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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「キャタピラー」(2010)


キャタピラー寺島しのぶインタビュー(その2抜粋)
 

2010年の映画で話題になった1本、「キャタピラー」を見た。
 
予告編や解説などでストーリーは知っていたが、「ジョニーは戦場へ行った」と似ているなと思ったら、やはりジョニーは戦場へ行ったと、江戸川乱歩の短編小説「芋虫」をモチーフにしたオリジナルストーリーだった。戦争に翻弄された1組の夫婦の姿を通して戦争がもたらす愚かさと悲劇を描いている。
 
2010年ベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品し、寺島しのぶが最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞したことで、有名になった。
 
1940年、日中戦争に駆り出された黒川久蔵は、4年後に、頭に火傷を負い四肢は失われ、耳もほとんど聴こえない状態になって村に帰還した。
 
軍神(ぐんしん)としてその姿を讃えながらも、厄介払いのように親戚たちは妻・シゲ子に全ての世話を押し付ける。
 
旺盛な食欲・性欲・名誉欲を示す久蔵に献身的に仕えるシゲ子だったが、炎に焼かれる屋敷内で中国娘を強姦・虐殺した記憶に苛まれる久蔵は次第に性的不能になってゆく。それとともに、かつて夫が戦争に行く前に、子供ができないことから、夫から罵られ、暴力によって夫に支配されていた過去が浮き彫りにされていき、やがてシゲ子の憎悪が頭をもたげていく・・・。
 
過去の数作品でも、寺島しのぶは、裸の体当たり演技で注目されているが「裸衣裳の演技派」と言われているようだ。
 
ほかの女優では、引いてしまうような大胆なシーンが多い。
 
映画の最後に、原爆による死者(広島14万人、長崎7万人など)の数などが出てくるが、一貫して、戦争の愚かさを訴えた反戦がテーマの映画だ。
 
「お国のため」という大義で、多くの犠牲を払ったあの戦争は何だったのか。
四肢を失って「軍神」とあがめられるが、軍神とはなんなのか・・・問いかけてくる。
 
大本営の発表は、ラジオを通じて、日本軍が、勝利、また勝利というものばかりだが、現実は、米軍の圧倒的な物量攻撃の前に、日本の軍人の死者の山、どくろの山の映像がかぶさる。
 
シゲ子が唄うシーンが何回か登場するが、「芋虫ごろごろ、軍神様ごろごろ♪」という歌は、凄い。人間が芋虫のように、手足がなく、転げまわる姿を映し出していた!
 
この「軍神様ごろごろ」は、寺島しのぶのアドリブだったという。
さらに、シゲ子が、国防婦人会から卵をもらってくるが、夫の軍神様に、卵をむりやり顔にぶつけて食べさせる壮絶なシーンも、寺島のアイディア・即興という。寺島が、この役を深く理解して出てきた演技ということで、寺島恐るべし!と言える。
 
この映画を見るにはある程度の覚悟はいりそうだ。
 
監督は、若松孝二で、もともとピンク映画の監督でスタートした。「ピンク映画の黒澤明」と呼ばれていた。
 
主な出演:
黒川シゲ子:寺島しのぶ
黒川久蔵:大西信満
黒川健蔵:吉澤健
黒川忠:粕谷佳五
黒川千代:増田恵美
村長:河原さぶ
村長夫人:石川真希
指令部軍人:飯島大介
軍人(2役):井浦新
 
☆☆☆
 
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