映画は、主役(いい人系)に対して、悪役の存在があるから面白い。
「大杉漣」(59)
この人の名前の「漣」の「辶」(しんにょう)の点は二つ。劇団の研修生出身。1980年にピンク映画でデビュー。日活ロマンポルノなどを経て、下積みが続いたが、演劇の世界で30代は過ごす。1989年以降、再び映画界(Vシネマ)に多数出演。転機は40代になってやってくる。北野武監督の「ソナチネ」のオーディションに合格。「監督は、大勢の候補者の中の一人として、自分を一瞥しただけで、ダメかと思ったら、合格した」と本人は述懐している。これが契機で、演技派としての実績と知名度を高めていく。
「メガネ俳優」というジャンルがあるとすれば、メガネが特徴だ(オーダーメードのメガネを数多く所有しているといい、映画に合わせて選んでいるのだとか)。少し色の入ったメガネで、凄味を効かせると怖いヤクザになるし、普通のメガネでは、TVドラマなどでは、人のいい会社役員、平凡なサラリーマンになる。
ヤクザを演じると、キレてどなり散らす言葉は、それほど悪党面ではないだけにかえって怖い。平凡な中年の独身男を演じて、味わいがあったのは、興行的にはコケた
「歌謡曲だよ 人生は」のオムニバスの1篇(「小指の思い出」)。鼻歌を歌いながら自転車でアパートに帰り、「ただいま」と帰ると、親子ほども離れた20代半ばくらいの女性が出迎え、夕飯の支度をして待っている。なんだ、愛人でも囲っているのかと思ったら、このあと、とんでもない事実が判明(詳しくは言わない!)。「アキレスと亀」「HANA-BI」など。
「石橋蓮司」(69)
大学中退後の1965年に劇団養成所に入所。68年に劇団現代人劇場に旗揚げに参加。テレビ、映画にも多数出演。アブノーマルな悪役で名演技。三池崇史監督の常連。「怪優」といわれるが、近年は、ベテランの刑事、警察官、厳格な父親や温厚な祖父などの役柄も演じる。俳優・原田芳雄と親しく「石橋蓮司は俺の知っている役者の中でも最高の役者だ」という。「網走番外地」シリーズや、「半落ち」「着信アリ」の刑事役。「20世紀少年」の”ともだち”側の幹部、異色だったのは、ゲイで女装の
「國村隼(くにむらしゅん)」(55)
見るからに悪党顔(笑)。悪役専門のようだが、TVのCMなどでは、いい父親という役も。映画では「交渉人 真下正義」で、真下の独断・先行を嫌い、目を光らせるTTR(鉄道網)総合指令長で、存在感がある。「半落ち」の弁護士、「チーム・バチスタの栄光」の大学病院長、「K-20 怪人二十八面相・伝」「ジェネラル・ルージュの凱旋」など。「キル・ビル」の東京のヤクザ・グループの組長で、組長会議で、ルーシー・リューに、盾ついて、刀で、首をはねられてしまう(怖~)。
「遠藤憲一」(49)
悪役が多い。渋く低い声質を持ち、これを生かしてシリアスなCMや映画の予告編のナレーションなどに多数起用されている。ギョロと睨まれて、どすの利いた声で脅かされれば、ヤクザも逃げ出すだろう。