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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「欲望という名の電車」(1951)

欲望という名の電車」は、ヴィヴィアン・リーが、「風と共に去りぬ」に続いて二度目のアカデミー賞主演女優賞を受賞した、テネシーイリアムズ(原作:戯曲)の名作。

監督は、有名なエリア・カザン(「エデンの東」)。
名映画解説者(日曜洋画劇場)の淀川長治さん風に言えば(笑)・・・
「まあ、なんというヴィヴィアン・リー!すごいですね。」
「映画とはこれですね!」
「演技とはこれですね!」
「まあ、マーロン・ブランドのすごいこと!」
ニューオリンズの街のすばらしいこと!」
「まあ、すごいですね!音楽もいいですね!」
エリア・カザンの演出ですね」
「それでは、次週、またお会いいたしましょう!
 サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ」

という話は別にして、モノクロの映画だったが、マーロン・ブランドヴィヴィアン・リーの演技の火花が炸裂して、強烈だった。

こんな話:
父の死と共に南部の家を失ったブランシュ・デュボア(ヴィヴィアン・リー)はアルコールに身を持ち崩して、妹ステラ(キム・ハンター)が結婚しているニュー・オーリンズのフランス街の家を訪ねてきたのだった。

妹の夫スタンリー・コワルスキー(マーロン・ブランド)は暴力的な男で、カードと酒に狂ってはステラを打つのであったが、ステラはこの男に全身を捧げて
悔いはなかった。

そのような妹夫婦の日常を見るにつけ、ブランシュはスタンリーのカード仲間ミッチ(カール・マルデン)に次第に関心を持つようになった。

ミッチは、母と2人暮らしの純情な独身者で、真面目にブランシュとの結婚を考えはじめ、彼女も彼に、年若の夫を失った暗い過去を打ち明けて、将来への希望を語った。しかしスタンリーは街の仲間から、ブランシュが実は大変な女で、17歳の少年を加えこんだというので故郷を追われてきたのだということを聞き出して、ミッチにぶちまけた。

ブランシュの誕生日に、むろんミッチは出て来ず、しかもスタンリーは彼女に贈り物として故郷へ帰る片道切符を渡した。その夜ステラが、にわかに産気づき、スタンリーと病院に出かけたあと、ブランシュは訪ねてきたミッチに結婚を迫ったが、彼はもはやその言葉に動かされはしなかった。

夜更けて帰ってきたスタンリーはブランシュが1人妄想に酔っているのを見ると暴力でこれを犯した。完全に発狂したブランシュは、紳士が自分を迎えに来たという幻想を抱いて、精神病院へ送られていくのだった・・・。

主な登場人物4人の個性がぶつかり合い、重厚な演技が見ものだった。
脇役のカール・マルデンも味のある演技だった。

発狂したブランシェ(ヴィヴィアン・リー)のすさまじい演技は「サンセット大通り」の名女優、グロリア・スワンソンのような迫力で迫ってきた。

ヴィヴィアン・リーは、汚れ役ながら、美貌が光った。妹役のキム・ハンターも美しかった(すこし、ジューン・アリスンに似ているような)。カール・マルデンは、紳士ぶりと裏腹に正反対の性格もあわせもち、うならせた。そして、なんといっても、マーロン・ブランドの圧倒的な、野性味にあふれた演技!

むんむんするようなニューオリンズのフレンチ・クオーターという背景がうまく描かれていた。

1980年代の後半に、舞台となったフレンチ・クオーターというところ(ジャズで知られる)を一度訪れたことがあるが、昔のフランスの面影をしのばせる建物が残っていた。ただ、かつての栄えた様子は伺えず、寂れていた印象だった。ところどころのコーヒーショップでは、ジャズの音楽が聞こえていた。

モノクロ・スタンダードの映画としては、傑作の1本として、ベスト10の1本に加えたい作品であった。

監督のエリア・カザンは、赤狩り旋風のときに、司法取引をして、(共産党員の)友人の名を公表したことで、その後に暗い影を落としたといわれる。映画「革命児サパタ」を監督。主演はマーロン・ブランド。カザンはこの映画のなかに、共産主義に対する批判のメッセージを込めたと言われている。

監督:エリア・カザン
出演:( )は役名
ヴィヴィアン・リー (Blanche)
マーロン・ブランド (Stanley)
キム・ハンター (Stella)
カール・マルデン (Mitch)
ルディ・ボンド (Steve)
ニック・デニス (Pablo)
ペグ・ヒリアス (Eunice)
リチャード・ギャリック (A Doctor)
Ann Dere (The Matron)
Edna Thomas (The Mexican Woman)

エリア・カザン監督作品
(☆☆☆☆=最高、☆☆☆=必見、★★=時間あれば、★=つまらない)

監督した映画:
栄光の都 City for Conquest (1940)
ブルックリン横丁 A Tree Grows in Brooklin (1945)
大草原 The Sea of Grass (1947)
紳士協定 Gentleman's Agreement (1947)
影なき殺人 Boomerang! (1947)
ピンキー(日本未公開作品) Pinky (1949)
暗黒の恐怖 Panic in The Streets (1950)
欲望という名の電車 A Streetcar Named Desire (1951) ☆☆☆☆
革命児サパタ Viva Zapata! (1952) ☆☆☆
綱渡りの男 Man on A Tightrope (1953)
波止場 On The Waterfront (1954) ☆☆☆☆
エデンの東 East of Eden (1954) ☆☆☆☆
ベビイ・ドール Baby doll (1956)
群衆の中の一つの顔 A Face in the Crowd (1956)
荒れ狂う河 Wild River (1960)
草原の輝き (映画) Splendor in the Grass (1961) ☆☆☆
アメリアメリカ America. America (1963) ☆☆☆
アレンジメント/愛の旋律 Arrangement (1969) ★★
突然の訪問者 The Visitors (1972)
ラスト・タイクーン The Last Tycoon (1976)