五所監督といえば、日本で初めてのトーキー映画となった「マダムと女房」(1931)の監督として知られ、この映画では、小市民の生活をユーモラスに描いた。戦後になると、椎名麟三の「無邪気な人々」を映画化したのが「煙突の見える場所」で、”新スタイルの笑い”を提供し、話題となった。
場所によって1本、2本あるいは3本にも見える、通称“お化け煙突”(実際は4本)がある北千住が舞台。(このお化け煙突は、実在した)
貸家の2階には、税務署で働く久保健三(芥川比呂志)と、街頭放送所のアナウンサーである東仙子(高峰秀子)が下宿をしていた。ある日、緒方家の縁側に赤ん坊が置き去りにされていた。弘子の元夫である塚原のしわざらしい。
隆吉と弘子は仕方なく赤ん坊の面倒を見ることになったが・・・。
この映画の主演は、上原謙と田中絹代だが、実際には、高峰秀子のちゃきちゃきぶりの演技が目立つ。映画の解説でもあったが、上原謙と田中絹代は夫婦で、一階でたまたま、昼間いちゃついている場面があった。そこへ、二階に下宿している高峰秀子が仕事から帰ってきて二階に上がるときに、夫婦が戯れている場面を見てしまうが、普通だったら、恥ずかしくなって、さっと二階に上がってしまうものだが、高峰秀子は、立ち止まって、凝視するのである。このシーンが、当時としては、新しい女優というイメージに映ったようだ(笑)。
この映画は、庶民の暮らしの断片を、笑いと言い争いなどを通して描いているが、「騒々しいまわりの音」というのが大きなテーマとなっていたようだ。赤ん坊の泣き声は、決してやまなかったし、太鼓をたたいて大声で読経する近所の人たちや、拡声器による店の案内、競輪場のざわめき、街の騒々しさ・・・。
夫婦で何年も暮らしても、不信感などが払しょくできず、離婚するといって出て行ってしまう田中絹代や、二階にそれぞれ下宿している男と女が、やがて惹かれあって、一緒に暮らすようになると予感させるような展開になるなど、さまざま描かれるが。考え方が、かみ合わないところも多い。それはちょうど、角度を変えて見ると、違った風に見える煙突のようなもの・・・と言いたかったのか?
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