「その土曜日、7時58分」(2007、原題:BEFORE THE DEVIL KNOWS YOU'RE DEAD)は、「十二人の怒れる男」「セルピコ」「ネットワーク」など硬派で知られるシドニー・ルメット監督作品。80歳代半ばを迎えて、まだまだ元気なところを見せる社会派監督です。
この映画は、単なる犯罪映画というよりも、人間性を掘り下げた人間ドラマとして、ずしりとした重みを感じます。ある事件が起こりますが、犯人の前日、何日前・・などにさかのぼって、犯行に及んだいきさつが丁寧に繰り返して描かれていく。
こういった映画は、ひとつの事件を8人の視点で捉えて、繰り返しカメラが追う「バンテージ・ポイント」というのがありました。
完全犯罪の計画だったものが、ひとつの誤算により、本人たちも、家族にも悲しい運命となるという展開。
金銭的に窮した兄弟のそれぞれの事情が、犯罪に染まっていくが、この兄弟を演じるのが兄にフィリップ・シーモア・ホフマン、弟にイーサン・ホークという配役。このほか、アルバート・フィニーなどが出演、脇を固めている。
ニューヨーク郊外にある小さな宝石店に強盗が押し入る。
隙を見て年配の女性店員が強盗を撃つが、彼女もまた銃弾を浴びる。慌てて逃げる共犯者ハンク(イーサン・ホーク)の車・・・。強盗3日前、ハンクは兄のアンディ(フィリップ・シーモア・ホフマン)から両親が経営する宝石店への強盗計画を持ちかけられる。
ハンクは養育費の支払いが滞り、お金に困っていた。
一見、贅沢な暮らしを送るアンディもまた、ドラッグに溺れて会社の金に手を出していた。
やがて二人は強盗が失敗しただけでなく、撃たれたのが自分たちの母親だと知り愕然とする・・・。
この映画を見るまでもなく、最近の映画では、アメリカの家庭の崩壊がしばしば描かれる。物語の軸となるのは、事件をきっかけに、さらに崩壊していく家庭。人生にすでに失敗している兄弟は、それを修正しようとしてもすべて裏目に出て、より悪い方にころげ落ちていく・・・。