「オーシャンズ」(2010)は、今年初めに公開されて話題になっていたが、ようやく見ることができた。監督は、ジャック・ペラン。あの「ニューシネマ・パラダイス」で少年から老年になって、フリルムのつなぎを見て涙した主人公だ。私にとっては、感動作品の「Z」の製作も兼ねて、新聞記者役で出演しているのが印象的だ。
オープニングでは、「地球の生き物は、進化を続けながら何十億年も生きてきたが、人間によって一瞬のうちに、自然界のバランスが崩れようとしている。それも加速度的に」というナレーションで始まる。
「人類は、宇宙の謎を解くために宇宙に飛び出していったが、もっと身近な所に宇宙はある。謎に満ちたもう一つの銀河とも言うべき海の中に広がる宇宙・・・青い宇宙」
驚くべき自然界に生きる生き物、海生物などの映像が映し出される。
大カメ、クジラ、オットセイ、サメ、エイ、アジ、海鳥、サンゴ礁などのほか、魚の大群がまとまって一つの巨大な生き物のような形をしている姿などは息をのむ。「ファインディング・ニモ」は、海底のさまざまな魚をアニメにしていたが、こちら「オーシャンズ」は本物だけにド迫力。
前半は、美しい海底などを写し出すが後半に入ると、海の汚染などが浸食している状況も。いまや生き物にとっての聖域は、南極と北極だけという。南極では、映画にもなった「皇帝ペンギン」が自由に生きている。健全な生態系が保たれているからだ。一方、北極では北極熊がいるが、地球温暖化の影響で、氷の面積が減少しており、もはや聖域ではなくなりつつあるという。
人工衛星によって多くの未知の発見があったが、最大の発見は「地球の至る所で、自然が破壊されていること」だと、映画は語る。
海の巨大な力は、時として、大きな船をも飲み込んでしまう。人間は人命救助を行う。沈んだ船の、生物の隠れ家にもなっている。
映像では、打ち寄せる津波や、荒波の中を航海する一隻の船が映し出される。
人類と自然の関係を象徴しているのか。
海を守るために人間が、自然界の生物とともに力を合わせることはできないのかという問いかけでもある。
ジャック・ペランも映画の中に登場して語る。
「何十万年も生きてきた生き物が消えてしまった」と。
「これまで、われわれはどれほど多くの生きものを滅ぼしてきたか。どれだけ多くの生きものが絶滅の危機にあるか。無関心であることが絶滅につながるとしたら、今ほど関心が必要とされる時はない」。
地球の生物は、進化して、多様性を生んできた。多くの生き物が共存する世界を築くことだというメッセージが伝わってくる。
自然界、無重力の世界で、人間の存在を気にすることなく優雅に、かろやかに泳ぎ回っている生き物。宇宙のなかでも奇跡の星と言われる地球。生き物とヒトが調和して暮らすことは夢ではないと映画は語っている。
「これまでにも危機を乗り越えてきたし、これからも乗り越えて行ける。たくましく、しなやかに」
映像の中で、たとえば「コシマガニ」の大集団の映像が出てきたが、CGよりも迫力がある光景だ。海鳥が、海中の魚をめがけて垂直に突進する姿は、すさまじい。「ムラサキダコ」の動きは、海綿のようなしなやかな動きで感動すら覚える。
この映画は、一人の少年の「海って何?」「なぜ海は青いのか?」と言った素朴な質問から生まれたという。この少年は、顔が、映画に出ているジャック・ペランにそっくりで、お孫さんかな(笑)。
驚異の映像に感動する映画でした。
「オーシャンズ11」シリーズよりこちらを見るべきかも(爆)。