の女”ことマーガレット・サッチャーに扮した
「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」を見てきた。
政治家の中で、一人だけ女性ということで、最初は、議会発言などでは、冷やかしやヤジが飛んでいたのだが、やがて保守党の党首となり、一国の首相になり、かなり強気の発言で、他人の意見を寄せ付けないほどの姿勢で、なんと10年以上の長きにわたって首相であり続けた。その後の生活との対比、孤独な生活などが描かれている。
映画のオープニングで、一人の老婦人が、スーパーで買い物をしている。牛乳の値段が高いとぶつぶつとつぶやく。まわりには、買い物客が何人かいたが、この老婦人こそ、英国の元・首相のマーガレット・サッチャーだと気づく人はいない。うーん、いきなり、こうきたか、と思った。
映画は回想形式で描かれる。食料品店でレジを打つ10代後半とみられる娘の時代から今日まで、今も実在するマーガレット・サッチャー(現在86歳)の伝記映画で、サッチャーが、いかにして英国の首相になったか、またその首相期間中の言動などを、メリル・ストリープが熱演している。
映画の中で、サッチャーが本を出版し、サインをするシーンがあるが、「マーガレット・サッチャー」とサインを何冊かの本に書きすすめているうちに、あるとき「マーガレット・ロバーツ」と結婚前の旧姓のサインをしてしまうところがあり、「失敗した」と本のそのページを破いてしまう。
20代半ばのときにデニス・サッチャーから求婚されるが、条件として「皿を洗うこと、家事をすること、こどもの世話をすることは、無駄な時間だから一切しない」ということを将来の夫となるデニスに告げる。このあたりでも、マーガレット・サッチャーの意思の強さを感じさせる。
保守党の党首となり、首相となってからも、すべてにおいて強気な発言をし、周りの閣僚もサッチャー首相の前では、意見を言うことができないほど、独断専行型の姿勢を崩さない。まさに「鉄の女」と呼ばれたゆえんだ。
サッチャーの首相在任期間は、1979年~1990年と11年の長期政権だった。
アカデミー賞に史上最多の16回ノミネートされ、うち2回受賞している名女優メリル・ストリープが、この映画で三度目のアカデミー賞(主演女優2回、助演女優1回)を受賞したが、メリル・ストリープの独壇場で、自身の映画主演の中で、また一つ、代表作を加えた。
この映画で、興味深かったのは、サッチャーが、ミュージカル「王様と私」が大好きだったこと。舞台や映画に主演したユル・ブリンナーについても言及していた。また、ビデオで何回も「王様と私」を見るシーンがあり、夫と「Shall We Dance」を踊るシーンが何回も出てくる。Shall We Danceの曲、メロディーも何回も登場する。
現実に、サッチャーの家族によると、かれこれ10年くらい前から症状が出ているようだ。亡くなった夫の靴や衣類などを捨てるために袋に詰めたり、とうの昔に議員を引退しているのに、社会情勢が気になり、議会に出かけようとしたり・・・。
亡くなった夫の声もうるさく聞こえてくる。それを消しとめるために、ラジオのスイッチを入れ、電気製品のスイッチを入れるなどして、夫の声をかき消そうとする。
英国で初の女性首相としても描かれるが、マーガレット・サッチャーの知られざる私生活の部分にも光が当てられている。二人の子供がいたのだが、子供たちがまだ小さいうちに、子供たちから離れ、政治に没頭する。年老いてからは、かつてビデオで残していた自分の若いころの映像や、子供たちが遊びまわっているビデオを見ては、昔を懐かしむ姿が、かつての現役バリバリ時代と対照的にさびしく描かれている。
男性社会のなか自らを奮い立たせてリーダーシップをとる、“鉄の女”ことサッチャーを演じるために徹底したリサーチによる役作りをしたという。外見も口調もまるで本人そっくりと評判を呼んでいるようだ
映画自体は、それほどの盛り上がり、感動はないが、メリルの演技は、一見に値するだろう。
☆☆☆
追伸: 2013年4月8日、サッチャー、死去。86年の生涯を閉じる。
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