「八日目の蝉」予告編
今年4月29日に公開が始まってすでに2か月後となる昨日(22日)、「八日目の蝉」を劇場で見た。生まれて7日間で死ぬという蝉だが、8日目に見た映画の感想は・・・。
「八日目の蝉」の意味は、映画の中で繰り返し語られてるが、普通は七日で、ほかの蝉たちと同様に死んでいくのに、一日長く生きて、仲間がいない中で、それをさびしく思うか、ほかの蝉が経験できないことを経験できて、喜ぶべきか・・・といったことを象徴していたようだったが。
主演の井上真央、永作博美、ええ~これがと思うような(最初は似ているなと思いながら最後まで気になり、クレジットで初めて確認できた)怪演を見せた余貴美子、森口瑤子、小池栄子などの女優陣が圧倒的な存在感だった。
監督は、昨年の映画ではお気に入りの1本だった「孤高のメス」の成島出。
映画のタイトルがでるまでの数分間は、裁判の判決に対する二人の女性(赤ん坊を誘拐した女、子供を誘拐された女性)の言葉がある。
「4年間、子供を育てる喜びを味わうことができ感謝しています」
「毎日うなされ、子供との生活時間を奪われた。そのことに対する謝罪の言葉がない」・・・。
愛人との子供を堕胎し、その愛人の赤ん坊を奪って逃走する誘拐犯と、その赤ん坊がたどった数奇な運命と現在が同時進行で描かれていく・・・。成人して、母親と思っていた誘拐犯がたどった道を探していくと・・・。
俗世間から孤立した、怪しげな女ばかりのエンゼルホームと呼ばれる集団生活は、かのサリン事件で名を馳せた、なんとかサティアンを彷彿とさせ、映画でも、それらしき一斉取り締まりなどで消滅のニュースもあったし、その集団の中心人物、エンゼルの死で、その団体も姿を消す。
主人公の恵理菜(井上真央)は、4歳まで、誘拐犯に育てられ、楽しく過ごしていた。
本当の両親のもとに育ってからは、ぎくしゃくしていた。
(昔から言われる言葉だが、生みの親より育ての親・・・関係ないか)
恵理菜が、母親に「お星様」の歌をうたって、とせがむと母親が星に関連した歌を何曲か歌うが、恵理菜の覚えている歌ではなかった。
この時、ヒステリックになる母親(森口瑤子)の苦しみわめく姿に、「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」と何回も謝る子供の姿が胸を打つ。あとで、その星に関係した歌が、まさか、あの曲だったとは!(ハンカチ、ハンカチ)。
その後、恵理菜は、10代後半で独立して生活していた。
母親と同じように、妻帯者の子供を宿して、同じ運命を繰り返すとしたら、救いようがない悲劇に終わったが、こともを生む決意をした恵理菜には、子供に、星、海、自然などを見せたやりたいという願望が大きく広がり、それまで笑顔を見せなかったが、はじめて希望に満ちた力強い表情があった。
救いようがないエンディングになるかと思ったら、希望のある余韻のあるラストだった。井上真央は、CMなどでは見ていたが、本格主演映画ははじめて見た。
冷静で、落ち着きもあり、しっかりして堂々としているのに驚いた。
永作博美は、涙と笑顔の表情が豊かで、いつもながらうまい。
誘拐した赤ん坊を育てる苦労も大変だったようだ。
泣きやまない赤ん坊に、どうしていいかわからない母親。
母乳も出そうとするが、出ないと悟り・・・。
エンゼルホームなる現実逃避の存在も、このドラマでは不可欠だったのか。逃避行のさなか、あることがきっかけで、自分の存在が公になり、逮捕されることになるが、それを予感して、すべてを子供に託すという「心の準備」もしていた。
「写真館」の、ある儀式や、さまざまな伏線が、最後に集約されていく。
見ごたえのある1本だった。
出演:
恵理菜 - 井上真央
野々宮希和子 - 永作博美
幼少時の恵理菜(薫) - 渡邉このみ
千草 - 小池栄子
岸田 - 劇団ひとり
秋山丈博 - 田中哲司
秋山恵津子 - 森口瑤子
沢田久美 - 市川実和子
沢田昌江 - 風吹ジュン
沢田雄三 - 平田満
エンゼル - 余貴美子
滝 - 田中泯
監督 - 成島出
脚本 - 奥寺佐渡子
音楽 - 安川午朗
配給 - 松竹
主題歌 ‐ 中島美嘉「Dear」
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