原節子「ドイツ合作映画出演シーン」(1936年)
原節子が国民的女優として認められることになった映画「新しき土」(1936、公開1937、日独合作)が、実に75年ぶりにスクリーンで公開されることになった。
4月7日から東京都写真美術館ホールで、日独版が公開される(27日のみ、日英版上映)。こちら:http://syabi.com/contents/exhibition/movie-1634.html
「新しき土」は、日独合作映画で、”新しき土”とは、満州のこと。ドイツ版のタイトルは、「Die Tochter des Samurai」(「侍の娘」)。
【映画の背景】
ドイツの山岳映画の巨匠アーノルド・ファンクと日本の伊丹万作の共同監督で制作が計画されたが、文化的背景の違いから両監督の対立となり、同タイトルでファンク版と伊丹版の2本のフィルムが撮影された。
監督以外のキャスト・スタッフも豪華で、国民的人気のあった原節子や日本を代表する国際スター早川雪洲、スタッフでは撮影協力に円谷英二(この作品において日本で初めて本格的なスリーン・プロセス撮影が行なわれた)、音楽に山田耕筰が名を連ねている。
現在、一般的に流通しているのは評価の高いファンク版のほうである。
この映画の製作背景には日本とナチス・ドイツの政治的・軍事的接近の目論見があった。ナチスの人種主義では有色人種を下等人種とみなしていたため、ドイツ側は日本のイメージを持ち上げることで同盟の正当性を主張しようとした。日独合作映画を企画していた川喜多長政とアーノルド・ファンクにドイツ政府が働きかけた結果、この映画の製作となった。1936年2月8日の撮影隊の訪日には日独軍事協定締結交渉の秘密使命を戴したフリードリヒ・ハックが同行、同年11月25日に日独防共協定が締結に至った。
【ストーリー】ドイツに留学していたエリート青年輝雄(小杉勇)は、恋人ゲルダ(ルート・エヴェラー)を引きつれ帰国する。しかし、輝雄には許婚の光子(原節子)がいた。光子や父・巌(早川雪洲)は彼を暖かく迎えるが、西洋文明に浸った輝雄は光子に愛情を向けるどころか、許婚を古い慣習として婚約を解消しようとする。そうした輝雄の姿勢をドイツ人のゲルダも非難する。絶望した光子は、火山に身を投げようとする。
出演:
大和光子:原節子
大和輝雄:小杉勇
大和巌 :早川雪洲
ゲルダ・シュトルム:ルート・エヴェラー(Ruth Eweler)
おいく(光子の乳母):英百合子
一環和尚:中村吉次
神田耕作:高木永二
神田日出子(輝雄の妹):市川春代
日出子の妹:村田かな江
輝雄の母:常盤操子
ドイツ語教師:マックス・ヒンダー(Max Hinder)
スタッフ:
原作・製作総指揮:アーノルド・ファンク (Arnold Fanck)
監督・脚本:アーノルド・ファンク / 伊丹万作
撮影:リヒャルト・アングスト(Richard Angst)
撮影協力:円谷英二
音楽:山田耕筰
これは見る価値はありそうだ。